BMW : 過去から未来までのビジョンを訪ねる

1.概要

BMWは多くの人が憧れを抱く、ドイツの高級車ブランドです。
このBMWを皮切りに、世界各国の自動車メーカーについて、その生い立ちから現在までの歩みを訪ねることで、時空を超えた世界巡りの旅に出ることを、さあ始めましょう!
ドイツという、第二次世界大戦の傷跡が色濃く残った企業が発展するために、どのような自動車創りの展望と構想を持ち、将来を見通して描いた未来像を成し遂げてきたかを中心に、歴史を訪ね、紡いで行きます。

2.BMWの産声

BMWは1916年創業の100年企業です。
その出発は、航空機のエンジンメーカーの姿からです。
まず、1916年の世界の世相を訪ねてみます。

第一次世界大戦の真只中であった時がこの1916年です。
この世界大戦は、1914年7月から1918年11月の間に争われた4年戦争で、欧州大戦或いはWorld War Iとも呼ばれていました。
数多くの国が参戦し激しく対立した人類にとっての悲しい記憶です。
第二次産業革命により、世界の列強国は技術革新を果たし、これが平和には裏目となって死亡者数が大幅に増えた戦争です。

対立を繰り広げたのは、連合国と中央同盟国の二つの陣営です。
その内訳は、ロシア帝国、フランス、グレートブリテン、アイルランド連合王国等が「連合国」側を、ドイツ帝国、ハンガリー帝国等が「中央同盟国」側を構成しました。戦火は拡大し参戦国もやがて拡大して行きました。アメリカ合衆国と大日本帝国が連合国側に、オスマン帝国とブルガリア王国が中央同盟国側に加入しました。
国名から直ちに分かるように、帝政、王政がまだまだ継続されていた、そんな時代です。
戦勝国は連合国側で、ドイツ帝国には負け戦となりました。
この戦争は参戦各国内で革命などを引き起こす事態までの影響を及ぼしました。

ドイツでも第一次世界大戦終戦末期の1918年11月に革命が起こり、これに端を発して大戦は終結しました。革命によってドイツの帝政は打破されたのですが、終戦後ドイツ植民地は戦勝国の間で分割されました。
世界大戦というこんな悲劇が二度と起こらないようにと、やがて国際連盟が設立され世界平和を求める試みはありましたが、参戦各国間のしこりは計りしれなく、特にドイツの恨みは大きく、終戦から21年後の1939年、悲しみと懺悔の言葉の舌の根も乾かぬうちに、第二次世界大戦が勃発しました。

BMWはこの大戦中に、航空機メーカーとして創業されました。同じ1916年にはアメリカ合衆国では同じ航空機メーカーのボーイング社も創業されていることは偶然なのか、時代背景がそうさせたのか、思いを馳せるところです。

3.BMWの魂、”BMW MEISTER”

質実剛健と表現されるドイツ人の気質を表す上で象徴的な事柄が、ドイツの産業の発展に大きく貢献してきたマイスター制度です。
マイスター制度は、中世ドイツから伝統的に続く慣習で、手工業等においての技術を磨くための徒弟制度と、最高峰の技術力をもち、道を極め頂点に到った人間が手にする称号のことを指します。
その道を極めた職人に対して尊敬の念を抱いて「マイスター」と呼ぶ習慣がヨーロッパには存在します。

つまりBMWの自動車整備士が常に進化し続けるための昇格制度であり、技術力の高さを誇るBMWにとっての、ユーザーへ安全と信頼を提供する約束であり絆です。
ですから、マイスターへの道は長く険しく曲がりくねった道のりです。
BMWでは自動車整備士のことを、メカニックではなくサービスマンでもなく、テクニシャンという特化した呼び方をします。
そして、テクニシャンが習得した技術レベルによって、5段階に仕分け位置づけています。その5つとは、

