ムーカタ:焼き肉と鍋の融合/タイ

「ムーカタ」(Mu kratha, หมูกระทะ)

タイの鍋料理のひとつで、韓国式焼き肉と中国式鍋料理を合体させたものと言われている。タイ語で「ムー」は豚肉、「カタ」は鍋の意味。
中央がドーム型に盛り上がった専用の鍋を使うのが特徴で、食卓で鍋を直火または炭火の上に置いて調理しながら食べる。中央の盛り上がった部分で肉を焼き、周囲のくぼみにはスープを入れ、野菜類を鍋の要領で煮ながら、それぞれをたれにつけて交互に食べる。

<暑い国、タイでも鍋料理は人気>

英語で「Hot pot」と表される鍋料理は、主に寒い季節に体が温まる料理として、形や材料は少しずつ異なりつつも世界中でその地の独自料理として定着しています。

鍋は寒い冬がある国だけの料理かと思いきや、年中暑いイメージがある国タイでも、タイスキ、チムチュム、ムーカタといったさまざまな鍋料理があり、タイ人の大好物として年中食されています。中でも「ムーカタ」は一風変わり種とも思える斬新な鍋料理です。

<変わった形の専用の鍋で作る「ムーカタ」>

「ムーカタ」は、アルミ製の浅い鍋の中央がドーム型に盛り上がっている変わった形の専用鍋で作ります。
ドーム型部分はいわばコリアン・バーベキューのグリルの役目があり、ここに肉やエビなどをのせて焼きます。
周囲のくぼみには鍋料理の要領で水やスープを入れ、沸騰したところに野菜やきのこなどを入れて煮ます。
ドームの方で焼いて出る、肉と魚介のうまみの汁やおこげがスープに溶け込むことでスープもおいしくなります。

<独自の「つけだれ」で味が決まる>

具材の揃え方は各家庭やレストラン次第ですが、肉、魚介類に特に下味はつけないことも多いようです。調理中に特に味付けをしなくても食べるときにつけだれをつけるため、それでよいのでしょう。
なお、つけだれも特に決まった材料で作るものではなく、これも各家庭やレストラン次第です。

タイのチリソースやナンプラー、にんにく、ライムジュース、唐辛子を混ぜたものや、韓国風にゴマ油やねぎ、白ごま、にんにく、しょうゆを混ぜたものなどがあり、各自の味の好みで選んで好きなようにつけて食べます。
タイでは唐辛子の辛みが効いたつけだれが特に好まれています。

<楽しみ方1: コリアン・バーベキュー>

鍋のドーム型の部分では焼き肉を楽しみます。元は「韓国式」が取り入れられた鍋であるということで味付け済みの肉が使われることもありますが、タイ人の好みに合わせて独自発展を遂げたムーカタに使われるお肉は「ムー」が豚肉の意味であることからも、基本はシンプルにスライスした豚肉です。

なお、タイ国内のムーカタが食べられるレストランではビュッフェスタイルで好みの具材が選べるようになっており、豚肉の他に鶏肉、牛肉 、マトンなども食べることができます。
また、グリルする具材としては魚介類も好まれており、エビやイカなども使われます。
いずれも焼きあがったところに各自好みのたれをつけて食べます。

<楽しみ方2 : 鍋>

くぼみの部分で作る鍋料理の元は「中国のホットポット(鍋)」と言われていますが、これはタイの伝統的鍋料理であるタイスキやチムチュムとも融合したものなのかもしれません。

野菜は白菜と空心菜などの青菜、えのきやしめじなどのアジアン・マッシュルームが入ることがほとんどです。あとはタイの鍋の具材として人気のヤングコーン、薄くスライスした人参、白ねぎなどがよく使われるようです。
グリルから流れ落ちる肉汁とおこげが混じって鍋のスープがおいしくなったところで豆腐、春雨やライスヌードルも入ります。
これらにも好みのたれをつけたり混ぜたりしながら食べます。

<「ムーカタ」を実際に作って食べてみました>

ムーカタの鍋を入手する機会があったため、実際に作って味わってみました。

揃えた材料はこれまでにご紹介したものとほとんど同じものです。今回豚肉はバラと肩ロース、魚介はエビと牡蠣、野菜は白菜、小松菜、にんじん、ねぎ、えのきを用意しました。水で戻したライスヌードル、豆腐も用意しました。

つけだれは3種類作りました。「タイの鍋料理用のたれ」と調べると材料が全く異なるレシピが何種類も出てきます。「正解」はないのでしょう。それらの中から今回はナンプラーとしょうゆ、レモン汁と青唐辛子がベースのものをひとつ、チリソースとにんにくと酢、白ごまを混ぜたものをひとつ、また、ごま油としょうゆ、ねぎ、白ごまたっぷりの韓国風も作ってみました。

写真:筆者提供

ちなみにこのうちで最も評判が良かったのは、チリソースを使った赤い辛いたれでした。

<忙しい!楽しい!おいしい!>

上記分量で5~6人分になると思います。(4人では食べきれませんでした。)
鍋はカセットコンロに直接かけます。ドーム部分全体に縦に穴が空いているので肉汁が垂れてコンロが汚れたりしないかと心配しましたが、食べ終わった後のコンロはほとんど汚れていませんでした。

鍋肌が薄いのでグリル部分はすぐに熱くなります。初めに豚の脂の塊をなでつけるようにして脂をなじませてから肉を焼き始めます。
外側のくぼみ部分にはグリルの穴から下に漏れない程度の量の水を入れておきます。すぐに煮立ってくるので野菜もどんどん入れます。すべてお好み次第にしてよい料理ですから、お肉や魚介も茹でて食べてももちろんOKです。

今回は4名で、自分で食べられる分だけを各自で入れることにしましたが、肉もエビもすぐにひっくり返さなければならず、野菜はすぐ食べ頃になり、つけだれは3種類試したいということで、全員がものすごく忙しい!
気に入ったつけだれや具材をシェアし合い、大いに盛り上がりました。

また、これは本来の食べ方ではないのかもしれませんが途中でグリル部分の焦げ付きが気になり(鍋を洗うのがあとで大変かと・・・)茹で上がった野菜で鍋肌をこすって洗うようにしながら鍋のスープに加えてみたところ、スープにコクが出て格段においしくなりました。メイラード反応という、アミノ酸、たんぱく質、糖が結びついた化学反応による効果です。ここにライスヌードルを加え、スープをしっかり吸わせたところでいただきました。

こんなにも楽しめて、皆が大満足できるおいしい鍋料理、地元で人気が出ないはずがありません。聞くところによると、タイだけでなくマレーシアやシンガポールでも人気が高まってきているそうです。アジアにとどまらず、ぜひ多くの方に知っていただきたいと思います。

<タイには宅配ムーカタもある>

安く手軽に外で食事する人が多いタイでは、ムーカタも主にはレストランで食べられるそうですが、その他に自宅向けの宅配サービスもあるそうです。調理するだけのところまで処理された食材とムーカタ鍋が自宅に届けられ、鍋を堪能したあとはグリル部分が焦げ付いた鍋でも洗わずにそのまま返すことができるそうです。それは便利ですね。
パーティーのケータリングサービスとして利用されることも多いそうです。
確かにこのお鍋は、盛り上がりの観点でもパーティーに最適だと思います。

<鍋の取り扱い方法は、意外に簡単>

実際のところ、メイラード反応でおいしい部分をスープにしたムーカタ鍋の焦げ付きは、後片付けで残りを洗い落とすのも簡単でした。
これなら私が入手したムーカタ鍋も、このあと自宅でよく活躍しそうです。

ムーカタに関する動画

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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