ジェイソン・カラカニス:エンジェル投資家に必要なこと

ジェイソン・カラカニスは、アメリカの起業家でありエンジェル投資家である。
まだ無名であったUberへの投資で大成功を収めた。これまでに150社以上の投資を行い、6社のユニコーン企業を生み出した。アメリカでもトップ5に入る世界のエンジェル投資家としての手腕に注目が集まる。シリコンバレーの著名人。

<投資し、共に夢をみて、共に成功する>

「10億ドルの会社でなく、10憶ドルの創業者を選ぶ」という言葉に代表されるように、カラカニスの投資のスタイルは、その商品・サービスや市場ではなく「人」にすることに特徴があります。先見の明があるように見えるカラカニスも、実はTwitterへの投資の機会を逃した経験があります。Twitter創業者のミーティングで、カラカニスはそのサービスのメリットに気づかずに投資を見送りました。この失敗から彼は投資の判断を人にフォーカスさせることの重要さを学んだのです。

エンジェル投資家には創業者にお金を託して投資家自身はあまり動かないタイプも多いのですが、カラカニスはミーティングを綿密に行い一緒に事業を成功させていくというタイプの投資家です。
一般的にエンジェル投資家の成功率は、ベンチャーキャピタルよりも低く80%~90%は失敗してしまうといわれています。成功するにも長期的な視点が必要であり、資産にも忍耐も相当の量が必要となるのです。

カラカニスはエンジェル投資家の魅力をお金のリターンだけではなく、世界に衝撃を与えるほどの事業を新しい世代の創業者と共に夢をみて作り上げることであると述べています。「エンジェル投資家の最初の仕事はスケールの小さい人間に起業家が影響を受けないように盾となること。小さい成功を目標にせず、大きい目標を追ってもらえるようにすることだ。」という言葉からも、単なる投資家としての姿勢ではないことを知ることができます。

<「エンジェル」を身近に感じることができる人物>

起業のスタートを個人投資で支援する投資家を「エンジェル」と呼びます。
1978年にニューハンプシャー大学の教授であったウィリアム・ウェッテルが使い始めたこの言葉は現在ではビジネス用語として日常的に使われるようになりました。

ジェイソン・カラカニスは、Uberがまだ無名だった時に2万5000ドルのエンジェル投資で3億6000万ドルにしました。この衝撃は非常に大きいもので、シリコンバレーにおいても伝説的に語られるようになりました。彼はその投資に関する考え方を「エンジェル投資家」という1冊の書籍にまとめました。この書籍は、スタートアップ企業への投資の指南書として書かれています。
投資会社が行うベンチャーキャピタルと違い、エンジェル投資についての成功事例をまとめた書籍は非常に珍しいもので、読んでいると1人のエンジェル投資家としてカラニカスと一緒に起業の手助けをしているような気持ちにさせてくれます。それだけ率直に、リアルに書かれており、その体験を共有することができるのが本書の魅力でしょう。
歯に衣を着せぬ言い方と本音、時にはストレートすぎる語り口は読んでいて痛快さを感じさせてくれます。

エンジェル投資家の多くは既に第一線から退いた経営者が多く、自らの経験やネットワークを有効に使いたいという目的での投資となる場合も多くあります。
カラニカスは起業家と投資家を橋渡しする組織を数多く創立していると同時に人気の週刊ビデオ番組「ディス・ウィーク・イン・スタートアップス」のホストであり、数多くのメディアにも頻繁に登場する人物です。普段では、なかなかイメージが出来ない「エンジェル」を身近に感じられる人物としては非常に稀有な存在でしょう。

<無一物からの叩き上げ>

アメリカで成功した起業家には富裕層の出身者が多いといわれています。
ビル・ゲイツは弁護士の息子ですし、ラリー・ペイジやサーゲイ・ブリンも上層中産階級出身です。マーク・ザッカーバーグも歯科医の家庭で生まれました。彼らはハーバード、スタンフォード大学といった名門大学で学んだことも共通しています。それに対してカラカニスは、ほとんど無一文からの出発でした。

「大学の夜学に通うために地下鉄に乗るときポケットには2ドルしかないのが普通だった」と本人が語るように、貧困な青春時代を過ごしています。父はブルックリンのバーの経営者でしたが、やがて破産し差し押さえを受け、母が看護師として必死で一家を支えなければならなかったといいます。「小学生のころから父親のバーで働き、中学生になると朝4時まで働かされた。ケンカ、銃、ギャンブル、ドラッグなどは周囲にあった。クレイジーな環境だったが、だからこそ社会に出たときはもう余裕だった。」そういった背景を知るとより、成功までの道のりがドラマチックなものに思えてきます。

正しいエンジェル投資というものは存在しません。投資である限り必ずリスクを背負うことになります。そんな投資をなぜ続けるのか、彼は「自分で全部決められるからだ」と答えます。「たとえ自分に大きな資金がなくてもエンジェル投資家になる方法はいくらでもある」と詳しく説明しようとする姿勢は、他の投資家と大きく異なります。カラカニスがそう話している時、彼はもしかすると無一文時代から現在に至るまでのことを思い返しているのかもしれません。

<生活における「摩擦」の除去>

配車アプリサービスを提供するUberの成功の秘訣の最大のポイントは一体何でしょうか。それは「摩擦」を除去できたことだとよくいわれます。
起業家が行うことは、従来よりも優れた商品やサービスを展開することです。よりシンプルな視点としては、「時間の短縮」や「苦労の軽減」、「経費の節約」という生活の上での摩擦を除去するという視点があります。

Uberのやったことはこの全てに当てはまるものでした。それまでのタクシーのシステムは
①電話をしてタクシーを呼ぶ
②タクシーを降りる際に運賃を払う
というものでしたがUberのシステムはスマートフォンのアプリで配車をし、支払いを行うことを一括化するという画期的なものでした。また画面上で到着までの所要時間や目的地までの概算料金を提示してくれるのです。さらには、タクシー乗車後に乗客とドライバーが互いに評価を行うシステムを採用しており、互いに信用できる情報を確認することが可能になりました。こうしてUberは現在でもそのシェアを世界中に拡大させています。

<エンジェル投資家に必要なことは何か?>

カラカニスは、エンジェル投資家に向いている人には次の4つのものが必要だと述べています。

①お金を持っている
②自由な時間がある
③人脈がある
④経営やテクノロジーに関して専門知識を持っている

というものです。エンジェル投資家は、投資を行った創業者の課題を手助けし、ネットワークを生かした事業拡大、創業者の時間のロスを回避させるという役割があるため、以上の4点が必要だとしています。またこれに加え「人付き合いの能力」が最も重要な資質だと語ります。自身が投資するためには幾度のミーティングを通じてその会話から将来有望な人物を見抜かなければならないからです。

カラカニスは、投資を検討するため必ず4つの質問をするそうです。経営者やサラリーマンで明確に回答できる人はどのくらいいるのでしょうか、自身の仕事に当てはめて考えてみましょう。

①なぜ、このビジネスを選んだのですか?
②あなたはどこまで本気ですか?
③成功する可能性を教えてください
④投資家が得るメリットは何ですか?

あるインタビューでカラカニスはこう述べています。

政府や宗教、非営利団体が世界を良くするのではない、優れた起業家が世界を良く変えてゆく。

Talks at Google

だからこそ、優秀な起業家のパートナーとしてのエンジェル投資家の価値があるということでしょう。

ジェイソン・カラカニスに関する動画

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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