  1. 見習い
  2. BMWジュニア・テクニシャン
  3. BMWテクニシャン
  4. BMWシニア・テクニシャン
  5. BMWマイスター

ジュニア・テクニシャンは新人レベル、テクニシャンになって故障診断が担当できるようになりますが、まだ車種が限定されます。
シニア・テクニシャンになってようやく一人前です。全車種の故障診断、 部品交換を任せられます。
そしてBMWマイスターには高度診断技術が求められます。
過去に事例がないようなトラブルに対しても、冷静沈着に短時間で解決できる判断力、人間力が必要条件です。
BMWマイスターは技術というハード領域だけでなく、接客、計数管理や部下指導力等の店舗運営のソフト領域に関しても、熟知していることを求められ習得しています。
この厳しい技能習得制度があるからこそ、BMWは高い品質を誇れるのです。

4.BMWのモデルラインアップ

BMWの現行の全車種を、モデルとボディタイプでまとめます。
BMWの車種構成は多彩なバリエーションだけでなく、整然と仕分けられた統一感が強く感じられます。

モデルボディタイプ名備考
1シリーズ5ドアハッチバック  
2シリーズクーペ、カブリオレ、アクティブツアラー、グランツアラー 
3シリーズセダン、ツーリング、グランツーリスモ 
4シリーズクーペ、グラン クーペ、カブリオレ 
5シリーズセダン、ツーリング、グランツーリスモ、アクティブ・ハイブリッド5 
6シリーズクーペ、グランクーペ、カブリオレ、グランツーリスモ 
7シリーズセダン 
8シリーズクーペ 
XシリーズX1、X2、X3、X4、X5、X6SUV
ZシリーズZ4 
MシリーズM2コンペティション、M3セダン、M4クーペ、M4カブリオレ
M5セダン、M6クーペ、M6グランクーペ、M6カブリオレ
X5M
X6M
 
iシリーズi3
i8
EV
PHEV

次にボディタイプ別の概要を端的にまとめます。

・1シリーズ

1シリーズはコンパクトカーです。いわばBMWの入門編です。

・2シリーズ

クーペのエンジンは2.0L直列4気筒ターボエンジンを搭載し、トランスミッションは8速ATです。
クーペのカテゴリー中の高性能モデルであるM2では直列6気筒ターボエンジンを搭載しています。
アクティブツアラーはコンパクトミニバンで、そのほとんどがFR車であるBMWの中では珍しい、FFです。
エンジンは1.5L直列3気筒ターボエンジン、2.0L直列4気筒ターボエンジン、2.0L直列4気筒ターボディーゼルエンジンの搭載と、多彩なバリエーションを誇っています。

・3シリーズ

3シリーズは1975年に産声を上げて以来、BMWの屋台骨を背負ってきたセダンパッケージです。ベンツCクラスが販売の上での最大の好敵手です。
エンジンは2.0L直列4気筒ターボエンジン、3.0L直列6気筒ターボエンジン、2.0L直列4気筒ターボディーゼルエンジンの3つのターボバージョンがあります。
2012年から発売が開始された、現行モデルである型式F30から、ダウンサイジングターボエンジンを前面に押し出しています。
ダウンサイジングターボとは、自動車の設計に対する考え方の中の一つです。これは、ターボと言う装置を使うことにより、排気量を小型化し燃費を良くしようとする考え方、つまりエコロジーへの道を選ぶことです。

・4シリーズ

4シリーズのボディタイプはクーペ、グランクーペ、カブリオレの3種類で、セダンである3シリーズのクープ、カブルオレバージョンという役割です。

・5シリーズ

5シリーズの中にはハイブリッド車があります。
これは、アクティブ・ハイブリッド5と呼ばれ直列6気筒エンジンとモータを組み合わせたセダンパッケージです。

・6シリーズ

6シリーズはスポーティな高級モデルの位置付けです。
この中のクーペは、3.0L直列6気筒DOHCまたは4.4LV型8気筒DOHCツインターボエンジン搭載のスポーツモデルです。
現在は、約20年ぶりに復活した8シリーズクーペに統合されています。

・7シリーズ

7シリーズは大型高級セダンで、BMWのフラッグシップカーです。
オーナーが自分で運転しない高級車、お抱え運転手を意味する
ショーファードリブンではなく、走行性能が優れていることに加えて、後席が快適である上級セダンを指すドライバーズカーです。
そう、7シリーズはオーナー自らが楽しんで運転することを開発コンセプトとして設計されているのです。

