雲南三江併流保護区:交わることのない大河と、自然と人と希少動物が共存する世界

中国の雲南省にある世界自然遺産、三江併流保護区。三江とは3本の川という意味で、メコン川、サルウィン川、長江のことを指します。南へ深さが約3000メートルある渓谷と、標高が約6000メートルある氷山の間を、大河の上流部が合流することなくそれぞれ平行に流れている地域。広大な国土を持つ中国の中でも、雲南の三江併流は最も野生生物が多く生息しているエリアで、実に世界に生息する動物の約25%が確認されています。絶滅危惧種や希少動植物も生息し、豊かな自然を持つ雲南三江併流の地域は、2003年、「雲南三江併流の保護地域群」として世界自然遺産に登録されました。

世界自然遺産の「雲南三江併流の保護地域群」が登録された範囲は、170万ヘクタールある国立公園内の保護区でも、高黎貢山、白茫―梅里雪山、哈巴雪山、千湖山、紅山、雲嶺、老君山、老窩山という8つの保護区から構成されています。

メコン川上流部の瀾滄江、サルウィン川上流部の怒江、長江上流部の金沙江の三江が流れる8つの保護地域群。それぞれ変わった地質と地形を持つことで、氷山を含む高山帯、鍾乳洞、森林や平原、さらに沼地などさまざまな自然の変化を観ることができます。

三江併流保護区の豊かな自然環境により、野生動物は中国国内の固有種や絶滅危惧種も含め、世界の約25%が生息しています。金沙江には、現在も世界に生息している魚類の中で最も原始的な種のカラチョウザメが生息しています。

瀾滄江には、絶滅危惧種になっているヒョウやマヌルネコが生息しています。

2003年に世界自然遺産登録された「雲南の三江併流保護区」の魅力と、三江併流保護区に生息する動植物の生態、三江併流保護区の自然環境について紹介します。

三江併流保護区とは?

三江併流保護区とは、中国の雲南省北西部のデチェン・チベット族自治州と怒江リス族自治州に跨り、チベット高原を水源とするメコン川上流部の瀾滄江、サルウィン川上流部の怒江、長江上流部の金沙江の三江が並行して流れる、西北山区の三江国家公園内の8つのエリアから構成されている保護区のこと。

8つのエリアは、高黎貢山、白茫―梅里雪山、哈巴雪山、千湖山、紅山、雲嶺、老君山、老窩山からなり、総面積は約170万ヘクタールにもなります。

三江併流が流れる地域は、インド亜大陸とユーラシア大陸の衝突によって南北に現れた巨大な褶曲地帯になっています。その褶曲山脈を3つに裂くように、サルウィン川上流部の怒江、メコン川上流部の瀾滄江、長江上流部の金沙江の大河がチベット高原の西から順に流れています。

雲南の三江併流保護区には、チベット族、リス族、ヌー族、ナシ族、ペー族などの少数民族が多く住んでおり、それぞれ独特の伝統文化や生活習慣を守りながら、現在も暮らしています。

3つの大河は時に荒々しく、時に穏やかに流れます。その地に住む人々の生活に自然の潤いを与え、多くの動植物が共存できる環境を生み出している雲南の三江併流保護区。世界自然遺産として登録された三江併流保護区とはどんなところなのでしょうか。

世界自然遺産としての三江併流保護区

3つの大河が流れる山々はどれも標高差が大きいためそれぞれの気候も異なっており、そこに生息する植物も変化することで、移動する度に新たな自然の光景を観ることができます。

雲南の三江併流保護区の美しい自然の景観と、類を観ない種類の生物相は高く評価され、2003年には世界自然遺産に登録されました。

3つの大河にはそれぞれ特徴があるので、ご紹介します。

雲南の三江併流保護区にある3つの河川

雲南の三江併流保護区を流れる3つの大河、メコン川上流部の瀾滄江、サルウィン川上流部の怒江、長江上流部の金沙江は、それぞれの大河に特徴があり、観光スポットが異なります。

●メコン川上流部の瀾滄江

メコン川上流部の源流である瀾滄江が流れる大峡谷は、中国で最も美しい10か所の峡谷の1つです。また、瀾滄江大峡谷の川は深く流れも速いため、観光客に人気があります。夏季は水の量が増すため瀾滄江の水は濁り激流と化す一方、冬季に入ると川の水は透き通るため、夏と冬で2つの顔を持つ川と言えます。

現在は、瀾滄江大峡谷(中国の雲南省とチベット)を結ぶ国道が開通されており、これまでよりアクセスが良くなりました。瀾滄江大峡谷を一目見ようと、世界中から訪れる観光客が後を絶ちません。

●サルウィン川上流部の怒江

サルウィン川上流部の怒江が流れる怒江大峡谷は、深さ2000メートルを越える断崖絶壁が続いていることが特徴です。怒江には急流だけではなく浅瀬もみられ、両岸には頂上を白い雪に覆われた高黎貢山と碧羅雪山がそびえたちます。

怒江は全長3200メートルにもなるため、三江併流保護区の怒江の観光地内に入るとすぐに観ることができます。大峡谷には海抜4000メートル以上の山々が20か所もあり、怒江の迫力ある川の流れと静かな時が過ぎている自然のコントラストを思い出に刻むことができる場所です。

●長江上流部の金沙江

長江上流部の金沙江の第一湾は、観光スポットとしても有名な場所です。チベット高原から流れる長江源流の金沙江は、石鼓鎮の海羅山に阻まれることで川の流れの向きが180度変わります。南北の流れから北東へ流れが変わり、中国南部に流れていくのです。この大きく湾曲した流れが長江で最初に見つかったことから「長江第一湾」と呼ばれるようになりました。

雲南省と四川省を隔てる最大落差3000メートルに達する絶壁から、川を渡ることは難しかった金沙江でしたが、長江第一湾付近に行くと流れも穏やかになるため、昔から多くの民族の南北の交流場所として利用されていました。

古くから、雲南の三江併流保護区に住んでいるさまざま民族の生活の隣に流れていた三江併流。人々だけでなく、三江併流保護区域に生息する野生動物や植物も、独特な地形と3つの大河から形成される環境の恵みを受けています。そんな三江併流保護区に生息する動植物をご紹介します。

三江併流保護区の生態系

雲南の三江併流保護区域は、亜熱帯に属していながらも標高差があるため、中国国内の50%、世界の約25%もの野生動物が確認されています。これは、中国の固有種も含め約791種類以上が生息しているということです。

また、希少種であるキンシコウや絶滅危惧種のヒョウなどもみられます。三江併流保護区は過酷でありながらも豊かな自然環境を持つからこそ、生息数が多いのでしょう。

三江併流保護区は動物だけでなく、植物にとっても高環境下にあります。三江併流保護区に生息する植物は中国の固有種を含めて約6000種類、その内の2700種は中国の固有種で、絶滅危惧種に瀕している植物33種は、国家レベルで保護の対象にされています。

まとめ

2003年に世界自然遺産登録された「雲南三江併流の保護地域群」についてご紹介しました。中国の雲南省を北から南に流れる大きな3つの川、メコン川上流部の瀾滄江、サルウィン川上流部の怒江、長江上流部の金沙江。並行して流れているものの合流することはなく、それぞれ違う自然の大峡谷の中を流れ、個々に美しい景色を作りだしています。観光の際は、この地域は標高が高いので高山病に注意し、中国の広大な大地が形成した迫力のある大河と、その過酷な環境下に住む少数民族の歴史に触れてみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

関連記事一覧