世界の禁煙運動の過去・現在:世界は分煙ではなく禁煙

喫煙は喫煙者本人だけでなく、周囲にも悪影響を及ぼします。世界的には年間約700万人がたばこを原因として死亡しているそうです。WHOは、分煙では受動喫煙の問題を解決できないとしており、世界では分煙のみならず禁煙を進める動きが見られます。各国での禁煙外来や禁煙運動では、たばこをやめたい人を支援し、たばこの害を伝える活動が行われています。

健康に悪影響を与えるたばこ。やめたいと思っていても、なかなか自分の力ではやめられない人も多いかと思います。この記事ではそのような方のために、喫煙や禁煙などについて、世界的な視点を含めて解説します。世界的な禁煙の流れに乗ってたばこをやめ、より健康的な人生を歩みましょう。

脳の意欲を司る側坐核を活性化させることもあれば、気分の波を整え落ち着かせることもある。ときには、同じ喫煙者同士の会話を弾ませることや、税金によって国の財源を助けることもある。このように、たばこには利点が全くないわけではありません。

しかし、たばこの煙には4000種類以上の化学物質が含まれ、そのうち有害なものは判明しているものだけでも200種類以上存在します。これらの有害物質の中には40~60種類の発がん物質も含まれます。加えて、たばこを吸うと一酸化炭素も体内に取り込まれ、動脈硬化が進み、脳卒中や急性心筋梗塞、大動脈解離などの循環器の疾患も発症確率が上がります。

また、たばこは吸う本人だけでなく、周囲の人の健康にも影響を与えます。身近にたばこを吸う人がいると喫煙のきっかけになるだけでなく、たばこを吸う人の煙による受動喫煙にから、周囲の喫煙状況によっては肺がんなどの発症確率も上昇します。

このように、たばこは自分や周囲人の健康を害します。世界的な視点で喫煙者の数・割合や、たばこ・禁煙の歴史、禁煙外来や禁煙の効果、禁煙運動などについて、詳しくご紹介します。

まずは、世界的に見た喫煙者の数や割合などを世界保健機関(WHO)のデータからご紹介します。

1.世界的に見た喫煙者の数や割合

世界保健機関(WHO)が2018年5月31日の世界禁煙デーに公表した報告書(WHO ホームページ)によると、世界では年に約700万人がたばこを原因として死亡しており、そのうち89万人が受動喫煙を原因として亡くなっています。また、世界の喫煙者数は10憶人を超えており、その約80%が低所得または中所得の国に居住しているそうです。

喫煙率の世界の平均値は、男性33.7%、女性6.2%で、男性の喫煙率が圧倒的に高くなっています。たばこの喫煙率1位は、男性が東ティモールで78.1%、女性がモンテネグロで44.0%でした。ただ、喫煙率の統計はアジアや中東を中心にデータがない国も多く、完全に正確なものとはいえません。

WHO当局者は「喫煙に肺がんリスクがあることは知られてきたが、心臓発作や脳卒中を引き起こす恐れがあるとの知識を持つ人はまだ少ない」と指摘。喫煙や受動喫煙の健康リスクについては、より一層啓発活動をする必要性がありそうです。

次に、禁煙の過去や現在について世界的な視点でご紹介します。

2.たばこや禁煙の過去と現在

世界保健機関(WHO)は、2003年にたばこの規制に関する世界保健機関枠組条約を採択し、2005年2月27日に発効しました。この条約は、会社等の公共の場所がたばこの煙にさらされる環境にあることから、これについて効果的な措置をとるなどといった内容のものです。

また、世界保健機関の政策勧告では「分煙では受動喫煙の問題を十分解決できない」としており、世界では分煙よりもむしろ、全面禁煙化が進んでいます。

たばこはナス科・タバコ属の植物で、植物としての起源はアメリカ大陸にあります。たばこを利用する風習もアメリカ大陸で生まれたそう。16世紀初めのアメリカ大陸では、既に数種類のタバコ属植物が栽培・利用されていました。そのたばこが世界に伝わったのはコロンブスの探検隊の影響が大きく、大航海時代が始まると嗜好品として世界各地に伝えられていきました。

