ノバク・ジョコビッチ:史上最強のリターナー

<始まり>

ノバク・ジョコビッチはセルビア出身のグランドストロークを得意とする男子テニスプレーヤーです。2018年で31歳になりますが、現在の男子テニス界では最強のテニスプレーヤーと言って良いでしょう。
2003年16歳でプロに転向し、2006年に初めてATPツアーで優勝しました。2008年に全豪オープンで優勝し、グランドスラム大会での初めての優勝を飾りました。この時、ジョコビッチは、20歳でした。

2010年末に検査の結果、グルテンアレルギーの持ち主であることが判明し、小麦と乳製品を制限した食事改善をして、2011年からの快進撃が始まりました。

<輝かしい戦歴>

グランドスラムの優勝14回(歴代3位タイ)、キャリア・グランドスラマー、史上初のキャリアゴールデン・マスターズ(マスターズ9大会全制覇)、全豪オープン最多連覇の3連覇で6回優勝、ATPワールドツアー・ファイナルの優勝5回、マスターズ1000の優勝32回(歴代2位)、ATPワールドツアー・マスターズ1000の年間6勝(史上初)、2度の4大大会3冠(2011年、2015年)、グランドスラム4大会連続優勝(男子史上3人目)、世界ランキング1位通算在位は223週(歴代5位)、1位連続在位が122週(歴代4位)など、輝かしい記録がたいへん多い選手です。

<身体的特徴とテニススタイル>

ジョコビッチは、身長188cm、体重80kg。右利き、バックハンド・ストロークは両手打ちです。
ベースラインから広角に打ち分けるショットが、フォアハンドでもバックハンドでも正確で多彩です。スライスあり、強打あり、トップスピンあり、緩いボールありで、どれも同じフォームから打ち出されるため相手のミスを誘います。特にサイドラインを狙って打つショットは正確で、相手からは反撃しにくいようです。しかし、ショットそのものは堅実で派手さはないため、かなり地味なテニスに見えます。

サーブはスピードも速いですが、コースの正確性が高くサービスエースも多いです。特に、ボリス・ベッカー(ドイツ)がコーチになってから著しい向上が見られました。

サービスリターンが極めて良く、単に強打のサーブを打ち返すだけでなく攻撃できないような所に返球するのがうまいため、現在最も優れたサービスリターナーと言えるでしょう。

また、ストロークの打ち合いでも特にディフェンスに優れていて、やっと追いついたと思ったところから信じられないような攻撃的なショットを返すのが得意です。父親がプロのスキー選手だったこともあり小さい頃からスキーをやっていて、横滑りがうまく体が柔らかいためではないかと言われています。また、より遠くのボールを捕らえることができるのは背が高いだけでなく、背丈に対して手足が長いためとも言われています。
さらに打球の予測に人並み外れた能力があります。相手が打つ前から打球方向へ走っている場合が多いですが、それでいて、逆を突かれる場合は極めて少ないようです。

スタミナも驚異的で、ラファエル・ナダル(スペイン)やロジャー・フェデラー(スイス)とグランドスラム大会で数多くの5セットマッチを戦い制していることが多いです。食事改善の賜物なのでしょう。

<復活>

歴代の多くのチャンピオン達も、30歳前後から怪我が増え、35歳を待たずして引退する場合がほとんどです。怪我の少ないジョコビッチもまた例外ではありませんでした。輝かしい戦歴を残しているジョコビッチですが、2017年30歳になった時、右肘痛のためウィンブルドン大会以後の全ての試合を欠場しました。その後、ツアーには復帰しますが、2018年の全豪オープンの後に右肘手術をして世界ランキングは22位まで下がりました。多くの人はこれでジョコビッチも終わりになると思っていました。

しかし、その後ウィンブルドン、全米オープンと優勝し、キャリアゴールデン・マスターズ(マスターズ9大会)も制覇し、ここに完全復活しました。また、2018年の最終ランキングでは、1位に復帰しました。

<コーチ>

最近では、テニスにおいてもコーチの存在が大きくなっています。普通の人から見れば、フェデラーやジョコビッチのような大選手をコーチできる人などほとんどいないのではと思うかもしれませんが、それでも特定の技術をマスターするため新たにコーチを呼ぶようなことがあります。例えば、フェデラーの場合は、ボレー技術のアップにステファン・エドベリ(スウェーデン)を、バックショットの強化に現在のイワン・リュビチッチ(クロアチア)をチームに加えています。

ジョコビッチの場合は、2006年から2017年まで、マリアン・バイダコーチがついていて、ジョコビッチがほとんどの大会でチャンピオンになるまでの時間を共に歩みました。コーチというより相談相手という方が近いのかもしれません。

2014年からは、バイダコーチの提案でボリス・ベッカー(ドイツ)をチームに加え、その目的もはっきりしていました。当時ジョコビッチの弱点はサーブにあったのです。この選択は非常に上手くいき、3年近くの間にグランドスラムで6回優勝。キャリア・グランドスラマーになったのもこの頃です。

2017年の5月にジョコビッチは、バイダコーチとベッカーコーチから離れました。その前年から不調続きで、新しい方法を模索し始めたのでしょう。

2017年の全仏オープン後からアンドレ・アガシ(アメリカ)をコーチに招きました。実は、アガシは家庭人で、コーチ就任をためらっていたそうですが、妻であるシュテフィ・グラフ(ドイツ)が後押しをしたと言われています。11月には常に随行することはできないということで、アガシがラデク・ステパネク(チェコ)もコーチに加えるよう進言したそうです。しかし、この組み合わせはあまり大きな成果をあげられず2018年4月に関係を解消しました。
この過程についてジョコビッチは多くを語っていませんが、アガシコーチからは35歳まで現役のトップを続けられた方法を教わりたかったのではないでしょうか。アガシは、歴代のチャンピオンの中では例外的に長寿で、35歳で全米オープン決勝に進出しています。

しかし、ジョコビッチのテニスとアガシのテニスは型が違いすぎていて、ジョコビッチの希望には沿わなかったのかもしれません。もともとライジングボールを武器にチャンピオンになったアガシは、年齢とともにそのパワーが落ちてきてしばらく低迷しました。アガシが復活できたのは、相手のサーブを後方に下がらず、ベースラインの近くに立ってライジングボールを返せるようになり、最強のリターナーになることができたからです。
これに対してジョコビッチのサービスリターンは、必ずしもベースラインぎりぎりに立つのではなく後方に下がって受けることも多く、リターンが良いのは彼の予測能力が高いためです。

ジョコビッチは、アガシとの関係を解消した後、再びバイダコーチとコンビを再開しました。この二人の相性はとても良いのでしょう、その後ジョコビッチは、これまでの不調が嘘のように快進撃を続けました。2018年には年間世界チャンピオンに復帰しました。

<まとめ>

ジョコビッチは、キャリア・グランドスラマー、キャリアゴールデン・マスターズ、世界ランキング1位通算在位は223週など輝かしい記録が多い。
ベースラインから広角に打ち分けるショットは、フォアハンドでもバックハンドでも正確で多彩。ディフェンスにも優れていて、やっと追いついたところから攻撃的なショットを打ち返す。
また、最も優れたサービスリターナーで、現在の男子テニス界では最強のテニスプレーヤーだ。

ノバク・ジョコビッチとロジャー・フェデラーの試合に関する動画

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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