ベルギービールの最高峰デュベル。悪魔の魅力を味わおう

ベルギービールが好きな人で、デュベルを知らないという人はいないだろう。デュベルは現地の言葉で「悪魔」という意味を持ち、「世界一魔性を秘めたビール」とも言われている。悪魔のように美味しい、と言われればビール好きならぜひ飲んでみたいもの。

そんなデュベルの生まれた背景や作り手、美味しい飲み方などをすべて紹介しよう。

近代的なデュベル・モルトガット醸造所を見学

デュベルは、ベルギー北部アントウェルペン州にあるデュベル・モルトガット醸造所で作られている。フラマン語(ベルギー北部で使われているオランダ語)圏の人々は、アントワープのことをアントウェルペンと言うそうだ。

州都アントワープから車で20分、農村の風景を楽しみながら南に行くと、デュベル・モルトガッド醸造所が見えてくる。この醸造所は、アントワープとブリュッセルのちょうど真ん中、ブレーンドンクの高速道路沿いにある。

作っているビールのほとんどを世界に輸出しているモルトガット醸造所は、醸造所というより大きな工場のよう。白い大きな壁には「SSST…HIER RUPT DEN Duvel」、「シー…今、ここで悪魔が熟成しているんだから」という文字が。

モルトガット兄弟が昔ながらの発酵の方法などを守りつつビールづくりを近代化させ、HACCP(ハサップ、食品製造の国際規格)の認証を取ったことでも知られている。

この醸造所に訪れる人はなんと年間2万人以上。大型バスのツアーで訪れる人も多く、ベルギー旅行では人気のコースになっている。工場見学は、茶色のレンガを背景にデュベルの赤いロゴが掲げられた入口から入って手続きを行う。コースは3種類あるが、ガイド付きのコースがオススメだ。

見学では製造過程、熟成、瓶詰めの順番で工場を見て廻る。印象的なのは貯蔵庫が2つあることだ。ひとつ目の貯蔵庫は約24度と温かいもの。ここで10日間の発酵を行うのだという。ふたつ目の貯蔵庫は約5度と冷たく、ここでは6週間発酵させる。この2つの1次発酵の過程を経ることで、数年経っても味が変わらない安定したビールができるのだという。

その後はいよいよお楽しみの試飲だ。デュベルはもちろん、その他のビールも試飲できるので、しっかり選んでから試飲しよう。お土産も貰えるので、かなりお得な工場見学だ。

デュベルの名前の由来。誕生の歴史を紐解く

モルトガット醸造所は1871年、ヤン・レオナルド・モルトガット夫妻によって設立された。ヤン・レオナルドはもともと、酢をつくる醸造所の息子だったので、小さな頃から発酵に親しんでいたという訳だ。しかし、当時ビールの醸造所の数は3000を超えており、はじめは数多くの醸造所のひとつにしか過ぎなかった。

やがて、モルトガット醸造所では2人の息子も働くようになった。一人の息子はアントワープやブリュッセルまでの配送係に、もう一人は技師としてビールづくりに参加したのだ。

看板商品であるデュベルを誕生させたのは、技師となったもう一人の息子。第一次世界大戦後、イギリスで流行していたエールビールがベルギーにも入ってきたことから。エールの特徴は華やかで香り高いことだった。彼はこのエールの酵母に惚れ込み、イギリスに渡って酵母を手に入れたのだという。今でもデュベルではこの酵母から培養されたものが使われている。

そして、デュベルという名前がついたのは1923年のこと。「ヴィクトリー・エール」という名で販売される予定だったビールを飲んだ近所の靴屋が、「このビールはまるで悪魔のようだ!」と叫んだことから急遽デュベルに名前を変更。一度聞いたら忘れられない名前の由来である。

その後、3代目にあたるモルトガット家の3兄弟が、デュベルのオリジナルレシピや製造工程はそのまま、ビールづくりの近代化に成功。魅力のひとつとも言える丸いグラスも、この兄弟の元で作られた。まさに中興の祖ともいうべき3人なのだ。

さらに株式上場、ビール工場としてはベルギー初のHACCP認証などを経て、デュベルは世界60カ国で愛されるビールへと成長した。

デュベル その美味しさを分析

キラキラとした金色の液体の上には、マシュマロのような力強いフワフワの泡。デュベルは華やかで香り高いといわれるエールビールの中でも、度数が高いものに冠されるストロング・ゴールデンエールというカテゴリに属している。

前述の通り、エールビールは上面発酵。ベルギービールの発酵にはこの他に下面発酵、自然発酵、複合発酵の3種類がある。ラガービールなど爽やかな飲み口が特徴を持つのが下面発酵、少しの濁りと酸味が特徴を持つのが自然発酵、これらを併せたのが複合発酵だ。

