ZZトップ:テキサスのブルース・バンドから一躍世界のトリオバンドへ

アメリカは、テキサス出身のZZトップは、一見すると長いひげとサングラス、テンガロン・ハットでジャード・ブギーやパワー・ポップを中心としたトリオ・バンドのイメージがありますが、実はデビュー当時は現在と似ても似つかないブルース・バンドだったのです。

ZZトップ

ギターのビリー・ギボンズが中心となって1963年に結成されたトリオ・バンドです。ベースのダスティ・ヒル、ドラムスのフランク・ベアードでスタートしたZZトップは、その後、2年間の活動休止時期はあるものの、一環として同一メンバーで活動。実に50年近くもの間、一度もメンバーチェンジをせずに現在に至っています。
デビュー当初は、ブルース・バンドとして活動しており、ツアーなどもマディウォーターズやバディ・ガイといった黒人のブルースメンらと一緒に回ることが多かったようです。
ZZトップは順調にアルバムを出し続け、精力的にコンサートをこなしていきます。デビューからおよそ8年間、休み無くライブとレコーディングに明け暮れたのです。まだまだメイン・アクトとして演奏することはできませんでしたが、彼らの実力は当時から話題になっており、ジャニス・ジョプリン、ディープ・パープル、ローリング・ストーンズといった有名なバンドが彼らをヘッドライナーとして採用してきました。
その結果、3枚目のアルバム「Tres Hombres」は初のゴールドディスクに輝き、ZZトップの名前をアメリカ中に広めることになったのです。
しかし、あまりにも過酷なタムスケジュールによりバンドは心身ともに衰弱してしまい、この後2年間の活動休止を余儀なくされるのです。

復活のZZトップ!

2年間の充電期間を経て活動を再開したZZトップですが、時代はちょうど世界的なメタル・ブームに差し掛かろうとしていました。
ZZトップというと、フロントマン2人の特徴的なルックスが話題になりますが、ビリーとダスティのトレードマークでもある長いひげはこの時からスタートします。
休暇中、ビリーもダスティもひげを放ったらかしにしていたためらしいのですが、本人たちは、伸びたひげを一切気にしていなかったと言われています。
サウンド的には、よりディストーションを効かせたビリーのギターに、シンプルで重いリズム隊をかぶせることで、たんなるブルース・バンドではないブギー・ロック、ハード・ポップといったジャンルを構築していきます。当時、最先端技術の一つであったシンセサイザーを効果的に導入するなど積極的に新しいサウンドも取り入れていきました。
ビリーとギボンズの異常に長いひげとサングラス、テンガロン・ハットというルックスに加え、息の合ったコミカルなアクションはMTVを中心に話題になっていきます。
一方で、彼らのノリの良いポップ・ロック・サウンドは全米のトラック運転手の間で爆発的に人気を集めます。当時、自動車に搭載されていたのはカセット媒体の再生機であったため、復帰後リリースされた「Eliminator」、「Afterburner」はレコードよりもカセットの売上の方が多いという珍現象を起こしてしまったほどです。
バンドのコミカルな面をプッシュしたプロモーションビデオも話題をさらい、テキサスのブルース・バンドから一躍世界のZZトップへと上り詰めていきます。

