トム・フォード:デザイナーと映画監督の顔を持つその魅力

トム・フォードは1990年、グッチにデザインスタッフとして加わり、その後業績不振から企業を立て直したことで、ファッションブランド業界では伝説となりました。2005年、自身と同名のファッションブランドを立ち上げ、クラシックとモダンが融合したデザインを世に送り出しています。コンセプトは「力強く、タフでセクシー」。映画「シングルマン」を手掛けたことから、映画監督としても世界から高評価を受けました。マルチな才能を発揮する人物です。

トム・フォードはアメリカ合衆国テキサス州オースティン出身の、ファッションデザイナー兼映画監督です。また、同名のブランドを立ち上げています。さまざまな顔を持つ彼の魅力とその世界観について、より詳しく見ていきましょう。

トム・フォードが歩んだファッション業界

トム・フォードは高校卒業後、ニューヨーク大学の美術史を専攻。スタジオ54やアンディ・ウォーホルのファクトリーに出入りするなど、アートに入り浸る生活を送っていました。1986年、20歳になるまでは、パーソンズ美術大学にてインテリア・アーキテクチャを学んでいました。インテリア・アーキテクチャとは、建築・インテリア・プロダクトデザインにまで幅広く応用できる空間デザインのこと。在学中は俳優を志し、CM出演などもこなしていましたが、大学で学んでいくうちにファッション業界で働くことへの決意を固めていきます。

その後、ペリー・エリス(Perry Ellis)でデザインディレクターを務めます。同時期にマークジェイコブス(Marc Jacobs)もペリー・エリスに入り、レディーススポーツウェアのデザインを監修していました。その他、キャシー・ハードウィック(Cathy Hardwick)でもデザイナーとして活躍しました。

グッチでの華々しい活躍と自身のブランド設立

1990年、ニューヨークからイタリア・ミラノに移り、グッチのレディスウェアのデザインスタッフとして参加。当時グッチは不振に陥っており、クリエイティブ・ディレクターのドーン・メロウが立て直しに尽力していました。

1994年にはドーン・メロウの強い推薦を受けてグッチのクリエイティブ・ディレクターを務めます。その後、数々の賞を受賞することとなるのです。

クリエイティブ・ディレクターに就任したトム・フォードは、これまでグッチが歩んできたエレガントなクラシック路線ではなく、モードなスタイルを打ち出します。ホルストン・スタイルのベルベットや、スタイリッシュな細身のサテンシャツなどを取り入れ、イメージを大幅に刷新しました。エレガントなクラシックスタイルだったグッチはセクシーなイメージを確立することに成功。彼がデザインを手がけることによりグッチブームが再燃し、1994年から2004年の間で10倍以上も売り上げを拡大させたのです。現在でもこの復活劇はファッションブランド界の中で伝説になっており「トム・フォードシンドローム」と呼ばれています。その後、2004年に辞任しました。

2005年、仲間とともにブランドとしてのトム・フォードを設立。クラシカルでオートクチュールのような独自の手法を用いて、メンズファッションから展開を開始します。一部の商品はライセンスを契約した、エスティローダーなどの名だたるメーカーが製造しています。

2006年、世界展に向けてエルメネジルド ゼニア(Ermenegildo Zegna)と提携を結びます。エルメネジルド ゼニアは創業以来、ファミリービジネスの形態をとっている老舗のブランドです。オリジナルの製品以外にトム・フォードをはじめとする他のブランドコレクションの製造も手掛けています。

その後、メンズウェアにデニムラインを立ち上げ、2011年春夏コレクションからレディースウェアラインを開始しました。

現在では洋服だけでなくアイウェアや小物、化粧品、香水なども人気があり、注目が集まっています。

映画業界でのトム・フォード

まだファッションデザイナーとして活躍する前、俳優を志していたトム・フォードですが、2001年には『ズーランダー(Zoolander)』で本人役として出演しています。当時はグッチのファッションディレクターをしていましたが、同作もファッションモデル界を舞台にしたコメディでした。この作品には多くの俳優・有名人が実名で出演しており、彼もその中の一人です。その他、「ニューヨーク・バーグドルフ 魔法のデパート(Scatter My Ashes at Bergdorf’s)」(2013年)、「マドモアゼルC ファッションに愛されたミューズ (Mademoiselle C)」(2013年)にも出演しています。

監督としては2009年、「シングルマン」(A Single Man)でデビュー。原作はクリストファー・イシャーウッド(Christopher William Bradshaw Isherwood)の同名小説です。1962年のロサンゼルスを舞台に、同性の恋人を失った大学教授の男が絶望と孤独の末、ピストル自殺を図ろうします。愛する人を追って旅立とうとする男の最期の一日を描くヒューマンドラマです。この映画では監督としての実力だけでなく、主演を務めたコリン・ファース(Colin Andrew Firth)の演技も高く評価されました。
コリン・ファース演じる主役のジョージと、ニコラス・ホルト(Nicholas Hoult)演じるジョージの教え子であるケニーの衣装はトム・フォードがデザインし、ミラノで作ったもの。また、トム・フォードのサングラスや眼鏡などのアイウェア商品がヒットした理由として、コリン・ファースが愛用していたからという裏話もあります。

作品のエンドロールの最後には、「For Richard Buckley(リチャード・バックリーへ捧ぐ)」というメッセージが流れます。リチャード・バックリーとはトム・フォードと20年以上の付き合いの長い恋人で、「VOGUE HOMME international」の元編集長。この作品に対する情熱と恋人への愛情が伝わってきます。

2016年、トム・フォードが監督する二作目の映画が『ノクターナル・アニマルズ』(Nocturnal Animals)です。主演はエイミー・アダムス(Amy Lou Adams)、他にもジェイク・ギレンホール(Jake Gyllenhaal)など豪華俳優人を起用しています。

エイミー・アダムス演じるスーザンが、何年も連絡を取っていない元夫エドワード(ジェイク・ギレンホール)が描いた小説「夜の獣たち」を受け取るところから物語は始まります。愛と残酷さ、復讐と償いの中で揺れ動く登場人物の心情を描き出す、サイコスリラーです。

この作品はヴェネツィア国際映画祭審査員大賞を受賞しています。

クラシックとモダンの融合、トム・フォードブランドの特徴

トム・フォードブランドの服は、奇抜なデザインよりも素材や製法にこだわって仕立てられています。クラシックとモダンが融合されているスタイリッシュなデザインが特徴です。

コンセプトは「力強く、タフでセクシー」。映画「007/慰めの報酬」でジェームズ・ボンドのスーツデザインを担当したことから、スーツの人気も高いです。

最近はアイウェア商品の人気も高く、眼鏡やサングラスは海外セレブのブラッド・ピットやジョニーデップ、レディー・ガガやアンジェリーナ・ジョリーなど名だたる著名人が愛用しています。

化粧品では、ユニークな色を30色も展開している「リップスアンドボーイズ」が人気を博しています。ユニークなのは、彼が影響を受けた人や尊敬している人、親しい友人の名前が商品に使用されていることで、その全てが男性の名前です。

化粧品やアイウェアのみではなく、メンズ、ウィメンズウェアやアクセサリー、香水も嫌みのないさわやかな香りであることから人気があります。

まとめ

トム・フォードはファッション業界では伝説を残すほどの手腕を発揮し、名だたるブランドのデザインを担当してきました。自身のブランドも多くの人を魅了し、洋服から小物、化粧品まで現代のファッションをスタイリッシュに飾っています。また、ファッションだけでなく映画監督としてもマルチな才能を発揮する彼。今後の活躍にも注目していきたいです。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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