そして最新技術が惜しみなく投入されています。
「カーボン・コア」は、ボディ構造に炭素繊維技術を用いたボディ軽量化技術です。
「リモート・コントロール・パーキング」は、ディスプレィ・キーを車外から操作することで、遠隔操作による駐車が可能です。
「iDrive」は、ジェスチャーとタッチパネルで操作が可能なナビゲーションシステムです。
「740e iPerformance」は、2.0L直列4気筒DOHCツイン・ターボ・エンジンに8速ATを組み合わせたプラグインハイブリッドモデルです。

多彩なラインアップの中から、あなたの理想にふさわしいBMWを見つけてください。

5.BMWの過去の名車とエンジン屋としての気概

「駆け抜ける歓び」のフレーズはBMWが世の中に提供する価値であり、人々を魅了し続けています。では、この抽象的なイメージの実体はどんな技術を指しているのでしょうか?
FR(フロントエンジン・リヤドライブ)の駆動方式 は、BMWが力を注ぎ、とことん追求してきた技術の中の一つです。
その理由は、FRを持続することで前後重量配分50対50の理想を曲げずに維持し、切れ味鋭く軽快なハンドリングを可能にさせることから、BMWのスポーティなイメージを醸し出すことにあります。

前後重量配分50対50の狙いは「マスの集中化」にあります。
これは主にバイクの操縦性を語る上で使われる用語で、マスとは重量のことです。
重いものは車体の重心付近に集中して配置することで、運動性能は向上します。
たとえば、野球のバットを振るとき、あるいはハンマー (金づち) を扱う木、手の握りを長めに持つより短く持ったほうがコントロールしやすいのと同じ理論です。

特定のモデルについてではなく、BMWの歴史を語る上で、エンジン屋としての真骨頂の発揮の一つであるシルキーシックスについて触れることは避けては通れません。
スロットルを開いて行った時の、継ぎ目なくリニアな吹き上がりが快感の、BMWが世に送り出した直列6気筒エンジンのパフォーマンスを、絹の生地の表面の滑らかさにたとえたのがシルキーシックスの語源です。トルク変動が少なく振動が少ないことがその理由です。

BMWのアイデンティティは、ドイツの頑固なエンジン屋と呼ばせることに、こだわり続けるところにあります。この頑固さの筆頭が、直列6気筒へのこだわりの歴史です。
BMWの現在のエンジンバリエーションは、2気筒から12気筒までが手の内にあるエンジンのデパートです。
100%電気自動車として開発されたEV・i3の発電専用エンジン搭載モデルには、直列2気筒エンジンを用いています。
時代の要請に積極的に応えながらも歴史を裏切らない、「エンジン屋」としての姿勢は未だ健在です。

6.BMWのエクステリア・デザイン

◆キドニーグリルとエンブレム

BMWのエクステリア・デザインで有名なのがエンブレムとキドニーグリルです。
この2つの特徴的なデザインの由来についてご紹介します。

◆エンブレムについて

BMWの歴史の始まりは、航空機・船舶用エンジンメーカーと航空機メーカーの2社の合併でした。
エンジン生産メーカーがラップ発動機工業 (RMW) で、機体生産メーカーはグスタフ・オットー航空機工業 (GOF) でした。これによりエンジンから機体まで自社生産の航空機メーカーとしてバイエルン航空機工業 (BFW) が1916年に誕生しました。

BFWのFはドイツ語Flugzeugnoの頭文字で飛行機のことです。
翌年の1917年に、このFをエンジンを意味するMotorenのMに変更して社名をBMWに改称しました。そしてBayerischeはドイツの南東部の州、バイエルンです。
そういった由来があって、バイエルンの州旗をBMWの母体であったRMWのロゴマークの中央にはめ込んだものが、BMWのロゴマークとなったのです。
州旗が採用されたのは、創始者のグスタフ・オットー氏が地元のバイエルンを愛してやまない心の表現であると言われています。

ところでこのグスタフ・オットー氏は、1876年にこの世で最初に4サイクルエンジンを完成させたニコラス・オットー氏のご子息です。一定容積のもとで燃焼が行われる定容サイクルのガソリンエンジンで、4サイクルのものはオットーサイクルと呼ばれていることは、その方面に興味がある人にとっては常識の領域です。また同時期の1886年には、ゴットリープ・ダイムラーが四輪自動車を、カールFベンツが三輪自動車をそれぞれ製作しました。ドイツが自動車大国である由縁を感じさせる歴史です。

