ドラゴンボール:光落ちした敵キャラたち

ドラゴンボールは、1984年日本の少年誌「週刊少年ジャンプ」にて連載が始まった。熱い展開や敵との死闘、ユーモア溢れる世界観が多くの人々の支持を集め絶大な人気を誇っている。1986年から2018年までテレビアニメとして放送され、世代を超えて人々に愛されてきた。

そんな本作には数多くの敵が登場し、ギリギリの死闘を繰り広げ相手を倒し、また新たな敵との戦いが始まる。そして、敵だったキャラクターたちがいつのまにか仲間になるという展開に発展することがよくある。悪役だったキャラクターが味方になることをアニメファンたちの間では「光落ち」と言うが、ドラゴンボールは他作品に比べて圧倒的に光落ちしてゆくキャラクターが多い。
一体なぜ、敵たちは光落ちするのだろうか。実際に光落ちしたキャラクターを紹介しながら、その実態を追っていこうと思う。

■ベジータ

まずは誰もがご存知、ベジータから。
ベジータと悟空(主人公)は最大のライバルであり、憎まれ口を叩きつつも互いの存在を認め、強敵と闘うときには互いに背中を預けるような信頼関係を築いている。

しかし、もともとベジータは悟空たちの敵だった。
ベジータは惑星ベジータの王子であり、数少ないサイヤ人の生き残りでもある。ひょんなことからドラゴンボールの存在を知り、永遠の命を手に入れるという願いを叶えるため探すことを決めた。それ故に同じくドラゴンボールを追い求めている悟空らと敵対することとなったのである。ベジータは悟空に個人的な怨恨を抱いており、サイヤ人の生き残りであるにもかかわらず地球を守ろうとする悟空のことを裏切り者だとみなしていた。また、悟空は下級戦士の生まれであるため、弱小者だと見下す面もあった。これらの思いが絡まり、ベジータは悟空を倒すことを渇望していた。

ベジータはとてつもなく強い。その強さの理由は彼のポテンシャルの高さゆえだけのものではない。彼はとにかく強くなるための努力を惜しまず、自分より強い相手を常に欲する。勝利のためならば死をも恐れない精神を持ち、悟空をギリギリまで追い詰めたこともあった。

にもかかわらず、いつの間にか味方になっているではないか。偏屈で、誰より悟空を敵対視し慣れ合いを嫌う、勝利のプライドの塊のはずなのに。

きっかけは、フリーザを倒すために悟空一派と共闘したことだった。このときは、フリーザを倒すために共闘はやむを得なかったためであり、ベジータの心の中に仲間意識が芽生えるということはなかった。

だがその後ベジータは地球に定住し、悟空らと行動を共にするようになる。そして気付けばブルマ(妻)との間に子どもが生まれていた。当初はあまり子煩悩といった印象は受けなかったが、魔人ブウ編にて勝利はないと悟るとトランクス(息子)を抱きしめ、自らの命を盾に息子を逃がした。そしてそのときにトランクスにかけた言葉は、「ブルマを大切にするように」との旨であった。

これには読者も驚かされたことだろう。
徐々に悟空らと打ち解け柔和になっているということは見て取れたが、最後の最後に彼には無縁のものであったはずの、愛というものを見せたのだから。そしてテレビアニメ版では良き父としてブラ(娘)を溺愛。また家族愛のみならず、仲間に対する意識も芽ばえ、今では当たり前のように悟空たちと行動を共にしている。

登場当初の一匹狼のようなベジータはどこへいったのだろうか。また、なぜここまで変わってしまったのだろうか。悟空たちが生み出す心地よい雰囲気のせいか、はたまた家族を持ったおかげなのだろうか。
真相は本人のみぞ知る。だが、ベジータはもう立派な頼れる仲間であり、これからも悟空らと一緒に数多の敵を蹴散らしていくのだろう。

■フリーザ

今でも敵か味方かはっきりしないフリーザ。
しかしテレビアニメ最新版「ドラゴンボール超-宇宙サバイバル編-」においては悟空チームとして共闘していることから、光落ちしたということにしておく。

宇宙の皇帝と呼ばれる、最強の存在フリーザ。
数多くの惑星を侵略、支配し、全宇宙から選りすぐられた優秀な人材を従えている。普段から落ち着いた物越しで話す時は丁寧語を使うが、根底は残忍で冷酷非道。他者の命を奪うことを躊躇せず、自分こそが宇宙で1番の強者であると信じて疑わない。ときには相手をおちょくるような戦闘をし、己の力を見せつけ敵を見下した態度も取る、かなり嫌な奴だ。

フリーザの登場で、多くの読者が今度こそもう駄目なのではないかと思ったことだろう。それまでもたくさんの敵をなんとか倒してきた悟空らであったが、フリーザの強さは過去の敵を遥かに凌駕していた。あの戦闘大好きのベジータですら震え上がっていたし、クリリン(悟空の兄弟弟子で、親友)やピッコロは対峙することすらも辛そうだった。
また、フリーザは全部で3形態に変身する。最終形態の強さはもはやどんな手を使っても通用しない程で、悟空の「20倍界王拳」を発動させた「かめはめ波」すら片手で受け止めた。

