Victoria and Albert – 芸術そしてデザイン、英国400年の歴史を感じる

数あるロンドンの博物館の中でも、芸術とデザインを専門とするVictoria and Albert。5000年余りに渡る世界文明の芸術約230万点とともに、ハイドパークから徒歩10分というロケーション・サウスケンジントンに英国400年の歴史が存在する。そのコレクションのみならず、世界初ミュージアム内カフェ”V&Aカフェ”はV&Aがとても魅力的な博物館であることに付加価値を与える。

ロンドナー、またはロンドンを訪れる人にとって博物館・美術館巡りは欠かせない楽しみの一つでしょう。
それぞれの博物館や美術館にはそれぞれの特色があり、ロンドンで芸術に触れる機会がとても豊かなことを表しています。

その機会の豊富さに加え、嬉しいことにほとんどが入館無料だというポイントは特筆すべきでしょう。有料にすることに代わり、寄付という形を取っているのです。
これは、ボランティア先進国のイギリスならではと言えるかもしれません。

イギリスには階級制度が残っていますが「芸術はみなのものであり、すべての人に公開され、楽しまれるべき」という考えがあります。
国の政策として博物館や美術館の無料公開を行うことにより、国民の福利厚生の向上につながるとしています。
このようにイギリスには、誰もが気軽に本物の芸術に触れることのできる環境が整っているのです。

この記事ではロンドンの魅力的な博物館の一つ、Victoria and Albert(V&A)について詳しく紹介します。

<V&Aのヒストリーはロンドン万博につながる>

V&Aは1852年、ロンドン公文書館/館長補佐ヘンリー・コールらによって開設されました。1851年のロンドン万博の翌年になります。

ロンドン万博はヘンリー・コールの発案で、ヴィクトリア女王の夫・アルバート公を総裁に王立委員会が組織されて実現となりました。
約5ヶ月間の会期中、当時のロンドンの人口の3倍そしてイギリスの人口3分の1に当たる約600万人を超える入場者数を迎えロンドン万博は大盛況となりました。

ヘンリー・コールは万博の主要な出展物を恒久展とするため、万博の収益金をもとに翌1852年に産業博物館を設立します。
その後、1857年には現在地のサウスケンジントンへ移転し「サウスケンジントン博物館」と改称します。
そして1899年、ヴィクトリア女王とアルバート公の名を冠し「ヴィクトリア&アルバート (V&A)」と改められ現在に至っているのです。

<V&Aの理念>

V&Aの理念は、“ロンドン万博”の理念を受け継いだものとなります。

  • V&Aのすべてのサイトとコレクションにおいて、世界最高峰の訪問者への体験と学習体験を創造すること。
  • 英国の創造と知識経済に対する当財団のコレクションの関連性を重視し、深めること。
  • V&Aの国際的な活動範囲、評価、影響を拡大すること。
  • 財務的・組織的なイニシアティブと効率性をもって運営すること。
  • 最高のデジタルデザインを世界に発信し、卓越したデジタル体験を提供すること。
  • 民間および商業ベースの資金源を多様化し、増加させること。

・To create a world class visitor and learning experience across all V&A sites and collections.
・Focus and deepen the relevance of our collections to the UK creative and knowledge economy.
・Expand the V&A’s international reach, reputation and impact.
・To operate with financial and organisational initiative and efficiency.
・Showcase the best of digital design, and deliver an outstanding digital experience.
・Diversify and increase private and commercial funding sources.

出典:V&A 公式サイト

ヘンリー・コールは「全ての人の為の教室だ」と宣言しています。

schoolroom for everyone

出典:V&A 公式サイト

これはイギリスの産業の発展に繋がると考えられています。
そして、V&Aは設立以来160年以上経った今も一貫してその理念を貫いているのです。

それでは、実際にどのようなコレクションがあるのか紹介していきましょう。

<V&Aのコレクション>

V&Aは芸術とデザインを専門としています。
そのコレクションは世界各国から、陶磁器・家具・衣装・ガラス細工・金属細工・宝石・写真・彫刻・織物・絵画などと幅広く、5000年余りに渡る世界文明の芸術約230万点が展示されています。

そのうち、British Galleries (1500年~1900年)ではV&Aを代表するコレクションとともに、400年に渡る英国の芸術・デザインの歴史に触れることができます。

<V&Aに行ったらぜひ観たいコレクション3選>

素晴らしいコレクションの数々を持つV&A。
その中でも絶対観たいコレクション厳選3選をご紹介します。

・Vivienne Westwood/ヴィヴィアン・ウエストウッド

イギリス超大物デザイナーのコレクションは必見です。
パンクロックミュージシャンである夫のプランで店を開店しただけに、その服はとても独創的でクール。下品とも取れる挑発的・刺激的なファッションはエネルギーに満ち、その斬新なアイデアの数々は見た人を虜にする強烈な個性を持っています。

