エルヴィス・プレスリー:ロックンロールの誕生とアイドル性

エルヴィス・プレスリーはロックンロールを生んでいません。全世界にロックンロールを発信した人物です。なぜ世界でエルヴィスより以前にロックンロールが流行らなかったのか。それはエルヴィスのアイドル性に隠されています。音楽界にアイドル性の考え方を埋め込んだのはロックンローラーのエルヴィスだったのです。

あなたが好きな音楽はなんですか?

ロック?R&B?ジャズ?

音楽には多くのジャンルがありますが、その中でもロックというジャンルは細分化が激しいジャンルになります。ハードロックやメタル、サイケデリック、パンクなど多くのジャンルがありますよね。

しかしこれらロックの起源となった音楽があります。それがロックンロールです。ロックンロールの誕生により音楽界は大きく変わりました。それは音楽市場の頂点にロックンロールが立っただけでなく、エルヴィス・プレスリーの登場によるアイドル性の重要性です。

この記事ではロックンロールの誕生だけでなく、エルヴィスにみるアイドル性の重要性について紹介します。

ロックンロールの誕生はとある曲が認知されたから

ロックの起源になったのがロックンロールであることは先ほど述べました。ロックンロールという音楽をビートルズやビーチ・ボーイズなどの60年代中期に活躍したバンドが独自の個性を加えていき、ロックが誕生したのです。

ではロックンロールが誕生したのはいつなのでしょうか。60年代のビートルズ、50年代のエルヴィス・プレスリーというくらいなので50年代というのはなんとなくわかるかもしれません。実はエルヴィスはロックンロールを世界に広める役割はしましたが、ロックンロールの生みの親ではないのです。

エルヴィスがデビューする前に「これがロックンロールだ!」と認知させた曲があります。それがBill Haley(ビル・ヘイリー)の「Rock Around the Clock」という曲です。この曲聴いたことある人も多いかもしれません。

この曲がリリースされたのが1954年でしたが、発売直後に大ヒットしたわけではありません。翌年の1955年に公開された映画「暴力教室」というものがあります。これは不良少年の暴力などを描いた問題作になったのですが、この映画の主題歌として使われたことで、若者を中心に広く認知されます。

あなたは現代のロックにどんなイメージを持っているでしょうか。夢や恋愛を歌ったものや社会人を応援するようなものもありますよね。ロックに清潔感あふれる爽やかなイメージを抱く人も少なくないでしょう。

実は50年前のロックに対するイメージは真逆でした。ドラックや酒、女、暴力などがロックでは歌われていたのです。そのイメージを植え付けたのは、最初のロックソングである「Rock Around the Clock」が映画「暴力教室」の主題歌だったからでしょう。

ロックンロールの最初は若者だけで流行った音楽でした。「Rock Around the Clock」はアメリカに広まり若者を中心に踊れる音楽として流行りました。当時の新しいダンスミュージックでもあったのです。2010年代で言う所のEDMのような立ち位置だったと考えればイメージがつきやすいですね。

ロックンロールの誕生から生じた変化

「Rock Around the Clock」が流行した以降は、ロックンロールの曲が次々とリリースされ、音楽市場でも大きな力を持ち始めます。そして音楽市場で力を持つ以外にも、ロックンロールの誕生によって大きく変わったことがあります。

それが「この曲はこの人が歌わないとダメだよね」ということです。

あなたはジャズが好きでしょうか。ジャズにはスタンダードと呼ばれる曲があり、それらをセッションすることが基本的な演奏スタイルになります。ジャズを聴いていると「この曲って違うミュージシャンが演奏していたな」というようなことが多くあります。

ジャスミュージシャンの腕の見せ所は、みんなも演奏している音楽をいかに個性的に演奏できるかがということです。ロックンロール誕生以前は、このような楽しみ方が現代よりも主流でした。

しかしロックンロールが誕生してから、「この曲はこのミュージシャンが演奏する」ということが求められ始めたのです。ケイティ・ペリーの曲はケイティ・ペリーが歌い、コールドプレイの曲はコールドプレイが歌いますよね。

「おじさんがロックンロールしても興奮しない!」「この曲はこの人が歌わないと味気ない!」つまり音楽にもアイドル性が問われるようになったのです。

(Elvis Presley wax figure at Grevin wax museum in Prague.)

アイドル性を備えたロックンローラー

「アイドル性を備えたロックンローラー??そんな人いるの?」

ロックンロール界のアイドルこそが、外でもないエルヴィス・プレスリーです。ロックンロールの誕生曲「Rock Around the Clock」を歌ったビル・ヘイリーではありません。

ビル・ヘイリーの「Rock Around the Clock」が映画で使用されたのは、ビル・ヘイリーが30歳の時でした。もうおじさんです。「Rock Around the Clock」が大ヒットしたことは間違いありませんし、若者に受け入れられたのも事実です。しかしアイドル性という言葉とは程遠い存在でした。

こんな時に登場したのがアイドル性抜群のエルヴィス・プレスリーでした。エルヴィスのアイドル性とは甘いマスクをした顔だけではありません。力強い歌声と高いビブラート、そしてセクシーなクネクネとしたダンスです。

当時の若者にとっては最高のアイドルだったのです。特に女性には人気爆発で、ライブでもテレビでもちょっと出演すれば女性たちが絶叫します。そして気絶する人も中にはいたと言います。またファッションなどにも影響を与えていました。

エルヴィスの素晴らしいところは若者のアイドルにとどまらなかったことです。エルヴィスはのちの音楽家にも影響を与えました。影響されたミュージシャンは、ジョン・レノンやボブ・ディラン、フレディー・マーキュリーなどなど例をあげたら霧がありません。

またエルヴィスはロックンロールだけでなく、黒人音楽であるゴスペルなどを歌いました。このことから黒人歌手であるジェイムズ・ブラウンは「彼は白人のアメリカ人に目線を下げるということを教えた」と語っていました。

人種差別の激しかった時代だということもあり、白人が黒人の音楽を歌うこと自体が珍しかったのです。エルヴィスは人種間の架け橋的な存在でもあったのかもしれません。

ロックンロール創成期に活躍したミュージシャン

ロックンロール創成期に活躍したミュージシャンはエルヴィスだけではありません。そしてその当時活躍したミュージシャンもアイドル性を兼ね備えている人が多いようにも感じます。

50年代活躍したロックンローラーといえば、
・チャック・ベリー
・バディ・ホリー
などがあげられるでしょう。

チャック・ベリーは元祖ギターヒーローとも呼ばれ、テクニックだけでなく弾き方にも特徴がありました。「ダックウォーク」と呼ばれるアヒルのように歩きながらギターを弾くパフォーマンスはとても有名で、ギターの弾き方にも大きな影響を与えたのです。ギター好きやギターキッズにはアイドル的な立ち位置にあったかもしれません。

バディ・ホリーは22歳という若さでなくなってしまいますが、その後のミュージシャンには多大な影響を与えています。ビートルズのポール・マッカートニーは「ビートルズはクリケッツ(バディ・ホリーのバンド)の真似から始まった」と語っています。またギター、ベース、ドラムから成るバンド形態の礎を築いた人としても有名です。

バディ・ホリーはその後のミュージシャンにとって重要な存在です。ミュージシャンにとっては、ある意味アイドル的な存在だったと言っても良いかもしれません。

ロックンロールが誕生して60年以上の月日が経っています。しかしロックンロールがロック音楽の起源となり、ミュージシャンのアイドル性を重要だと認識させた音楽であることは間違いありません。ロックンロールをあまり知らない人には、ぜひエルヴィスから聴いてほしいです。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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