悟空との闘いの後は身体のほぼ全てをサイボーグ化して登場したり、死んでいるのにも関わらず復活し再び悟空と死闘を繰り広げたりと、かなりのしぶとさを見せている。何度敗北しても何かしらの機を狙って悟空らの前に現れ、再び悟空を倒すこと、そして全宇宙を掌握することをあきらめない。

といった具合に、未だに敵としての姿勢を崩さないフリーザだがアニメの「ドラゴンボール超-宇宙サバイバル編-」では悟空らと共闘している。これは悟空のスカウトがあってのことだが、そのとき地獄にいたフリーザは「自分を完全に生き返らせること」という交換条件を突きつけ悟空はそれを呑み、24時間だけ復活した。この24時間は悟空らと共に宇宙の敵と戦ったのだった。
しかしそこはやはりフリーザ。何度も他の宇宙に寝返ろうとしたり、仲間を見限ろうとしたり、破壊神ビルス(世界のバランスを保ち、破壊を司る神)までをも手玉に取ろうとしたりとやりたい放題だった。それでも最終的には最も勝利に近い悟空らに手を貸し、共闘は果たされた。

フリーザは完全に光落ちしたというわけではないと思う。しかし理由はどうあれ、敵であった者たちが共に戦ったということは間違いない。これからも彼らの関係はいろいろと変わってゆくのだろうが、この先またフリーザが悟空らと共闘するということもロマンがある。絶対的な敵であって欲しいとも思う反面、味方になったフリーザの姿も見てみたい。

■ピッコロ大魔王

お次はピッコロ大魔王。
ピッコロは緑色の身体をしていて頭に触覚を携えた異星人で、生まれはナメック星。地球の神の「悪」の部分のみが分離してできた存在で、純粋な悪者である。ピッコロは世界征服を目論む敵として登場した。

ピッコロが登場するまで本作は、一貫してどこかほのぼのした雰囲気を保っていた。しかし彼の悪行と残虐性が、物語を一気に重苦しい雰囲気へと導いた。クリリンや神龍(ドラゴンボールを7つ集めると出現する龍)までをも殺害した。ここまで本格的な敵は初めてだったこともあり、読者はピッコロの圧倒的な邪悪さに戦慄したことだろう。

ピッコロは過去と同じ失態は犯すまいと、天津飯(悟空の師匠のライバルの弟子、悟空に勝ったことがある)を人質にとるなどして悟空を瀕死の状態まで追い込んだ。どんな悪列非道な手を使ってでも勝とうとしたのだが、最後は悟空に敗れた。

そんな完全悪であるピッコロだが、悟空とは闘いの後から徐々に距離を縮めていった。最初は慣れ合う気などはなく、打倒悟空を掲げ世界征服もあきらめていなかったが、悟飯(悟空の息子)を連れ去り修行をつけたことが運命の分かれ道となった。
連れ去った動機は、その当時の悟空たちの敵を倒すための策略として悟飯を強くするためで、情があったわけではない。
しかし修行を通して悟飯の純真無垢な性格に触れるうちに少しずつ邪心が消えてゆき、悟飯の方も、ピッコロの内に秘められた優しさに気付き慕うようになる。威厳の塊のようだった性格も柔らかくなり、厳しい態度ばかりでなく頭を撫でたり礼を述べたりするようにもなった。そして最新版のアニメではパン(悟飯の娘)の子守りまでこなした。

※トランクス

物語が進むにつれて、誰もがピッコロの中にあった悪は改心されつつあると思っていたが、まさかあの大魔王が子守りまでするとは驚きである。
他にも、悟天(悟飯の弟)やトランクス(ベジータの息子)の良き師範となったり、神としての知恵や経験や持ち前の冷静な判断力や洞察力から、悟空たちに大きな恩恵を授けたりしている。もちろん戦闘力も非常に高いため主要戦闘員として活躍し、ピッコロはもはやチームに欠かせない存在になっている。光落ちしてくれたおかげで、頼もしい仲間となったピッコロであった。

■人造人間17号・18号

※画像は18号

人造人間編にて登場した姉弟。レッドリボン軍の生き残りである天才科学者が作り出した人造人間17号と18号。
彼らはドクター・ゲロが、悟空を殺害するためだけに造った人造人間だ。見た目は人間そのもので、17号は人間の女を、18号は人間の男をベースに造られている。両者ともサイボーグなだけあって戦闘能力は凄まじい。超サイヤ人を凌駕する程のパワーを持ち、肉体も強靭。さらにはスタミナ切れを起こすことがない体質らしく、永久にフルパワーで攻撃してくる恐ろしい存在だ。

