ピーター・ティール:アメリカの影の大統領

スティーブ・ジョブズ、マーク・ザッカーバーグを超える起業家といえば、「ピーター・ティールしかいない」といわれる人物。PayPal(ペイパル)の創業者で、フェイスブック創業期にその可能性に気づいた初の外部投資家。現在は、トランプ大統領の有力な顧問であり「アメリカの影の大統領」とも呼ばれる。

ベンチャー起業家、投資家としてのピーター・ティール

ピーター・ティールは、今アメリカで最も注目されている人物の1人です。この記事を読んでいる読者はすでに、ピーター・ティールについては詳しく知っている方が多いことと思いますが、改めて彼の経歴と思考を追いかけてみようと思います。それは、決して無駄な時間にはならないでしょう。

ピーター・ティールはアメリカ合衆国の企業家、投資家として知られています。PayPal(ペイパル)の創業者といえば一番わかりやすいでしょうか。アメリカのシリコンバレーで多大なる影響力を持つ「ペイパル・マフィア」の中心人物といわれています。
「ペイパル・マフィア」とは、ペイパルから輩出したイーロン・マスク、リード・ホフマン、ジェレミー・ストッペルマンなど固い絆で結ばれている起業家のグループをこう呼びます。

ピーター・ティールはフェイスブック初の外部投資家であり、ヘッジファンドの「クラリウム・キャピタル」やデータ分析ソフトウェア企業「パランティア」、複数のベンチャーキャピタルや「ファウンダーズ・ファンド」「バラー・ベンチャーズ」「ミスリル・キャピタル」といった世界に影響力の大きい会社を次々と創設しています。

現在でも、シリコンバレーと政治の橋渡し役を担っており、宇宙開発や延命技術ビジネスを手掛けています。シリコンバレーでは、毎年数多くのスタートアップが出てきます。
アメリカでは評価額10億ドルを超える企業を「ユニコーン」と呼びます。ユニコーンとは想像の生き物であり、額に1本の角があるとされる一角獣です。「そんな生き物なんて実際に見たことがない」という意味で「ユニコーン」という呼び名が使われており、ピーター・ティールはユニコーン企業を桁違いに上回る100億ドルや1,000億ドルのスタートアップにも関わっている人物です。

「アメリカの影の大統領」ピーター・ティール

ピーター・ティールは政治的にはリバタリアンとして知られており、2016年にはトランプ政権を支持しアメリカ大統領まで押し上げたといわれる人物です。
彼はこの大統領選でトランプに多額の献金を行い、共和党の全国大会で応援演説までも行いました。「私はゲイであることを誇りに思います。私は共和党員であることを誇りに思います。でもいちばん誇りに思うのは、自分がアメリカ人であることです」この発言は様々な角度からの注目を世界から集めました。

当然のことながら、当時はトランプを支持することはリスクの高い「ギャンブル」だと考えられていました。しかし、ピーター・ティールはシリコンバレーの大物を一同に集めて新大統領を囲む会合を取り仕切ったのです。そのメンバーはアップルCEOのティム・クック、アマゾンCEOのジェフ・ベソス、アルファベットCEOのラリー・ペイジ、フェイスブック COOのシェリル・サンドバーグ、マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ、シリコンバレーの大物イーロン・マスク等、世界を率いる企業の役員たちでした。
このときから、ピーター・ティールは「アメリカの影の大統領」と呼ばれるようになったのです。

世界を手にした反逆の企業家の野望

ピーター・ティールを知るための重要な手掛かりとして、「世界を手にした反逆の企業家の野望」という書籍があります。他にティールの書籍として過去に、スタンフォード大学で行なった起業についての講義を聴講生がまとめた「ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか」がありました。しかし、彼の思想や行動についての記述は少ないために、この「世界を手にした反逆の企業家の野望」は大きな反響を呼びました。
これはシリコンバレーの金融およびテクノロジーに関する専門家でもあるトーマス・ラッポルトによる著作で、今まで語られなかったピーター・ティールの思考についてまとめられており、世界でも多くの国で翻訳されました。

この書籍が世界で注目を集めたのは、ピーター・ティールがあまりメディアに登場せず、取材などにも応じないイメージがあったからでしょう。この書籍で重要な点は、トランプ政権を支持し「アメリカの影の大統領」と呼ばれるまでになった2018年までの動きが描写されていることでしょう。

2018年3月の時点での彼の住むアパートは、文字通り「トランプ・タワー」を見下ろせる場所にあるのです。「とってもクレージーな2年間だったよ」と、彼は語ります。ピーター・ティールがトランプを支持するようになった2016年から現在に至るまでの経緯を追うことができるのは我々にとって大変貴重な共有体験になるでしょう。
機会があればぜひ一読をおすすめしたいと思います。

政治に絶望し、目的のために政治に介入

ピーター・ティールはリーマンショック後に、多くの金融機関を国家が莫大な公金を投じて救済しようとし、その権力を肥大化させようとする行動に対して絶望したと、かつて告白しています。こうした政治的な闘争から逃れる領域を彼は探し求めたのでしょう。その答えがテクノロジーによる新しい領域の開拓をすることだったのです。

そのためにピーター・ティールは、いくつかの領域を検討し始めました。
サイバースペース、宇宙、海上自治都市など、「独立自由国家」の樹立を求めるようになったのです。
しかしながら、その実現には多くの時間を必要としました。そのために彼は、時間を短縮する手段として自らが政治介入する道を選択したのです。その最終的な目標はいったい何なのでしょうか。

世界の大統領となる日

さて、ピーター・ティールが「アメリカの影の大統領」と呼ばれる理由は結局のところ、何を指すのでしょうか。
彼は「誰もがAだと信じているけれど真実はB」である「隠れた真実」を見つけろ、という「コントラリアン(逆張り)」を行う投資家でもあります。

ピーター・ティールの野望は、ドナルド・トランプという「投資」を行ったとき、どの方角を向いていたのでしょうか。2018年の今なら少しずつその答えが出始めています。

世界の人と人をつないでいるのはフェイスブックですし、グーグルは世界の情報を提供しています。ユーチューブはもはやTVを越えようとしていますし、ペイパルは仮想通貨に先駆けて国の中央銀行の機能に取って代わろうとしました。ブロックチェーンの技術練磨によってそれは将来現実のものとなるでしょう。

これらはアメリカ合衆国だけに起こっていることでなく、世界規模で起こっていることです。つまり、ピーター・ティールはドナルド・トランプという逆張りに成功したことで、テクノロジーを政治の規制から取っ払おうとしているのではないでしょうか。その視点で考えるのであれば、当時「最大の福祉国家」を目指していたヒラリーよりもトランプの方がよほど好ましいと考えたのは容易に理解できる話です。もちろん、これは1つの仮説にしかすぎません。

しかし、誰もが戦慄するようなとてつもない彼の「野望」が浮かびあがるのです。
現に彼は非常に優秀で、親密性のあるかつてのスタートアップメンバーを政界へ進出させています。かれらがテクノロジー優位の決断をするのに時間はかからないかもしれません。彼らにとって政治とはアメリカの話ですが、テクノロジーは世界規模のものだからです。いえ、世界だけではありません。

既にピーター・ティールは宇宙開発や延命技術に手を出しています。

アメリカの大統領は、アメリカを支配します。しかしながら、現在の「アメリカの影の大統領」であるピーター・ティールは、「テクノロジーによる世界の大統領」になることを目指しているのかもしれません。

ピーター・ティールに関する動画

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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