ジェフ・クーンズ:世界で最も稼ぐ盗作者?4度の有罪判決

ジェフ・クーンズはアメリカの芸術家。2013年のオークションで作品に5840万ドルもの落札価格がつけられ、存命中の芸術家として最高額を更新していた。資産家としても知られる。度々、盗作疑惑で告訴されており、4度の有罪判決を受けている。作品を発表すると必ず世界のニュースになるという不思議な人物。

4度の有罪判決を受ける芸術家

4度の有罪判決を受けたことのある芸術家なんてジェフ・クーンズ以外にはいないでしょう。ジェフ・クーンズは、作品を発表する度に賛否両論を巻き起こし、世界から注目されるという珍しい芸術家です。その一方で彼の資産は5億ドルとも噂されており、芸術家の資産ランキングでは必ず上位に名前が上がってくるアーティストです。最近の盗作疑惑が起こったのは2014年のパリで発表されたジェフ・クーンズの作品「Fait d’ Hiver」です。この作品は、豚とペンギンが雪の上で横になっている女性のそばに立っているという作品で、ポンピドゥー・センターの回顧展で展示されていたものでした。この作品には4つのエディションが存在しており、その内の1点はクリスティーズ・ニューヨークで470万ドルという価格で落札されました。この作品をフランスの広告会社の重役であるフランク・ダビドビッチが目にし「盗作」との訴えを起こします。ダビドビッチの訴えは、自身のファッションブランドのために1985年に制作した広告の盗作である、というものでした。客観的に誰が見てもこの類似性についてはYESと答えるしかないものだったでしょう。シュミレーショニズムという芸術のカテゴリーに入れることも出来ないという判断は世間から声があがりました。この盗作疑惑を受けてポンピドゥー・センターの館長アラン・セバンはこの展示の中止を発表。盗作の疑惑についてはジェフ・クーンズを擁護する姿勢をみせました。この訴訟は2015年に起こされ、2017年11月8日、フランスの裁判所はジェフ・クーンズに損害賠償として約15万ドルの支払いを命じました。ジェフ・クーンズは既存のイメージを使用しようとする、いわゆる著作権問題についてアート界では必ず例え話に登場するという芸術家であり、これまでに4度の有罪判決を受けています。

ジェフ・クーンズは芸術家でもあり、優秀なビジネス家でもある

ジェフ・クーンズはアメリカのペンシルベニアで生まれました。9歳の頃には、有名な絵画の複製画を描き、父親が販売していたという逸話もあります。ジェフ・クーンズの父親は家具の販売をしていましたが、通行人の目を引くために店の店頭にジェフ・クーンズが描いた絵を置くなど、ビジネスとしての視野も広い人でした。10代の頃にサルバトール・ダリに影響を受け、シカゴ美術館大学付属大学とメリーランド・インスティテュート・カレッジ・オブ・アートで絵画を学びます。やがて1980年代に美術家として頭角を現すようになりました。その作品のスタイルは、俗っぽい、安っぽい、役に立たないものとアートとの融合をさせるというものでした。彼は自身のスタジオで、スタッフに自身の作品の複数制作させていきました。いわゆる「総合プロデューサー」としての立場でのアーティストであり、この手法はかつてのルネサンス美術家、アメリカではアンディ・ウォーホルのファクトリーに近いものでした。初期の作品は「Three Ball 50/50 Tank」というガラス張りの水槽に3つのバスケットボールを浮かべるという抽象的な表現のものが有名です。ジェフ・クーンズが他の芸術家と全く違ったのは、「ジェフ・クーンズ」という自らを徹底的にブランディングさせるというものでした。彼は世間から見た「ジェフ・クーンズ像」というものを奥深いものにするために、イメージ・コンサルタントの専門家を雇用し自らを語るときには「私」と言わずに「彼」という三人称を使って語りました。このような取り組みは当時の美術家にとっては誰も仕掛けたことのない取り組みでした。その姿は、自分自身をもプロデュースするビジネスマンとしての立場だったのかもしれません。

