進撃の巨人:なぜここまで大ヒット作となったのか

人類と巨人の戦いを描いた進撃の巨人。別冊少年マガジン(日本のマンガ雑誌)にて2009年に連載を開始。現在までの累計発刊部数は7600万部を超えており、今や世界各国の言語に翻訳され、国境を越えて人気を集めている。漫画、アニメ、映画、ゲームなど、多くのコンテンツにも広がりを見せ、その勢いは衰えを知らない。一体ここまで大ヒットしたのは何故なのか。考えられる理由について記していこう。

※本記事は一部ネタバレも含むので未視聴の方はご注意ください。

■あらすじ

まずは簡単なあらすじをご紹介します。
人類はある日突然現れた巨人という脅威に曝されました。高い壁の中へと追いやられ、自由を失います。尊厳までもが奪われようとしている中で、巨人に対抗しようとする者たちがいました。それが調査兵団。そこに身を置く主人公、エレン・イェーガーを始めとした一部の人類は、心臓を捧げて巨人に立ち向かいます。奪われた自由を取り戻すために。

■アニメ化による爆発的大ヒット

本作は漫画を原作とする作品です。日本での連載開始は2009年。当時はあまり話題に上がらない作品でした。ところが2013年、日本国内でテレビアニメ第1期が放送されるとたちまち人気となり、瞬く間にその熱は世界中の人々に伝わることとなります。

アニメ化をすることにより話題になる作品というのは数々存在しますが、本作において、その熱量が他作品を圧倒していたのは周知の事実でしょう。アニメが1話放送されれば次々と感想がネットにあげられ、リアルの世界でも話題となる頻度は上昇。そして主題歌を歌ったグループは紅白歌合戦(日本におけるヒットソング歌手が集まる音楽番組)にも出場しました。
一体何がそこまで世界中の人の心を掴み、揺さぶったのでしょう。

まず考えられる要因としては、巨人という脅威がアニメというリアリティのある描写をされたことが挙げられるでしょう。
原作においてもなかなかにインパクトのある姿をしている巨人たちは、白黒の動かない絵でさえ、どこか潜在的な恐怖心を抱かざるを得ません。そしてその巨人たちは人類を食らい、わたしたちの予想をはるかに超える行動ばかりをするのです。
それが色を付けて動き出すと、その衝撃はとてつもないものとなりました。

通常アニメでは人を食らうような描写は避けられることが多いのですが、本作ではそこもしっかりと描かれています。しかもそれが普通とばかりに、次々と。そしてこれらを助けるかのようなクオリティの高い作画、演出、声優陣の迫真の演技が重なることにより、記憶に強く残るのも肯けるものとなったのです。巨人の真の脅威を伝える術は、アニメが最適だったということでしょう。

■ストーリーにも注目

おおまかなあらすじは先にご紹介しましたが、そこに隠されたストーリーの奥深さも大ヒットの大きな要因だと考えられます。

ただ人類が巨人と戦うだけではありません。巨人という存在は未だ明かされていない秘密が隠されており、そしてそれに関わっている人類、裏で動く存在など、非常に多くの設定が秘められているのです。これは原作においても未だ全ては明かされておらず、ファンはその真相を知りたいと、現在進行形で切に願っています。

なぜ巨人は突如として現れたのか、巨人はどこからやってきたのか、そもそも巨人は何なのか、なぜ人が巨人となったのか、巨人という脅威の秘めたる真実を隠している存在は誰なのか、巨人の目的は何なのか、などなど、挙げればきりがありません。

これらは一見1つ1つが独立しているようですが、実は密に関わり合っています。そして1つの謎が紐解かれれば、新たな謎が生じます。これが、まるでどこまで行っても辿り着けないような答えを追い求めるかのようにのめりこんでしまう要因なのです。全ての謎を知りたいがために。

日本での連載開始当初、一体どれほどの人がここまで緻密で多くの秘密が隠された作品だと予想できたのでしょうか。物語が進むにつれて徐々に核心には向かっています。しかし、真実はいまだ奥底。原作者はどこまで物語を構築しているのでしょう。これからも目を離さずに注目したいところです。

■次が見たくなるような、秀逸な終わり方

さて、テレビアニメの引きの良さについても少し触れておきたいと思います。
アニメは日本国内において、2018年冬の現在までで第3期まで放送されています。第1期は2013年、第2期は2017年、そして第3期前半が2018年。第3期の後半は2019年4月より放送が予定されています。
このそれぞれのクールの最後が実に続きを見たくなるような上手い引きをしているのです。
※ここからは一部ネタバレも含むので未視聴の方はご注意ください。