エンブレムの由来には、このようにやがて世界に羽ばたく企業が地元愛に溢れていた歴史秘話が存在します。しかし、まことしやかに伝えられていたエンブレムの由来説がもう一つあります。
それは、航空機のメーカーとして創業したBMWのエンブレムは、飛行機のプロペラが回転している様子が着想であるというストーリーです。中央の十字の仕切りはプロペラを表し、丸い形はプロペラが回転して残した道筋、そして青い色が空で白色は雲を表すと言う解釈です。

話しとしては良くできていますが、エンブレムの成り立ちの事実とは違います。
BMWの本社があるバイエルン州都ミュンヘンにあるBMWミュージアムで「エンブレムの由来はプロペラとは全く関係ない」と明確に説明されています。
歴史認識は正しく持って、ロマンが壊れないように心掛けたいものです。

◆キドニーグリルについて

BMWのキドニーグリルはエンブレムと共に文字通りBMWの顔であり象徴です。
キドニーグリルは、1930年代から現在まで連綿と受け継がれてきた伝統です。
フロントグリルの別の呼び方はラジエータグリルです。ラジエータに走行風を取り込んで冷却する役割があり、ただの飾りではなく機能美化されています。

キドニーは腎臓のことです。ボクシングで腎臓の場所を打ち込んでダメージを与えるパンチである、キドニーブローという使い方もされる言葉です。
腎臓の形をしているのでTwin kidney grille、あるいは「豚の鼻」と愛着を持って呼ばれていますが、デザインのモチーフはインゲン豆の系統であるキドニービーンズです。実は可愛さを求めて設計されたのです。
EVへと時代がシフトして行く中で、エンジン冷却の機能を持つフロントグリルが今後どのような形状の変遷を辿るのか、とても気になるところです。

7.BMW未来へのビジョン

◆電気自動車と自動運転、そしてカーシェアリング

モビリティの未来図と自動車産業の今後の展開を予測する上で、「CASEこそ業界を一変させる力を持っている」という表現がよく使われるようになりました。
きっかけはダイムラー社のディーター・ツェッチェCEOの言葉です。
「CASE」とは、Connected / 繋がる、Autonomous / 自動運転、Sharing / 共有、Electric / 電動化の4つのキーワードの頭文字が集合した造語です。

もう一つよく使われる造語・略語があります。それはMobility-as-a-Serviceの「MaaS」です。
MaaSは、ICT~Information and Communication Technology / 情報通信技術~を活用して交通をクラウド化し、マイカー以外のすべての交通手段による移動を1つのサービスとしてとらえ、シームレスにつなぐ新たな「移動」に関する概念です。
もっと簡単に言うと、自動車を所有せず、必要なときだけお金を払って利用するサービスのことです。カーシェアやライドシェアがこれに当たります。そしてCASEの中のSharing / 共有に該当します。

このように、自動車の外部環境の変化とメガトレンド「CASE」によって、自動車メーカーの近未来の姿は、自動車を製造・販売する会社から、クルマを移動するための手段としてのサービスを提供する会社に変化すると予測されているのです。
つまり、新たな技術開発とサービスにどれだけ投資できるかがカギとなってきます。

そんな時代背景に加えて、ヨーロッパ各国では近い将来、エンジン車の販売を禁止する取り組みをしています。
ドイツ政府は、2030年までにエンジン車の販売禁止を求める決議を可決しています。
イギリス政府は2040年までにエンジン車の販売禁止宣言をし、これにはフランスのマクロン首相も続きました。
この大英断の理由の一つには、パリ協定の厳しい数値目標の存在、それは「2030年までに温室効果ガスの排出を2013年比で26%削減する」取り決めです。

電動化に積極的に挑むBMWは、2025年までに市場に投入するピュアEVの数が12車種に上ると、2017年9月に開催されたフランクフルトモーターショーで発表しています。
BMWグループの経営方針は「持続可能なモビリティの実現」です。
自他共に認めるエンジン屋のBMWが、ビジネス・モデルが激変し電動化をひた走るモビリティの将来と真正面から向き合い、流れの先頭に立って未来を切り拓こうとしていることは、非常に興味深い展開です。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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