ハロウイン:7つの鍵を持つゴシック・ロックの頂点

メロディックメタル、ゴシックメタルの頂点として多くのミュージシャンに影響を与えてきたバンドがハロウインです。ドイツのハンブルグで結成されたハロウインは、様式美あふれる独特のメロディとハイスピードでテクニカルな演奏でまたたくまに世界のトップバンドに上り詰めていきます。

ハロウイン誕生

メンバーチェンジを繰り返し、そのたびにバンド名も変わり、最終的にハロウインとしてキャリアがスタートするのは、リーダーであるカイ・ハンセンがジェントリーを結成してから4年も経過してからのことです。
当時は、カイ・ハンセンがギターとボーカルの両方をこなし、ドラムのインゴ・シュヴィヒテンバーグ、ベースのマーカス・グロスコフ、ギターのマイケル・ヴァイカートの4人編成でした。
当時から高速のリフとメロディアスなフレーズには定評があったのですが、ハロウインとして完成されるのは驚異の音域を持ったボーカル、マイケル・キスクが加入してからになります。
マイケル・キスクが加入して作られた「Keeper of the Seven Key Part1」と「Keeper of the Seven Key Part2」はもともと1枚のアルバムとしてリリースされる予定でしたがマネジメントの関係で連作となりました。
このアルバムは、世界中のロックファンに歓迎され、マスコミからも、ドイツから生まれたスコーピオンズ以来の衝撃ともてはやされたのです。
しかし、順調なアルバムの売上と精力的なツアーに反比例するように、メンバーのモチベーションは過酷なスケジュールによって下がっていきます。
とくに、バンドの創始者でもあったカイ・ハンセンの状況は最悪で、精神的にも肉体的にも限界を迎えていたと言われています。最終的には健康的な理由によって1989年バンドを脱退することになったのです。
その後も、1993年には肉体的疲労からプレイに支障が出ていたインゴ・シュヴィヒテンバーグが、同じくヴァイカートとの不仲を理由にキスクがバンドを脱退することになります。
おそろしいまでのツーバス・アクションのインゴと広い音域をもつキスクの代わりを見つけることは容易ではありませんでしたが、翌年、カイ・ハンセンの作ったバンドであるガンマ・レイに在籍していたこともあるドラム、ウリ・カッシュとピンク・クリーム69でボーカルを担当していたアンディ・デリスが加入し新生ハロウインがスタートすることになったのです。

いい意味で期待を裏切ったアンディ・デリス

ハロウインと同じくドイツのロックバンド、ピンク・クリーム69に在籍していたアンディ・デリスはキスクと同程度の音域を持ちながら、さらに表現力にすぐれた一面を持っており、激しいスピード・メタルから穏やかなラブバラードまでいくつもの声音を使い分けることができるテクニシャンでした。
度重なる主要メンバーの離脱で勢いを失っていたハロウインに、今までにないタイプの楽曲を提供するとともに、過去の名曲にも新しい命を吹き込んだアンディの功績はとても評価されています。
音楽的知識も豊富で、自宅に「Mi Sueno」というスタジオを所有していて近年のハロウインのアルバムは、全てここで録音されているほどです。

最後のワンピース

再び活躍の時を迎えたかに見えたハロウインでしたが、ドラムのウリとギターのローランド・グラポウが他のメンバーと対立し解雇されてしまいます。代わりに元フリーダムコールのサシャ・ゲルストナーと元モーターヘッドのミッキー・ディーが加入することになりました。
ミッキーはあくまでサポートメンバーということで後任にはステファン・シュヴァルツマンが起用されたのですが長続きはしません。そして、2004年からスイス出身のパワードラマー、ダニ・ルブレを加え現体制に落ち着くのです。

