ヒートアイランド:仕組みや対策を知る

都市部の気温が高温になるヒートアイランド現象。コンクリートやアスファルトに覆われ、人口や産業が密集している都市部では、自然が多い地域よりも気温が上昇しやすくなります。ただ単に気温が上がるだけではなく、健康被害などのさまざまな悪影響もあるのです。対策としては地表面の緑化や人工排熱の削減が考えられ、「緑のカーテン」など私たちが身近にできることもあります。

「ヒートアイランド」という言葉をご存知でしょうか。ヒートアイランド現象は私たちの生活に深く関係し、健康被害や生態系の変化、集中豪雨など多方面に深刻な影響を与えます。その対策には、国や自治体レベル等で取り組む必要があることが多い一方、私たち個人にもできることがあります。

ヒートアイランド現象とは何か、発生する仕組みや私たちにできる対策について、詳しくご紹介します。

ヒートアイランドとは?

都市部の気温が周辺部よりも高温になる現象です。気温の分布図を見ると、高温になるエリアが島のように見えることからこの名称がついたといわれています。

ヒートアイランド(heat island)の文字通り「熱」の「島」というわけです。

ヒートアイランド現象の原因と仕組み

さて、どうして都市部の気温が高温になるのでしょうか。

地表面の人工物化による気温上昇

気温が決まるもっとも大きな要因は、太陽光です。一般的には、曇りや雨の日よりも晴れの日の方が太陽光は多く降り注ぐため、気温が高くなります。また、太陽の高さ(角度)が高くなると、地球の気温は上昇します。

水面や田畑、草地、森林などの緑地は太陽光が降り注ぐと地表面の大気が加熱されますが、同時に水分も蒸発します。この時水蒸気が地表の熱を吸収するため、気温の上昇は抑えられるのです。

しかし、都市部では水面や緑地が少なく保水力が弱いため、太陽光が降り注いでも水分の蒸発はあまりなく、自然が多い地域より気温が上昇しやすいといえます。また、コンクリートやアスファルトは熱を多く吸収する性質があります。日中に熱を吸収し夜に放出するため、夜間の気温も上昇しやすくなります。

さらに、建物や道路などで地表が覆われることによる太陽光の反射率低下や、建物の高層化・高密度化による天空率低下、放射冷却の弱まり、風通しの悪化(地表の熱が上空へ拡散しにくく熱がこもる)なども気温上昇の要因となります。

人工排熱による気温上昇

都市で生活を営む人間の活動は、多くのエネルギーを消費します。個人の生活では、部屋の照明や冷暖房などの空調機器、その他多くの家電製品、情報機器や自動車からの排気などが挙げられ、工場などからも多くの排熱が生じます。

これらの人間の活動から生じた人工排熱も、気温を上昇させる要因となります。人口や産業が集中する都市部では特に人工排熱が多く生まれ、一般的には人口増加や産業の発展に伴い、気温も上昇すると言われています。

ヒートアイランド現象による影響

ヒートアイランド現象によって、私たちにどのような影響があるでしょうか。主なものをご紹介します。

健康被害

ヒートアイランド現象は熱中症や睡眠障害などの健康被害をもたらします。炎天下などの気温が高い環境下で体温が下がりにくくなるなど、体が適応できず熱中症になります。

また熱帯夜のように、本来気温がある程度低いはずの夜に気温が高いと、寝ていても目を覚ます割合が高くなると言われています。これにより睡眠の質が低下し、睡眠障害が懸念されます。また、十分な睡眠を取れていない弱った体で活動すると、より熱中症になりやすいことからさらに注意が必要です。

エネルギー消費の変化

一般的に、気温が高くなると冷房の使用は多くなり、電力エネルギー消費量が増えます。冷房は室外へ排熱するため、人工排熱による気温上昇を加速させます。

一方で、気温が高くなると寒い時期の暖房の使用が減少し、その分エネルギー消費量が減ります。このため、もともと寒冷な都市ではヒートアイランド現象の影響でエネルギー消費量が減少することもあります。

生態系の変化

人間以外の動植物にも影響を及ぼします。気温が高温になることで、本来暑い地方にしか生息していなかった生物の生息エリアが変化することが予測されます。感染症を媒介する蚊の生息エリアが拡大してしまうことなどが懸念されています。

さらに、高温の水が排水されることで川の温度が上昇し、水棲生物に悪影響を及ぼすと言われています。また、花の開花時期が早くなったり、紅葉の時期が遅くなったりすることも指摘されています。

大気汚染

ヒートアイランド現象により都市部の気温が上昇すると、上昇気流が発生します。この上昇気流と郊外部の冷えた空気とが作用しあい、都市部への空気の流れができます。これにより都市部は都心からドーム状の空気の層で覆われることとなり、大気汚染物質もその中で滞留してしまいます。

集中豪雨

ヒートアイランド現象が集中豪雨などにもたらす影響については、未だ十分に解明されていない側面もありますが、ヒートアイランド現象により発生する上昇気流が積乱雲を発生させることなどにより、集中豪雨を降らせるといわれています。

都市部では地表面がコンクリートやアスファルトで覆われていることが多いため、水はけが悪く、集中豪雨に伴い局所的に洪水が発生することも指摘されています。

身近でできるヒートアイランド対策

悪影響が多々あるヒートアイランド現象ですが、私たちが身近にできる対策にはどのようなものがあるでしょうか。

先にご紹介したように、ヒートアイランド現象は地表面の人工物化や人工排熱による気温上昇が要因です。これらを抑制することで、ヒートアイランド対策につながります。

具体的には、以下のような対策が考えられます。

地表面の人工物化に対して

地表面の人工物化への対策として、緑化を推進することが考えられます。建物の屋上や壁面を緑化したり、街路樹、庭木などを植えたり、都市内の緑地をなるべく保全したり、さらには路面電車の敷地を芝生化したりできます。朝顔などの蔓性の植物を植えて「緑のカーテン」を作ることも効果的といわれています。

また、道路の舗装を保水性が高いものにするということも考えられます。打ち水も局所的ではありますが、気温を下げる効果が確認されています。ただし、打ち水は水を撒く時間帯や気温、水量によって効果が半減してしまったり、あまり効果を実感できなかったりということもありますので、それらを考えながら実施することが大切です。

緑のカーテンなどのちょっとした緑化なら、個人でも取り組みやすいですね。

人工排熱に対して

省エネルギー性能に優れた建築物や空調設備、家電を使用し、人工排熱を減少させるのが良いでしょう。太陽光や地熱、排熱を利用することも効果的です。

また、車はエコカーにしたり、マイカーを持つよりは公共交通機関を積極的に使用したりすることでも人工排熱を減らすことができます。

省エネルギー性能に優れたものを使えば電気代なども安く済みますので、個人でも積極的に使用したいですね。こまめに電気を消す、といった日頃のちょっとした行動も資源の節約やヒートアイランド対策になります。

まとめ

ヒートアイランド現象の仕組みや対策についてご紹介しました。ヒートアイランド現象をこれまでより身近なものと感じていただけたでしょうか。私たち一人ひとりができることもたくさんありますので、積極的に取り組んでいきましょう。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

関連記事一覧