アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ:メキシコを代表する映画監督の半生と作品

メキシコ出身のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。学生時代からラジオのDJなどで活躍し、テレビ番組のプロデューサーなどを手がけました。その後、映画監督や製作総指揮として活動の幅を広げています。複数のストーリーが展開するオムニバス形式からコメディタッチのもの、短編VR作品と新たなチャレンジを続ける彼の映画は数々の賞を受賞し、高く評価されています。

メキシコの映画監督アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。2000年に長編映画監督デビューし、いきなりカンヌ国際映画祭グランプリを受賞した実力派です。名監督と認めながらも、名前を覚えるのは諦めたという方もいらっしゃるかもしれません。

この記事では、イニャリトゥの生い立ちや作風、おすすめ作品について詳しくご紹介していきましょう。

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの生い立ち

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥは、1963年8月15日にメキシコシティで生まれました。中流家庭に育ち、大学に進学します。

そして学生時代にラジオ番組のDJをしたことに端を発し、テレビ番組のプロデュースや映画音楽の作曲などを手がけるようになります。

2000年には長編映画監督としてデビュー。カンヌ国際映画祭や東京国際映画祭でグランプリを受賞するなど高い評価を受けました。「アモーレス・ペロス」が認められたことがきっかけで、2003年には「21グラム」をアメリカで製作しています。

監督デビューから2017年までに、彼は以下の8つの映画の監督をしています。

・「アモーレス・ペロス」(Amores Perros)2000年
・「11’09”01/セプテンバー11」(11’09”01 -September 11)2002年
・「21グラム」(21 Grams)2003年
・「バベル」(Babel)2006年
・「BIUTIFUL ビューティフル」(Biutiful)2010年
・「バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(Birdman or The Unexpected Virtue of Ignorance)2014年
・「レヴェナント: 蘇えりし者」(The Revenant)2015年
・「肉と砂」(Carne y Arena)2017年

「バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」と「レヴェナント: 蘇えりし者」では、2年連続となるアカデミー監督賞を受賞するなど、いずれの作品も高く評価されました。

また、映画監督以外に以下の3つの作品で製作総指揮等をしています。
・「美しい人」(Nine Lives)2005年
・「ルドandクルシ」(Rudo y Cursi)2008年
・「愛する人」(Mother and Child)2009年

私生活の詳細はあまり明らかになっていませんが、現在2児の父。しかし、生後間もない息子を失うという経験もしており、作風にもそのことが反映されているといわれています。

イニャリトゥのデビュー作品

彼の映画監督としてのデビュー作品は、2000年の「アモーレス・ペロス」。スペイン語で直訳すると「犬のような愛」となりますが、スペイン語圏での意味合いとしては「惨めな愛」のようなニュアンスです。アモーレス・ペロスは、メキシコシティを舞台とした、惨めで悲劇的な愛を描いた映画です。

以下の3つのストーリーから成るオムニバス形式となっており、一つの交通事故をめぐるそれぞれの人間模様が興味深い作品です。

いずれのストーリーにも犬が重要な位置づけで表現されています。

・兄の妻と不倫関係にある男。

闘犬で稼いだ金を兄の妻に渡していたが、その闘犬が殺されてしまい、男は犯人を刺してしまう。

・ある男性と不倫関係にあったスーパーモデル。

不倫相手と愛犬との幸せな生活が始まったが、交通事故で足を切断しなければならなくなった。

・たくさんの犬と暮らしながらゴミ収集をする老人。

元大学教授だが、現在の裏の顔は殺し屋。

イニャリトゥはこの作品を亡くなった息子のために制作したと語っています。2000年カンヌ国際映画祭批評家週間でグランプリ、東京国際映画祭でグランプリと監督賞を受賞しました。

イニャリトゥのおすすめ作品

イニャリトゥのおすすめ作品を2点ご紹介します。

バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

「バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」は、2014に公開された映画で、アカデミー作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞ほか多くの賞に受賞、ノミネートされるなど、高く評価されました。

落ちぶれた初老のハリウッド俳優がブロードウェイ進出を企てるというストーリー。彼はかつて「バードマン」というスーパーヒーロー映画でヒーローを演じて一世を風靡しましたが、それ以来鳴かず飛ばず。家族にも見放され、惨めな人生を送ってきました。いつしか彼には、自分が演じた「バードマン」が自分を嘲る声が聞こえるようになります。60代となった彼はブロードウェイで脚本と演出、主演という大役に臨みますが、数々のトラブルが起こります。そしてついにはバードマンが実際に彼のところに現われ…。

コメディタッチながらもなかなかシビアな内容も含まれ、マイケル・キートンをはじめとする名キャストたちが勢ぞろい。見応えのある映画です。

バベル

「バベル」は2006年に公開されました。カンヌ国際映画祭の監督賞をはじめ、数々の賞を受賞しています。モロッコ、アメリカ、メキシコ、日本の4カ国が舞台となって3つのストーリーが展開し、一見無関係のストーリーがやがて絡み合っていきます。

・観光でモロッコを訪れたアメリカ人夫婦。

銃の腕を競う遊牧民の兄弟に妻が銃撃される。

・アメリカ人夫婦の使用人であるメキシコ人。

息子の結婚式のためメキシコに行く必要があるが、雇い主夫婦が旅行から帰ってこないため、仕方なく夫婦の子どもを連れて行ってしまう。

・日本人の女子高校生。

母を自殺で亡くしており、父と二人暮らし。自らはろう者であることから疎外感を感じ、自暴自棄になる。

アメリカ人夫婦をブラッド・ピットとケイト・ブランシェット、メキシコ人の使用人をアドリアナ・バラッザ、ろう者の高校生を菊地凛子、その父親を役所広司が演じるなど、豪華キャストが揃っています。

個性派俳優たちの名演技に加え、臨場感にあふれるカメラワークも見どころ。イニャリトゥの初期の作品らしく、複数のストーリーが展開していく構成となっています。彼を知るためには見逃せない作品です。

イニャリトゥの作風について

デビュー作から2006年の「バベル」までの作品は、いずれも複数の主人公、複数の街でのストーリーから構成されていますが、2010年の「BIUTIFUL ビューティフル」では、はじめて1人の主人公、1つの街で物語が進行しています。また、」「BIUTIFUL ビューティフル」まではイニャリトゥの作風はシリアスなことで知られていました。

ところが、2014年に発表された「バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」は、コメディタッチのもので驚いたファンも多かったといわれています。

その次の作品「レヴェナント: 蘇えりし者」(2015年)は、アメリカ西部開拓時代の実話に基づくストーリー。壮大で厳しい自然の中でのサバイバルを描いています。自然光のみの撮影にこだわり、過酷な自然の中でのロケに挑んだ作品です。

2017年の「肉と砂」は、難民のたどった道を追体験して歩くというストーリーの短編VR作品です。彼は、この作品は80%を体験者が補うものだと語っています。

まとめ

イニャリトゥの生い立ちや作品、作風についてご紹介しました。シリアスなものからコメディタッチなもの、そしてVR作品と常に新しいことにチャレンジしてきた彼。デビュー作品でカンヌ国際映画祭グランプリを受賞するなど、常に高い評価を受けてきました。あまりよくご存じなかった方にも興味を持っていただけたのではないでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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