カイ・ハンセンの求めた様式美

体調不良を理由にハロウインを去った実質的な創始者であるカイ・ハンセンが次に作ったバンドがガンマ・レイです。
過酷なスケジュールから開放されたカイがまず始めたことは、音楽をもう一度一から見直すことでした。故郷であるドイツに戻りハンブルク大学で本格的に音楽理論を学んだのが26歳の時です。
翌年には、学業と同時にレコーディングも始め新メンバーを集めて活動を再開させます。あのハロウインのカイ・ハンセンが作った新バンドということで業界の注目を集めますが、バンドの道のりは平坦ではありませんでした。
とにかくメンバーが固定できずに、デビューから4枚目のアルバムまで同じメンバーが演奏することはなかったのです。
とくに、バンドの顔であるボーカルを固定できずにいたのがネックになり、ラルク・シーパース、ティム・オーウェンズとメンバーチェンジを繰り返し、最終的には初期のハロウインのようにカイ自らがボーカルを取ることになったのです。
ガンマ・レイの音楽性は、ハロウインの初期のアルバムをさらにドラマティックに装飾された雰囲気を持っています。人によってはオーバーアレンジと表現される場合もあるようですが、ある意味スピード・メタル、ゴシック・ロックの一つの完成形であると言えるかも知れません。

ハロウインを支えたスーパードラマー達

ハロウインのサウンドで忘れてはいけないのが、激しいツーバスで観客の疾走感をあおるスーパードラマーの存在です。
インゴ・シュヴィヒテンバーグを始め、ウリ・カッシュ、マーククロス、ステファン・シュヴァルツマン、そして現在のダニ・ルブレと誰を取っても確かなテクニックと激しいツアーをこなす体力の持ち主でした。
とくに印象に残るのが、結成時から在籍しハロウインの人気を不動のものにしたインゴ・シュヴィヒテンバーグの存在です。
激しいドラミングとは違いとても繊細な神経を持っていたと言われるインゴですが、統合失調症を患っていたこともあり次第に薬物に手を染めていきます。最終的にハロウインを解雇されることになり、その2年後に列車に飛び込み命をたってしまいます。わずか29年の短い生涯でした。

ハロウインのおすすめアルバム

やはり「Keeper of the Seven Key」のPart1,Part2は外せないでしょう。どちらも非常に完成度が高いアルバムで最高傑作に挙げるファンも少なくありません。
3分30秒ほどの曲の1/3以上をギターソロが占める「I’m Alive」では、ハロウインお得意の大胆な転調が効果的に挿入されていますし、フューチャーワールドでは骨太なジャーマン・メタル・サウンドを聴くことができます。
Part2では、カイが目指す様式美がさらに前面に押し出された内容になっています。ライブにおけるセットリストの中心的な曲になる「Eagle Fly Free」をはじめ、コミカルな中にも複雑なリズムワークが印象的な「Dr. Stein」、13分を超す大曲「Keeper of the Seven Keys」などハロウインの代名詞とも言える名曲が詰まっています。
ハロウインとはどんなバンド?と思ったら、真っ先に聞いてほしいアルバムが「Keeper of the Seven Keys」なのです。
その後、バンドは試行錯誤とメンバーチェンジを繰り返し、短くはない低迷期に入ってしまいます。そんな状況を打破したのが2005年にリリースされた「Keeper of the Seven Keys:The Legacy」です。
現在のラインナップが揃い、ゲストとしてあのリッチー・ブラックモアの妻で、ブラックモアズ・ナイトのボーカルでもあるキャンディス・ナイトが加わり制作されたこのアルバムは、まさに原点回帰、いきなり「Keeper of the Seven Keys」を思わせる13分越えのドラマティックな曲で幕を開けます、Disk2にも10分超えの大曲「Occasion Avenue」が収録されておりゴシックメタルの真骨頂を聴くことができます。
また、キャンディス・ナイトとのツインボーカルは「Light the Universe」で聞けますが、今更ながらアンディ・ドリスの歌唱力の高さに驚かされます。

現在のハロウイン

2013年に行われたツアーでは、マイケル・ヴァイカート率いるハロウインとカイ・ハンセン率いるガンマ・レイのカップリングツアーが行われ話題を呼びました。
また、2016年から行われているワールドツアーでは、ゲストとしてカイ・ハンセンとマイケル・キスクが参加しており、ドラムのインゴを除く初期メンバーが一同に介したリユニオン・ツアーとなっています。
もちろん、現在のボーカルであるアンディとギタリストのサシャも参加しておりファンにはたまらないステージとなっているのです。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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