ゴールデンエールであるデュベルの特徴をもう少しみてみよう。美味しさの秘密は、上面発酵だけではない。煮沸の間3回に分けてホップを入れ、2種類の酵母を使うというこだわりがある。さらに1次発酵、2次発酵、それから熟成後に倉庫で瓶内2次発酵をさせ、冷たい倉庫でさらに熟成。出荷までは3ヶ月もかかるのだ。

一般的に製造から出荷まで2週間もかからない現代のビールとは違う、複雑で芳醇な味わい。これは、ゆっくりと手間ひまかけてつくることで生まれている。

また、アルコール度数はかなり高めの8.5%。グラスに注ぐとオレンジやレモンを思わせる柑橘系の香りが広がり、次にホップやほんの少しスパイシーな香りがやってくる。この豊かな香りはプロたちに、クローブやシナモン、黒胡椒のようと評されている。まさにエールビールらしいビールといえるだろう。

そしてこのビールの泡は、しっかりと泡立てたメレンゲのよう。ベルベットのような泡の舌触り、濃厚なホップの味わい、ほんのりした甘味がなんとも心地良い。飲みやすくてついつい2杯、3杯と重ねていると、気がついたら歩けないほどに酔っている…という怖いビール。まさに「世界一魔性を秘めたビール」なのだ。

チューリップ型のグラスは泡を閉じ込めるためのもの

ビールの味と香りを楽しめるように、ベルギービールにはそれぞれオリジナルグラスが作られるが、デュベルにもそれが存在する。

モルトガット家3代目の3兄弟は、デュベルの味と香りにピッタリ合うグラスが必要だと考えていた。そこで彼らはいくつかグラスをつくり、その中から丸いチューリップ型のグラスを完成させた。

このグラスは、330ml瓶のビールが一滴残らず入るジャストサイズなもの。上にいくほどすぼまるワイングラスのように丸い形は、デュベルの味と香りを楽しむために作られた。また、シャンパングラスのように内側の底に傷がつけてあり、そこから勢いよく泡が広がる。ちなみに、その傷の形はDuvelの頭文字「D」。デュベルの力強い泡は、このグラスでなければ楽しめないだろう。

グラス上部はキュッと絞られ、最後まで泡が保たれる仕組み。アルコール度数が高いデュベルは、一気に飲むというより少しずつ味わって飲むものなので、最後の一口まで長時間泡が保てるようにデザインされたのだ。デュベルを飲むときは、ぜひ専用のグラスを使ってみよう。

デュベルの美味しい飲み方、ピッタリの料理は?
デュベルのホームページでは、美味しい注ぎ方が紹介されている。その注ぎ方を紹介しよう。

最高の状態で味わうための伝統的な注ぎ方

冷暗所で瓶を立てて保存してください。横にすると、瓶底の酵母がビールのなかに混ざってしまいます。
理想的な飲み頃温度の6度に冷やし、乾燥したデュベル専用グラスを用意します。
贅沢に醸造されたビールの扱いは丁寧に。少しグラスを傾けて、急がずゆっくり時間をかけて注ぎます。
瓶とグラスはぶつからないように。クリーミーで豊かな泡を作るコツは、注ぎながら瓶を持ち上げること。
瓶底にあるにごりと苦みを与える酵母を注ぎ入れるのを防ぐため、ボトルにビールを1cmほど残します。
注ぎ終わりにはゆっくりグラスを立てて、リッチな泡をキープ。理想的な泡の量は、泡底がデュベルグラスのロゴの中心辺りから始まり、トップがグラスのふちに届くまで。
グラスを見つめ、手にして、乾杯!
伝統的な飲み方では最適温度は6度とはなっているが、ブランデーのように手でグラスを温め、その熱をデュベルに伝えるとさらに香りが花開き芳醇なものとなる。いずれにせよ、会話を楽しみながらゆっくり飲むのがおすすめだ。

次に、デュベルに合う料理を考えてみよう。地元ベルギー人が合わせているのは、やはりジャガイモのフライ、フリッツ。このフリッツにマヨネーズをたっぷり付けて、ビールで流し込むのがベルギー流。

爽やかで豊かな味わいのデュベルは、魚、肉、前菜、チーズなどどんな料理にもよく合うが、しいていうなら肉料理との相性がいいかもしれない。ローストビーフやローストチキンにフリッツとなると、ベルギー人の大好きなごちそうだ。

まとめ

世界中で親しまれているビール、デュベル。大量生産と昔ながらの製造方法をうまくミックスし、伝統を今に伝えている。外国の大手資本に買われるビール会社が多い中、ベルギー資本で頑張っている大手ビール会社といえるだろう。

新製品の開発にも余念がなく、新しいシリーズであるデュベルトリプルホップでは3種類のホップを取り入れ、時代に合った苦味のあるビールを作りあげた。歴史あるデュベルとともに、新入りのデュベルトリプルホップも味わってみよう。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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