ビートルズ:ホワイトアルバム50周年エディションから見えた本当のビートルズ

ビートルズのメンバーに亀裂が入り始めた頃のアルバムとして有名な「The Beatles」。ポール、ジョン、ジョージ、リンゴがそれぞれ作詞作曲を担当した30曲が収録されています。アルバムに統一感がないのもあり、ビートルズ崩壊の始まりの作品と言われています。
ビートルズのアルバムの中でも異様なアルバムとして有名な「The Beatles(通称ホワイト・アルバム)」。30曲というボリューム感たっぷりなアルバムとなっていますが、ほとんどはメンバーがそれぞれ単独で作った曲なのです。このことやリンゴの脱退などから、バンドに亀裂が入り始めたアルバムとしても有名になっています。
2018年11月9日には、50周年エディションが発売。そこには今までの「ホワイト・アルバム」に収録されていた30曲のリミックスに加えて「イーシャー・デモ」「セッションズ」が収録されています。
実はこの「イーシャー・デモ」「セッションズ」を聴いてみると、「本当に仲が悪かったのか」という疑問が湧き出てくるのです。
今回はホワイトアルバム50周年エディションから見えるビートルズについて紹介します。

ホワイトアルバム50周年エディションとは?

(Public Domain /‘The White Album’ by Dream out loud. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

ビートルズをプロデュースしてきたジョージ・マーティンの息子、ジャイルズ・マーティンが「1」(ビートルズのベストアルバム)に引き続きリミックスを行い、50年も前の音が現代らしく聴きやすい音に変わっています。

しかも今回の50周年エディションではリミックスだけでなく、「イーシャー・デモ」と「セッションズ」という曲をスーパーデラックス版で聴くことができます。実はこの「イーシャー・デモ」と「セッションズ」が、ビートルズの新たな一面を垣間見させる重要な作品だったのです。

「イーシャー・デモ」は、サリー州のイーシャーというところにあるジョージ・ハリスンの別荘で収録されたアコースティック・デモです。インドでの瞑想を終えてからの作品作りに意欲的な4人で収録しており、完成度も高くなっています。「ホワイト・アルバム」とはもう1枚別のアルバムとして聴いた方が良いでしょう。不仲説があったとはいえ、4人で別荘に行ってしまう時点で不仲とは思えないですよね。全27曲が収録され、そのうち19曲が「ホワイト・アルバム」に収録されました。

「セッションズ」はその名の通り、セッションの時の様子が納められた貴重な音源が収録されています。このセッションからは、正規にリリースされたアルバムからではわからない楽しさが感じ取れます。

「ホワイト・アルバム」はバンドに亀裂が入り始めた頃のアルバム

「ホワイト・アルバム」は、バンドの仲に亀裂が入った頃のアルバムだとされています。その理由は、メンバーそれぞれが別に曲を作り、別に収録したことなどがあげられます。特に、収録されている「Julia」という曲はジョン・レノンが書いた曲ですが、ジョンはスタジオに1人で入って収録したそうです。ポールは「Yesterday」などを1人で収録することもありましたが、ジョンはそれまで一度も単独収録をしたことはなく、この「Julia」が唯一の単独収録の曲となっています。

また、リンゴのドラムに嫌気がさしたポールがリンゴと口論になり、リンゴは一時期ビートルズを脱退するということも起こっています。当時は、「ホワイト・アルバム」の最初の曲である「Back in the U.S.S.R」の収録の最中でした。そのため、実はこの曲のドラムはリンゴではなく、ポールが叩いているのです。

このようなことが「ホワイト・アルバム」の収録中に起こってしまい、バンドの不仲説などがささやかれるようになりました。

インドでの瞑想があったから完成できた?