彼の名前を世界に広めた作品は「Michael Jackson and Bubbles」という作品で、マイケル・ジャクソンとペットのチンパンジーであるバブルスの金粉を施した等身大の座像でした。この作品にはニューヨークのサザビーズでオークションにかけられ、560万ドルで落札しました。

また、彼の代表作としても知られるのが「Puppy」であり、鉄の骨組みに花々を植えて作られた12mもの子犬の作品です。この作品は当初、ドイツのバート・アーロルゼンでの展覧会のために制作され、スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館に移されました。この「Puppy」はいまもビルバオ氏の象徴でもありニューヨークのロックフェラー・センターでも展示されました。

とにかく作品を発表すると話題になる

2007年11月のサザビーズのオークションで、ジェフ・クーンズの「Hanging Heart」が存命の美術家の作品につけられた最高額を更新しました。その額は2360万ドルという途方もないものであり、更に落札者であるガゴーシアン・ギャラリーは「Diamond (Blue)」という彫刻作品も1180万ドルで購入していたのです。およそ一般人にはとても高く手の出ない金額に世界が驚きました。また、レディー・ガガのアルバム「アート・ポップ」のジャケットを手掛け、同時にガガをモデルにした大型彫刻作品を制作しました。彼の作品の評価は常に話題性に溢れ、両極端の意見を受けることになります。

代表作である「Balloon Dog」という風船で作られた犬の形をした彫刻などは「最高の存在!永続性のあるモニュメント!」「テクニカルであり、視覚的にも素晴らしい」と絶賛される一方で、「ジェフ・クーンズは退廃したアーティストで、創造性というものが欠如している。」「自己PRの売り込みやセンセーショナルリズムが痛くて仕方ない。」結局のところ、その芸術家の評価は存命中に決定されることはないでしょう。ジェフ・クーンズが紛れもない真の芸術家であるのか、あるいは単純に流行というものの提供者であるのかは現在では誰にも判断が出来ません。しかしながら、世界に対する影響力は極めて大きいという事実は誰もが否定できないのです。

「Balloon Dog (Orange)」に5840万ドル!

2013年、クリスティーズのオークションで「Balloon Dog (Orange)」が5840万ドルで落札され、記録を更新します。「アート作品の値段は、その作品の意味に影響を及ぼす可能性があるか?」という質問に、ジェフ・クーンズはこう答えたとの事。「金が無くて払えないということがどんな気持ちなのか、良く知っている。だから作品は出来るだけ高値で売りたい。結局のところ、作品の価値は値段で変わるものじゃないが、それがきっかけで注目を集めてアーティストとしての領域が広がることがある。」そして、自分の作品について「誰にも持てもらえないような作品を創りたいとは思わない。自分の表現やアイデア、価値観を多くの人に語って欲しいと思う。」つまり、賛否両論があるのもそのアーティストの領域を広げるための素材である、という考えなのかもしれません。ジェフ・クーンズのビジネス戦略に世界はまんまと乗ってしまっているという不思議な気分になってしまいます。

世界はジェフ・クーンズに踊らされているのか?

ジェフ・クーンズは4度の有罪判決を受けた経験を持ち、世界で最も注目を集める芸術家です。彼はポルノ女優で後にイタリア代議員議員に当選する「チョチョリーナ」ことシュターッレル・イロナと結婚し、その夫婦の性行為についても作品にして話題や批判を集めました。その結婚生活で息子をもうけますが破局してしまいます。ジェフ・クーンズは語っています。「まったく、あの経験は僕に社会の責任を再認識させてくれた。僕は人の心を理解しようとする気持ちに欠けていた。今後はより美術家としても私人としても寛大であるべく努めたいね。」この後、ジェフ・クーンズはシュターッレル・イロナから養育費未払いで告訴されています。どこかユーモアを感じてしまう彼の「芸術活動」に世界は踊らされているのかもしれません。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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