※クリリン

もちろん悟空殺害のために登場するのだが、これまで紹介した敵たちよりも残虐性はやや控えめになっている。二人は無駄な戦いや無益な殺生、破壊を好んでいないので痛ましい戦闘はあまり見られなかった。また、ときにはとどめを刺さず、どこか情があるような素振りを見せることもあった。しかしベジータやクリリン、ピッコロとは対峙した際はその能力の高さを如何なく発揮した。

悟空の命を狙う立場にあった2人だが、根っからの悪の権化というわけでもなかったためか、あっさり改心してしまった。そして、あろうことか18号はクリリンと結婚、子どもまで産んだ。そのため18号は自然と悟空らと行動を共にし、命を狙うような素振りもなく良きママとして生きていった。一方17号は王立自然公園の保護管を務め、その土地の女性と結婚し子どもを授かった。その後はパパとして、保護管としての正義を貫き暮らしている。
2人はそれぞれ家庭を持ち平和に暮らしているが、悟空らがピンチになると力を貸すなどして良き協力関係を築いているようだ。悟空らも、ピンチになったときは2人の力を頼りにしている。かつて命を狙っていたとは思えない程、今では互いに頼れる仲間になっているのであった。

■魔人ブウ

漫画版の最後の敵である魔人ブウ。
魔導師ビビディが造り出したとされている魔人で、体のサイズは太った人間と同等程度だがピンク色の肌、頭から生えた触覚など、見た目は異星人さながらだ。これまでの敵はみな頑健な肉体を持っていたのに、ブウはプニプニの肉体というのが特徴的だ。

かつては数百の星を滅ぼしたり、界王神(惑星を作成し管理する創造神)を数人殺害したりなど、悪名高き伝説を生み出していた。しかし創造者のビビディはブウのあまりの力の絶大さに苦慮し、一時はブウを封印したが時が満ち封印は解き放たれ、悟空たちの前に現れた。

ブウは当初、遊び感覚で地球を破壊していた。しかしとある出来事が彼の逆鱗に触れ、力を制御できなくなり暴走。悟空たちを木っ端微塵にするかの如く、圧倒的な力を見せつけた。その力は当時の悟空やベジータを始めとする主要戦闘員、さらにはまだ幼いにも関わらず戦闘に参加していた悟天やトランクスも辟易させた。このままでは地球は滅び、全員殺されるという最大の窮地に立たされ、読者は何度目かも分からないが肝を冷やしたことだろう。

しかし、この戦いが終わった後のブウはというと邪悪な姿はどこへやら。ミスターサタン(格闘技の世界チャンピオン)と仲良く一緒に暮らし始めた。元々地球にて封印が解かれたときから、ブウはミスターサタンをなぜか気に入っていた。また、たまたま身近にいた子犬も気に入り可愛がっていたのだが、この子犬とミスターサタンが傷つけられると、怒りのあまり力が暴走してしまう。しかし、愛する者たちが安全だとわかった途端に怒りが静まり無害な存在へと成り代わる。

もちろん戦闘能力は非常に高いため、何かの拍子に再び力が暴走することは考えられる。だがブウはそもそも優しい性格をしている奴なのだ。自身が気に入っている者たちに手をかけることはせず、彼らが傷つけられると激昂し、褒められたり好かれたりすると喜ぶ。なんだか憎めない性格なのである。

※画像左がミスターサタン

だからこそミスターサタンは、悟空らにブウがなぜ怒るのかを説明し、ブウの無害さを説いた。そして悟空もブウのことを理解し、強大な力を持った相手と知りながらも仲間になり、何かあったときはその力を頼りにするようになった。

ブウはやんちゃな性格をしている。気に入らないことがあれば怒るし、自由できまぐれ。子どものような気質の持ち主だが、その純真無垢な一面は悟空らにも受け入れられた。今では、破壊行動=してはいけない、ということを理解し無用な破壊行動は行わず、フェアで正々堂々とした戦い方をするようになった。
そもそもブウは悪者なのか?と問われれば、遥か昔、封印される前はそうであったと答えるだろう。しかしその後はすっかり良い奴のようなキャラクターになっており、悟空らの仲間になったのだった。

■さいごに

敵と味方の関係とは曖昧なものだ。味方が闇落ちすることもあれば、敵が味方に光落ちすることもある。

ドラゴンボールは非常に光落ちの多い作品である。光落ちする者が多ければ多いほど自陣はより強くなり、更なる敵との対峙に備えることができる。そしてなんといっても光落ちしたキャラクターたちの姿に、かつて強敵として立ちはだかった者同士が共闘する様に、読者は胸を熱くする。彼らがどんな理由でどんな経緯で光落ちしたかはそれぞれだが、このある種の寝返り行為は作品にとってなくてはならない重要な要素だ。闇落ちはどうしても物語が暗くなりがちだが、光落ちはどんどん物語が加熱していくのだ。
今一度、彼らの初登場時の悪童っぷりと、頼れる味方になってからの姿を見比べてみてはいかがだろうか。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

関連記事一覧