「ホワイト・アルバム」が完成する前、メンバーはインドへ瞑想修行の旅へ出かけています。1968年頃のビートルズは多忙だったこともあり、休養を兼ねての旅だったのです。

この旅に同行したのがスコットランドのミュージシャン、ドノヴァンでした。ここでジョン、ポール、ジョージは、彼からスリーフィンガー奏法を学びます。このスリーフィンガー奏法は、「ホワイト・アルバム」に収録されているポールの「Blackbird」や、ジョンの「Dear Prudence」に現れています。

旅の間瞑想以外にやることが全くなかったようで、メンバーはそれぞれ曲を作り始めます。リンゴは食が合わずに2週間ほどで帰国しますが、ジョンとジョージは2ヶ月の間インドに滞在し、のんびりと曲を作っていたといいます。

インドに行く前の1966年から1967年の2年間は、ビートルズのサイケデリック時代でした。特に「Rubber Soul」「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」は、サイケデリック時代を象徴するアルバムです。

ドノヴァンの音楽性やインドの環境などから大きな影響を受け、「ホワイト・アルバム」は完成しました。このアルバムがフォークっぽさを感じさせるのは、インドへ行ったことが影響しているのでしょう。

ホワイトアルバム50周年エディションからわかる結束

インドの瞑想修行を終えて帰国したメンバーは、「ホワイト・アルバム」の作成に入ります。そこで収録された数々の楽曲は、「イーシャー・デモ」「セッションズ」に収録されています。この「イーシャー・デモ」「セッションズ」には、本当に仲が悪かったのかを深く知ることができる楽曲が含まれています。

「イーシャー・デモ」の4曲目「Ob-La-Di, Ob-La-Da」では、ポールがメインで歌うのにも関わらず、ジョンが「デ〜ズモンド〜」とちょっかいを出しているのを聴くことができます。また18曲目の「Honey Pie」では、ポールが楽しそうにスキャットしていたり、後ろの方でいろんな奇声が聴こえたりもします。

21曲目「Junk」では、ポールが歌っている横でジョンが笑い声とコーラスを入れています。「イーシャー・デモ」では後ろの方で物を叩きながらリズムをとっているメンバーもいて、仲が悪いというイメージは全くありません。むしろ楽しく、ストレスフリーで演奏しているようにも感じます。

3枚組になっている「セッションズ」は、ホワイトアルバム50周年エディションのディスク4、5、6枚目に収録されています。ディスク4の1曲目「Revolution1」は、ビートルズ解散に大きな影響を与えたと言われているオノ・ヨーコの声が入っていますが、重苦しい雰囲気はなく、みんなの笑い声が聴こえるのです。これを聴いてみると、仲が悪いことやオノ・ヨーコに対してのマイナスイなメージは抱きづらいでしょう。

また最後の「Good Night」はリンゴが1人寂しく歌っていますが、ディスク4の6曲目ではメンバー全員でコーラスをしています。オーケストラのバージョンも良いですが、みんなでコーラスしているのは個人的に嬉しくなってしまいます。

「イーシャー・デモ」に関しても「セッションズ」に関しても、仲が良いと感じ取れる楽曲を抜粋、紹介してみました。特に「イーシャー・デモ」では雰囲気の良さを感じます。

「セッションズ」では雰囲気の良さだけでなく、飛び入り参加したエリック・クラプトンのミスを聴けたり、まだ完成していない声なし音源を聴けたりと、面白い内容になっています。

「イーシャー・デモ」の収録が行われたのはジョージの別荘だと言います。別荘にみんなで入り浸ってデモを収録する時点で、仲が悪いとは言い難いのではないでしょうか。今回の「ホワイトアルバム50周年エディション」から見えたのは、隠された楽曲が聴ける特別なものであると同時に、当時のビートルズは仲が悪くはなかったということだと私は思います。

また「イーシャー・デモ」や「セッションズ」では、楽曲の前後に会話などが入っていることが多いです。これは、ジャイルズが本当のビートルズを知ってほしいという思いで楽曲に入れているような気がします。このアルバムを聴くと、「ホワイト・アルバム」から聴こえてくる音楽全体が違ったもののように思えますよ。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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