第1期は主人公らが調査兵団へ入団し、巨人と熾烈な戦いを繰り広げます。途中、味方の中に巨人が隠れていたことを突き止め、対峙。仲間であり実は巨人であったアニ・レオンハートは、エレンたちとの戦いにおいて敗北を確信すると秘密の一切を伏せたまま、それを守るように深い眠りに落ちていったのです。

第2期は味方である調査兵団の中にさらなる巨人が隠れていることが明かされ、加えて巨人と王政との関わりも示唆される展開に。調査兵団の一員であるクリスタ・レンズことヒストリア・レイスが実は王族であることも明かされました。仲間であった巨人たちには隠された裏の事情があるという事実のみ伝えられ、いずれも謎のまま、それぞれの道を選択して決別。

そして第3期前半では王政の実態や巨人の謎などが次々に明かされていきました。それでもまだ物語の核心には触れず、新たな謎を残して続く後半へと締めくくられたのですが、最終回のエンディングにとある演出が盛り込まれました。エンディングの途中にバグが発生したかのような映像を取り入れ、回想のような、真実に迫るような一場面などを瞬間ごとに映し出したのです。そうして最後は続く物語の冒頭のような場面だけ残し、幕を閉じました。

それぞれの引きは実に見事で、誰もが続きを見たいという欲を駆り立てられたことでしょう。第2期の放送は若干の時間が空いたものの、第1期の頃と同じほどの熱を集めました。これも全ては第1期のラストが巧妙だったからに違いありません。
もちろん、もっとこの作品を見ていたいという単純な面白さからくるものもあったのでしょう。それでも各最終回の引きは上手いものだったと思います。

■登場人物たちのキャラクター性と随所に挟まれる小さなギャグ

これまで作品の世界観などについて触れてきましたが、登場人物たちも魅力的です。
主要なキャラクターは大勢いますが、それぞれがしっかりと個性を確立していて、いわゆる捨てキャラがいないのです。物語の途中で各キャラクターに焦点を当てたエピソードも含まれているので、どのキャラクターにも思い入れが持てます。

例として、個人的に好きなキャラクター、ハンジ・ゾエを少しご紹介したいと思います。
ハンジは調査兵団分隊長であり、エレンたちの上官にあたります。とてもはつらつとしておりフランクで明るい性格ですが、同時に思慮深さも兼ね備えた策士家です。その頭脳は団長のエルヴィン・スミスのサポートとしても役に立っているほど。さらには巨人に対して深い興味を持っていることから、さまざまな実験などをして日々研究を進めています。巨人が好きという変態のような節も見られる、いろいろな面を持ち合わせているキャラクターです。
ご説明の通り、ハンジはとても個性的です。重要なキャラクターであることは間違いないのですが、それでもこの個性はなかなかに強烈。
といった具合に、他のキャラクターたちも強烈な個性を持っています。これは本作の大きな持ち味と言っていいでしょう。

そしてそんなキャラクターたちが繰り広げる、随所に挟まれた小さなギャグも見ものです。
まともな場面での唐突なギャグはシュールとしか言いようがありません。本編が重たいものなので、余計に目立つのでしょう。面白いかはさておき、そんな一面も見られることがいいスパイスになっていることは間違いありません。物語の緩急とでも言うべきでしょうか。とにかく、深刻なシーンが続く中でのちょっとしたシュールさは、なんだかほっこりするのです。

と、油断して見ていると爆弾発言をされたりするので注意が必要。
特に話題となったのは第2期、ミカサ、アルミンらが重要な話をしているかと思いきや、背後でライナー、ベルトルトが実は巨人だったとさらりとカミングアウトしていた場面。今日の朝ご飯は何を食べたといったくらい、本当に何でもないことのように軽く、大きな謎が明かされたのです。

これらは作者の遊び心なのか、それとも元々ギャグが強めな作風の人なのかは定かではありません。しかしこの小さなギャグは、本作の小さな味となっているように思います。

■最後に

これまでに挙げたものが直接本作の大ヒットと直結しているかは不明ですが、少なくとも一因であることは間違いないと思います。個人的に本作の面白さを語ると、上記のようになったのです。

もちろん、作画の細かさ、アニメオリジナルの展開、細かい演出など、総合的な完成度の高さだけ考えても大ヒットしたのは肯けます。それだけ本作はクオリティが高いからです。さらにその完成度の高さが維持されたままなので、これまでの視聴者も安心して見続けることができるのでしょう。

これからまた新たな展開、新たな登場人物、新たな場面へと移り、エレンを始めとする人類は巨人たちに立ち向かっていきます。いつ、どのような形で物語が終結するかが読めない分、期待値は高まるばかり。まだ暫くの時間は空きますが、アニメの続きを待ちわびることにしたいと思います。きっと、思いを同じくしたファンは大勢いることでしょう。

アニメ「進撃の巨人」第一期 予告編

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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