クラム・チャウダー:貝を味わうアメリカのスープ

クラム・チャウダーは、クラム(二枚貝)のむき身とじゃがいも、たまねぎなどの野菜を煮込んだアメリカの代表的なスープのひとつ。「ニュー・イングランド・スタイル」または「ボストン・スタイル」と呼ばれる、クリームを入れて白く仕上げたチャウダーが一般的です。加えて、クリームを入れずにトマトを入れて赤く仕上げる「マンハッタン・スタイル」の2種類のチャウダーが最も有名と言われています。いずれも「オイスター・クラッカー」と呼ばれる小粒のクラッカーが添えられ、スープの中に入れて食べることができます。

アメリカのスープは外れなく美味しい

アメリカに旅行すると、スープの種類の豊富さと美味しさに感動させられます。レストランやダイナーのメニューに必ず1品はあり、デリやテイクアウトの量り売りのコーナーの一角にも、スープが入った大きな鍋がいくつか必ず置かれています。

「Soup of the day 本日のスープ」などと表示されているこれらのスープは、価格は1杯2ドル~5ドル程度と安価にもかかわらず、具沢山で美味しいスープばかりなのです。
食事が偏りがちな旅行中において、栄養満点で味の「ハズレ」もほとんどないため、見かけると迷わず買ってしまいます。

また、とあるホテルに1週間ほど滞在した際には、ホテルの敷地内の一角にあったテイクアウトのサンドイッチやバーガーを売るファストフードのお店のSoup of the dayが気に入り、日替わりを楽しみにして食べていたことがあります。
もしかしたら、ホテル・レストランの食材の残りが翌日のSoup of the dayになっているのかもしれないとも思いましたが、さまざまな素材の調和がいつも絶妙で、毎日新たな感動がある美味しさでした。

私が「クラム・チャウダー」の美味しさを初めて知ったのも、Soup of the dayで味わったスープのひとつであったことからです。ちなみに白いチャウダーでした。

クラム・チャウダーは、アメリカのスープ料理の代表格

さまざまあるアメリカのスープの中でも「クラム・チャウダー」は、「チキン・ヌードル・スープ」や「トマト・スープ」と並ぶ、アメリカを代表するスープのひとつ。

スープの名前にある「クラム」とは、アメリカでは「クアホッグ Quahog」と呼ばれている二枚貝のこと。アメリカではこの貝を牡蠣同様に生で食べたり、焼いて食べたりします。オイスター・バーと呼ばれる海鮮料理レストランのメニューにも必ずある人気の貝です。

クラム・チャウダーは、美味しいだしが出るこのクラムのむき身を具のベースに、さいの目切りにしたじゃがいもやたまねぎ、セロリなどの野菜を一緒に煮てスープにしたものです。

ミルクやクリームを加えて白く仕上げる「ニュー・イングランド・スタイル」または「ボストン・スタイル」のクラム・チャウダーを作るときは、入れる野菜も白いもののみです。時にはじゃがいものみのこともあります。「あくまでも主役はクラム」なのです。

フランスからアメリカに伝わったチャウダー

クラム・チャウダーはもともとアメリカ料理ではなく、フランスから伝わったものであるとされています。フランスから漁のために大西洋を渡ってきた漁師たちが、獲ってきた魚や貝を大鍋に入れて、ごった煮のようなスープを作って食べていました。それを18世紀頃にアメリカ東海岸北部のニュー・イングランド地方の漁師たちが真似て作ったのが始まり。このときの作っていたのは白いチャウダーだったそうです。

この地の名物料理となったことから、「ニュー・イングランド・スタイル」という名前がつきました。なお、このスープが「ボストン・スタイル」とも呼ばれている理由は、ボストンもニュー・イングランド地方の一部であるため。いずれもこの辺りではクラムがたくさん獲れるのですね。
ボストン市内には「ボストン名物」として美味しいクラム・チャウダーを出すお店がたくさんあります。

ニューヨークで誕生した赤の「マンハッタン・スタイル」

19世紀には、赤く仕上げる「マンハッタン・スタイル」クラムチャウダーも作られました。こちらは、ポルトガルからの移民が持ち込んだレシピであるという説や、南イタリアからニューヨークに大量に渡ってきた移民が持ち込んだとされる説があります。

いずれにしてもやはりクラムがベースで、たまねぎ、じゃがいも、にんじんなどをさいの目きりにして煮込んだものです。ただしミルクやクリームではなく完熟トマトやセージ、オレガノなどのハーブも入るため、白いチャウダーとは全く異なる味わいです。

また、レストラン等のメニューに(ニュー・イングランドやマンハッタンではなく)「クラム・チャウダー」とだけ書かれている場合、出てくるものは白いチャウダーであると思っていてください。先日ハワイのシーフードレストランで食べたクラム・チャウダーもそうでした。
ニューヨークに行くと白と赤、両方のチャウダーがメニューにあるお店が多いように思います。どちらも美味しいのでとても迷ってしまいます。

「チャウダー」は鍋からついた名前

アメリカにはクラムが入らないものでも「チャウダー」と呼ぶスープがあります。「コーン・チャウダー」や「シーフード・チャウダー」などは、クリームやミルクが使われる点ではクラム・チャウダーと同類のスープです。

この「チャウダー」、フランス語で大鍋、煮込みという意味の「ショーディエール(Chaudière)」がなまったものであるそう。大鍋で作るスープはみな「チャウダー」と呼べるわけですね。

重要な脇役、チャウダーに添えられるクラッカー

アメリカで食べるクラム・チャウダーには、ほぼ必ずと言っていいほどクラッカーが添えられてきます。最初はどうやって食べるのか分からず、パンの代わりなのかとクラッカーをかじりながらチャウダーを食べていましたが、このクラッカーは砕いてチャウダーの中に入れて食べるものなんだそう。

ニューヨークでクラム・チャウダーを注文すると、薄く四角いクラッカーではなく、「オイスター・クラッカー」と書かれた小袋に入った小粒のクラッカーが一緒についてきます。
バターの風味豊かで香ばしいオイスター・クラッカーは、チャウダーに入れることで全体がまとまり、クラムの風味を引き立てる重要な役割を果たしています。オイスター・クラッカーなしのチャウダーは、物足りないと感じてしまうくらいです。

オイスター・クラッカーに牡蠣は入っていない?

しかしオイスター・クラッカーの袋の原材料名を確認すると、牡蠣も牡蠣エキスも何も入っていません。ではなぜ「オイスター」という名前がついているのでしょう?

アメリカで一般的な牡蠣の形はこのクラッカーのように丸いので、「形が牡蠣の殻に似ているからそう名付けた」との説が有力なようです。

また、オイスター・チャウダーやクラム・チャウダーに添えられるチャウダー専用クラッカーとして製造会社が命名したという説も。
1828年から同じレシピでクラッカーを作り続けている、アメリカの「ウェストミンスター・クラッカー・カンパニー」のオイスター・クラッカーが最も有名です。

本場で味わうクラム・チャウダーはもちろん格別です。しかしそう簡単に本場まで行けないという方は、自宅でクラム・チャウダーを作るときにはぜひクラッカーを砕いて入れてみてください。確実に本場の風味に近い美味しいチャウダーになりますよ。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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