RZA:Wu-Tang Clan首謀者、RZAのプロデュース力を大解剖!

■不遇のソロデビュー
1991年 Prince Rakeemという名のラッパーがレコードレーベルTommy Boyから
EP「Ooh I love You Rakeem」を発売。
同年彼の従兄弟であるThe Geniusがアルバム「Words from the Genius」を発売しました。
二人のデビュー作は売り上げで成功することはありませんでしたが、後にRZA(Prince Rakeem)とGZA(The Genius)として世に知られることとなります。
彼らにはもう一人の従兄弟Ol’ Dirty Bastardがおり、三人はForce Of The Imperial Masterとして活動。残念ながらグループとしてレコード会社と契約することはできませんでした。

■伝説のグループWu-Tang Clan結成

1992年 Wu-Tang Clanを結成。
RZAは従兄弟、幼少期からの仲間6人と共にヒッポホップグループを結成します。
グループ名は1983年に公開されたカンフー映画「Shaolin and Tang(少林與武當)」から名付けられました。

カンフー映画の影響を強く受けたWu-Tangは、武闘スタイルのラッパーグループ。
Wuは方法、Tangは言葉、Clanは家族を意味します。武闘スタイルと呼ばれる理由は言葉で殺すため。言葉は武器になるのです。

カンフーにおけるShaolinは中国にある古寺。メンバーにとってそれは、地元ニューヨーク・スタテンアイランドでした。

同年12月 Loud Recordsからファーストシングル「Protect Ya Neck」を発売。

1993年 デビューアルバム「Enter the Wu-Tang(36 Chambers)」を発売。

アメリカ国内で200万枚を売り上げ、1990年代のヒップホップを代表する作品となったのです。

■RZAのプロデュース力

RZAの壮大なプランは音楽制作だけではありません。グループのブランド力を上げるため、明確なビジョンを持っていました。

ブランドにとって重要なことは、消費者がパッと見てすぐに把握できるロゴ。そこでデザインされたのが、Wu-Tang Clanを象徴するWのロゴです。

デビューアルバムのジャケットには Wが刻まれており、その後に発売された全てのアルバムに関しても必ずロゴが付いています。

また、アルバムだけでなくアパレル産業も展開。ロゴ付きのTシャツやパーカーは絶大な人気を誇っています。現在Wu-World、Wu-Wearの二つのブランドラインがオフィシャルクロージングとして販売されています。

更にWはハンドサインとしても重要な役割を担っており、ライブ会場で観客は両手をWにして頭上に掲げます。これがライブにおける定番のポーズとして定着していったのです。

■メンバーソロ活動の秘密

RZAの壮大なプランはレコード契約に関してもありました。
Wu-Tang ClanはグループとしてLoud Recordsと契約しましたが、メンバーがソロとして他のレコードレーベルから発売できるような契約内容にしていたのです。

Method ManはDef Jam Recordingsから「Tical」
Ol’ Dirty BastardはElektra Recordsから「Return to the 36 Chambers : The Dirty Version」
GZAはGeffen Recordsから「Liquid Swords」
Ghostface KillahはEpic Recordsから「Ironman」

このように、それぞれソロ曲を発売。

RZAの狙いは各メンバーがそれぞれ異なるレーベルから作品を発売することで、Wu-Tang Clanのブランドをアメリカ全土に拡散すること。
ほとんどのソロアルバムがゴールド(売り上げ50万枚)もしくはプラチナ(売り上げ100万枚)を記録。ソロアーティストの人気はアメリカ全土で急上昇し、同時にグループとしての人気も獲得しました。

その後もグループやソロとして継続的にアルバムを発売。その作品は今もなお売れ続けています。Wu-Tang Clanは7枚のアルバムを発売していますが、多くの作品がゴールドやプラチナを記録しています。

両方の作品が圧倒的な販売数を記録し続けるのは、彼ら以外に見当たりません。これも全てRZAによる明確な戦略が功を奏したおかげだと言えるでしょう。

■音楽業界から映画業界進出

カンフー映画をサンプリングした荒々しいサウンドを生み出したRZA。他のヒップホップアーティストのサウンドとは全く異なるテイストのため、一度耳にすればWu-Tang Clanの音だとわかるほどとても個性的です。そんな魅力溢れる音楽を、映画業界は欲していました。

1999年 「ゴースト・ドッグ」の音楽をRZAが担当。
アメリカ・ドイツ・フランス・日本の合作映画で、武士道を愛するニューヨークの殺し屋「ゴースト・ドッグ」を描いたストーリーに、彼が作り出すアブストラクトなビートが完全にハマったのです。
また、この作品で俳優としての銀幕デビューを飾りました。
その後も映画「キル・ビル」や、アニメ「アフロ・サムライ」などのサウンドトラックを担当。
更に「ゴースト・ドッグ」での俳優デビューをきっかけに、「コーヒー&シガレッツ」「アメリカン・ギャングスター」「ファニー・ピープル」などの作品に次々出演しました。

2012年 「アイアン・フィスト」が公開。
この映画はRZAが監督・脚本を担当し、自身も出演。更にはサウンドトラックも手がけました。

■デビューアルバム25周年で起きた奇跡

2018年 デビューアルバム「Enter the Wu-Tang(36 Chambers)」から25周年。
そのメモリアルを祝してWu-Tang Clanの地元スタテンアイランドは、アルバムの発売日である11月9日を「Wu-Tang Clanデー」にすると公式に宣言。
公的機関が彼らの功績を認め、賞賛を贈るというヒップホップコミュニティにとって非常に意味の深い出来事と言えます。

■Wu-Tang Clanは永遠

一癖も二癖もあるメンバーをまとめ上げ、更に仲間の才能を伸ばすことにも長けていたRZA。彼が築き上げたWu-Tang Clanという壮大なグループはヒップホップの歴史に名を刻むだけでなく、永遠に聴き継がれていくことに間違いありません。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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