ビリー・ギボンズのギター

ギターコレクターとしても知られるビリーですが、ライブやプロモーションビデオでは、ビジュアルを考え、ベースのダスティとルックスが同じ派手目のギターを使用することが多いようです。
ギブソンのエキスプローラーや、グレッチから発売されている自身のシグネイチャーモデルである「G6199Billy-Bo Jupiter Thunderbird」を使用しています。
このギターのオリジナルは、アメリカの伝説的なブルース・ギタリストであるボ・ディドリーがデザインしたモデルで、ビリーが本人から直接プレゼントされたものでした。
偉大なギタリストが使用したオリジナルギターであると同時に歴史的にも非常に価値のあるギターをライブに持っていくのは危険であると考え、ビリーの希望を加味した新しいシグネイチャーモデルを開発してもらうことになったわけです。
そのため、「G-6199」にはBilly(ビリー・ギボンズ)とBo(ボ・ディドリー)2人のスーパーギタリストの名前が冠された珍しいシグネイチャーモデルとなったのです。
ライブではさまざまなギターを使用するビリーですが、レコーディングでは古くからギブソンのレスポール1959年製を愛用していることで知られています。
ヴァン・ヘイレンの「フランケン」やクラプトンの「ブラッキー」など自分の愛器に愛称をつけているミュージシャンは少なくありませんが、ビリーもこのレスポールに「Pearly Gates」と名付けています。
実は、この愛称にもエピソードがあるのです。
ビリーが有名になる前、パッカードという車に乗っていたのですが、ある時、ガールフレンドが映画のオーディションを受けるためにカリフォルニアまで行かなければならなくなったのだそうです。
そこで、ビリーがパッカードを彼女に貸してあげたのですが、見事オーディションに合格、パッカードが幸運を運んでくれたということで当初「Pearly Gates」は愛車に与えられた愛称だったのです。
その後、パッカードはコレクターに売却されることになるのですが、そのお金がビリーの元に届いたその日に、レスポールと運命的な出会いをします。ビリーはパッカードを売ったお金が、くだんのレスポールを引き寄せたと思い、愛器に「Pearly Gates」と名付けたのです。

ビリー・ギボンズのプレイ・スタイル

ビリーの特徴的なサウンドの秘密の1つに、使用しているピックの違いが挙げられます。通常、ギタリストが使用するピックはナイロンやセルロイド製が主流ですが、ビリーはアメリカの25セント硬貨やメキシコのペソ硬貨を使用しています。
硬貨をピックに使用すると言えば、クイーンのブライアン・メイの6ペンスコインが有名ですが、どちらも硬貨の周りに彫られたギザの部分を使用して効果的なサウンドを演出しています。
また、ビリーは常に新しいものを求めるタイプで、復帰後最初のアルバム「El Loco」ではいち早くシンセサイザーを導入しています。
また、あえてギターとベースのチューニングを半音下げるダウンチューニングを取り入れるなど、常に試行錯誤を繰り返しているのです。

ZZトップのおすすめアルバム

まずは、彼らの人気を決定づけた「Eliminator」は外せません。通算9枚目となるこのアルバムはロングセラーとなり2018年現在アメリカだけで1000万枚以上売り上げています。
前作「El Loco」で使用されたシンセサイザーは、このアルバムでも効果的にフューチャーされています。
シングルカットされた「Legs」ではドラマ仕立てのプロモーションビデオが制作され、印象的な彼らの風貌も手伝ってMTVなどでさかんにオンエアされました。
このアルバムからは、「Gimme All Your Lovin’」「Sharp Dressed Man」など全部で5曲がシングルカットされました。
「Eliminator」の2年後に発売された「After Burner」も名盤です。アメリカのビルボードでは初のベスト5入り、イギリスでは最高2位、ニュージーランドでは3週連続1位と世界的ヒットを記録したこのアルバムからも4枚がシングルカットされましたが、そのいずれもが30位以内という大ヒットを記録します。
中でも、アルバムトップと2曲目を飾る「Sleeping Bag」と「Stages」は現在でも彼らのライブの定番としてセットリストに含まれる名曲です。
大ヒット映画「Back to the Future Part3」の主題歌として大ヒットした「Double Back」が収録された10枚目のアルバム「Recycler」もプラチナ・ディスクに認定されていて、ファンからの支持も高い1枚です。
また、ビリーは2015年と2018年にソロアルバムを出しています。1枚目はラテンやサザンロックをベースにした雰囲気のアルバムだったのに対し、2枚目はよりブルース色の強いZZトップよりのサウンドとなっています。
どちらもビリーのギタープレイが冴え渡っている名盤ですから、興味のある方は聴いてみることをおすすめします。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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