・Cecil Beaton Coronation Day/女王エリザベス2世の戴冠式ポートレート

2012年、女王エリザベス2世のダイヤモンド・ジュビリー (即位60周年)でイギリスが湧きました。その女王エリザベス2世が1953年に戴冠した際のポートレートが展示されています。
当時、女王陛下25才。その若さにして威厳と美しさを持つ女王陛下を観る機会は貴重なものとなります。

(Public Domain /‘The Day Dream’ by Dante Gabriel Rossetti. Image via The Metropolitan Museum of Art)
・Dante Gabriel Rossetti – The Day Dream/ロセッティ「白昼夢」

ロセッティは19世紀前半のイギリス・ラファエル派の画家であり詩人でもありました。ロセッティは官能的な女性の絵を何枚も描きました。それはロセッティが愛した女性でもあり、54才の若さでこの世を去るまで女性の噂は途切れることがありませんでした。

この絵のモデルはウィリアム・モリスの妻ジェーン・モリス。ロセッティはジェーンを愛し続け、晩年に描いたのがこの「白昼夢」です。

厳選3選をご紹介しましたが、大英博物館にも劣らない広大な館内にV&Aの膨大なコレクションが展示されています。気ままに、そしてご自身の好きなもの・分野を選んで観ることが一番でしょう。

さて、ここで19世紀イギリスの詩人でありデザイナーであるウィリアム・モリスの名前が出ました。
素晴らしいコレクションとともに、V&Aをさらに魅力的にしている世界初ミュージアム内カフェ“V&Aカフェ”が彼と深く関わっています。

さっそく、ご紹介しましょう。

<見逃せない世界初のミュージアム併設“V&Aカフェ”>

V&A内にある“V&Aカフェ”。
V&Aを訪れたらぜひご利用することをお勧めします。
ギャンブル・ルーム、ポインター・ルーム、そしてモリス・ルームが現在は一つにまとまりました。

特筆すべきはその美しさだけでなく、ミュージアム内に併設されたカフェとして、このV&Aカフェは“世界初”というところです。
今では博物館や美術館に行った際にはそのカフェで一休みすることが普通ですが、100年以上も前にこの考えがあったのは産業革命のあったイギリスならではかもしれません。

では、それぞれを見ていきましょう。

・ギャンブル・ルーム

豪華絢爛で華やかな内装のダイニングスペースは、ゴドフリー・サイクスの弟子ジェイムズ・ギャンブルによって完成されました。柱、天井、壁すべてに美しい装飾が施され、円形の大きな輝くライトがいくつもぶら下がる幻想的とも言える空間です。

・ポインター・ルーム

画家エドワード・ポインターがデザインした、装飾タイルとステンドグラスが美しい部屋となっています。ギャンブル・ルームよりは落ち着いた雰囲気です。

・モリス・ルーム

モダンデザインの父ウィリアム・モリスが手がけたのがこのモリス・ルームです。彼がまだ若く無名だったころ、初めて公共スペースのデザインを手がけた作品となっています。
ウィリアム・モリスのファンがこのカフェを目当てにV&Aを訪れるのも分かりますね。

これらが一緒になったV&Aカフェでは、シャンパンからコーヒーまで、そしてローストチキンからサンドウィッチ、ケーキまで多くのメニューが揃っており、セルフサービスでリーズナブルに頂けます。
歴史を感じながら気軽に取るランチは至極のひと時です。

<Victoria and Albert各情報>

URL: Victoria and Albert Museum/ヴィクトリア&アルバート

・住所:Cromwell Road, London, SW7 2RL
・開館時間:月曜・火曜・水曜・木曜・土曜・日曜 10:00~17:45、金曜 10:00~22:00
※2018年11月現在の情報です。

V&Aは、ルネサンス様式の中庭も素晴らしい見どころの一つとなっています。

浅い噴水広場では春夏には子ども達が水遊びをし、ロンドン一の紫陽花の名所として知られているほどたくさんの紫陽花が咲き乱れます。
また、芝に座ってお茶を飲んだりランチをしたりと、ピクニック気分でV&Aへ行く家族連れやカップルで賑わいます。

産業製品におけるデザインの水準を向上させ、芸術品を公開しながら、「国民の趣味教育の機関として利用されること」という理念の一つの役割をロンドンの中心でしっかりと果たしています。
V&Aは世界からの芸術そしてデザイン、英国400年の歴史そして現代を感じ、また、人々に愛される場所であり続けるのです。

ヴィクトリア&アルバートに関する動画

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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