しかし、吸うことにより疲労や苦痛が和らぐことから薬草と捉えられていたたばこが、喫煙者の様子やその常習性などから、喫煙は薬ではなく毒なのではないかという認識が生まれました。後に生命統計学者などがたばこの研究を進め、明らかになっていきます。

禁煙の歴史は古くから存在します。1575年にメキシコで禁煙条例が出され、メキシコの境界やスペインのカリブ植民地においても禁煙が命じられました。また、オスマン帝国では1633年に喫煙が禁止されました。同時期には欧州でも喫煙者を教会から破門すべきであるかの議論がされています。16世紀後半にはオーストリアやバヴァリア、1723年にはベルリンへ、1742年にはケーニヒスベルクで禁煙条例が発令されました。しかし、こうした禁煙条例は1848年革命によって廃止されました。

アメリカのアリゾナ州は、1973年にアメリカで初めて公共の場所での喫煙を包括的に制限する法律を成立。1990年代以降、ニューヨーク州やカリフォルニア州などでも、一般の職場はもちろんのこと、レストランやバーなどでも全面的に禁煙とする動きが始まりました。

そして2004年、アイルランドでは、壁で囲まれた働く場所を国全体で全面禁煙にする世界初の法律が施行されました。同年にニュージーランドで、その2年後の2006年にはウルグアイで、2007年にはイギリスで、2009年にはトルコと香港で、さらにアメリカでも半数を超える州で屋内を全面的に禁煙とする法律が成立しています。全面禁煙を定めている国は2016年時点で55カ国あり、発展途上国を含む世界各国で禁煙の流れが広がっています。

ここまで、たばこや禁煙の過去・現在についてご紹介しました。次は、世界各国にある禁煙外来についてと、禁煙の効果についてご紹介します。

3.禁煙外来と禁煙の効果

禁煙外来は、世界各国に存在するたばこをやめたい人のための専門外来です。検診や外来診療の現場で、Ask(喫煙状況などの評価)、Advice(アドバイス)、Assess(禁煙への関心度の評価)、Assist(禁煙支援)、Arrange(フォローアップの診察の予定決定)の、5Aアプローチと呼ばれる指導手順を中心とした行動療法や、喫煙習慣に深く関係するニコチン依存から抜け出すためのニコチン代替療法などが中心となる薬物療法を行い、医師の指導のもとで禁煙を目指します。

禁煙は年齢や喫煙による病気の有無に関わらず、全ての人々に大きく迅速な健康改善をもたらします。例えば、24時間で心臓発作のリスクが軽減し、2~3週間で心臓や血管などといった循環器の機能が改善され、1年後には肺機能が改善されます。さらに、10~20年で様々な疾患の発症リスクが非喫煙者と同等になります。

最後に、世界的な禁煙運動の活動例について世界禁煙デーを中心にご紹介します。

4.世界的な禁煙運動の活動例

世界保健機関(WHO)は禁煙を推進するための記念日として、1988年に毎年5月31日を世界禁煙デーと制定しました。この記念日には、たばこの危険性やたばこ産業の事業展開などの情報を広く社会に送り、世界中の人々が健康的に生活する権利を主張し、未来の世代を守るため今の私たちに何ができるかを知らせます。

また世界保健機関(WHO)は、世界禁煙デーに毎年スローガンを発表しています。第1回世界禁煙デーである1988年のスローガンは「Tobacco or health : choose health」(たばこか健康か―健康を選ぼう(訳は厚生労働省))でした。1988年のみ世界禁煙デーは4月7日でしたが、翌年の1989年以降、5月31日となっています。

過去には、ナチスによって国民規模での禁煙運動が行われていたこともあり、ドイツでは郵便局や大学、軍用医院などが禁煙とされました。第二次世界大戦のあとから現在に至る禁煙運動は、主にアメリカ合衆国から開始されています。

5.まとめ

たばこにはメリットを圧倒的に上回る健康被害などといったデメリットが存在し、世界的にも世界保健機関(WHO)を中心に、禁煙を強く推奨する流れが存在します。喫煙している方はお近くの病院の禁煙外来などを利用して、この機会に禁煙を始めてみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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