NARUTO:忍者をテーマにした作品に詰め込まれたロマンと和の趣

日本の少年誌、週刊少年ジャンプにて連載を開始して以来、世界中で愛されている「NARUTO」。忍者の世界をテーマにした作品で、主人公の成長と仲間との絆、そして強大な敵との戦いを描いている物語。
かつて存在していた「忍者」を登場させた本作にはロマンと日本の象徴、和を感じさせる要素もふんだんに取り入れられ、日本人のみならず私たちの想像を超える大きなスケールで、海外の人からは特に大きな反響を集める作品になっている。
そんな本作に詰め込まれたロマンと和の要素はどんなものなのか、記していこうと思う。

※画像はイメージです

■ロマン溢れる忍術の数々

本作でまず誰もが目を奪われるのが、数々の忍術であろう。
日本には古来より忍者に関する記録が残されており、忍術の記載があったという。その中では水の上を歩いたり、背景に溶け込んで身を隠したりする術などが有名である。また、現代人の忍者に関する期待や想像が、より幅広い忍術があったと空想を広げている。

いずれにしても、描かれた忍術からはロマンが感じられる要素がある。
単純に憧れからそう感じる面もあるだろう。忍者に対する「こうであってほしい」という願い、知らずに形成された忍者というイメージが固まった故の産物であるとも考えられる。

作中で登場する忍術のほとんどは、本作中オリジナルだろう。例えば主人公のナルトが習得した「螺旋丸」は、実際には再現するのは不可能。そのため完全オリジナルである。他にも同様の忍術は数多く登場し、そのどれもが作品の世界を広げるユーモア溢れる魅力的な忍術の数々である。
現実では実現し得ない忍術は格好良さを備えながら、さらには「忍者」が繰り出す術という点で、ロマンの塊となったのである。

このロマン溢れる忍術は、一体どれだけの人間を魅了したことだろう。
実際に存在していたとされている忍術もオリジナル要素を加え、既存の形を残しながらも新しい忍術に進化させている。影分身の術や、隠れ身の術がそれに該当する。それぞれ実際に伝承されている基本的な忍術であるが、作中ではチャクラを使い、高度で、同じ名前なのにかけ離れた忍術として描いているのだ。
忍者が使うとは思えぬ忍術の数々は本当に魅力的なものばかりで、且つどれも実際に真似したくなるようなものばかり。戦闘時にインパクトを与えるような格好良さ、中には通常生活で日常的に使えそうなものまでバラエティも豊か。読者および視聴者はこの場面でこの忍術が使えたらと、実現はあり得ないと思いつつもその忍術の虜になったのだろう。

この憧れを抱いた者は日本では小さい男の子が中心であったが、外国人からも熱烈な支持を集めていた。中には本物の忍者になりたいと来日する人までいるくらいだ。そうして思い焦がれる対象が海外に多くいたからこそ、国内でもそれに呼応するように白熱したのかもしれない。

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■忍者らしからぬ服装と戦闘

先に述べたように、本作に登場する忍術は現実の忍術からかけ離れたものが多かった。登場人物たちが着ている服装や戦闘も、同様に現実のイメージから逸脱している点である。忍者らしからぬ露出の多い服装、闇に隠れるように敵を暗殺する忍者とは思えぬ派手な戦闘。この部分は本作の大きな特徴だ。

服装については本当に多彩なものであった。一定の忍者は同じような服装を着ているが、基本は皆それぞれ、個性的な服装に身を包んでいる。

主人公のナルトは、少年時代はオレンジのツナギのような服装をしているのは知っているだろうか。忍者は基本的に闇に紛れるように、暗い色の服装に身を包んでいたそうだ。それを考えるとオレンジ色というのは忍者にあるまじき色だろう。紛れるどころか闇の中で目立ってしまう。敵に姿を曝し、身を危険に曝すなど言語道断な事由と考えられる。

女性キャラでは、ヒロインのサクラも忍者らしからぬ格好だ。服の色はもちろんだが、服装は露出が多い。腕も足も晒し、防御という面からは何も役に立たない服装をしている。基本女性キャラは概ね全員露出が高めの格好である。くの一は色仕掛けを行うとも言われているが、そのイメージが女性キャラの格好に投影されたのだろうか。

戦闘においては、本作の戦闘シーンを見てもらえば理解しやすいであろう。手に汗握る白熱した戦闘にて繰り広げられる体術や忍術、戦闘方法は派手なものばかりである。

体術は一見地味に見えるが、アニメを良く見ているとキャラたちの身の振り方が巧みだと気付くだろう。現実にいた忍者は体術をあまり繰り出さなかったとされている。だが本作では肉弾戦も多く描かれている。

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戦闘方法だが、これは忍術や体術だけではない。用いる道具や戦略的戦闘、道具というのは手裏剣やクナイを差しているが、本作では大きな飛び道具や特別な武器を用いていることが多々ある。例えばテマリは大きな扇子を武器に戦うし、サスケは大きな手裏剣のような道具を使用していた。戦略については実際の忍者も考えることだろうが、それを遥かに凌駕する戦略を企てていたのである。特にシカマルは何手先までも見越して戦略を練る。そうして敵を欺き、あらゆる問題にも対処できるように戦いに挑んでいたのだ。

忍者とは思えぬ要素が満載。土台は忍者なのだが、そこに本作の世界観を映し出すような要素を取り入れ、「NARUTO」という世界を築き上げている。従来の忍者のイメージを覆し、忍者の新しい形を作り上げていたのである。

■男だけじゃない!くの一にも注目

忍者といえば男というイメージが強く根付いているであろう。女性の忍者、くの一も存在していたが、彼女らは表にでることはなく裏方で暗躍することが多かったそう。そのため主要な動きは男の役目、そのため男のイメージが強くなっているのだろう。
しかし、本作では、くの一女性キャラにもスポットが当てられている。これが作品全体をより一層面白くしているのだ。

女性キャラたちは男性キャラに比べると数が少ない。戦闘においても、やはり男性が主体になっていることは否めない。だが登場する女性キャラたちはいずれも強く、1人でも十分に前線に立てるような者たちばかり。「伝説の三忍」に数えられる者や、火影になる者もいる。女性という細やかな一面を活かして、大事な曲面ではサポートに徹することもこなし、その場面で自分がどんな立ち居振る舞いをするべきかをしっかり見極めて動いているのだ。その広い視野は直線的な行動が目立つ男性陣を支え、ひいては自陣全体を守るという、縁の下の力持ちのような存在として活躍。彼女たちの力なくして物語の大きな戦闘は成しえなかったのだ。

さらに、女性たちに焦点を当てた物語も描かれている。
特に多くの視聴者が記憶に残る印象的なものとして、中忍試験時の「サクラVSイノ」が挙げられるだろう。幼馴染でありながら、共にサスケに思いを寄せているというライバル関係の2人の、初めての直接対決が描かれたものである。2人の真っ直ぐな思いは互いに引けを取らず、最後まで真っ向勝負で共に挑みあった。それまで2人で歩んできた思い出や、それぞれの思いをぶつけ合って。あまりに真っ直ぐで、真剣なライバルと見なしているからこその思いのぶつかり合いは、女性とは思えぬ気迫溢れる戦いであった。

女性の戦いだというのに、ここまで本格的に、丁寧に描くという点に注目してみてほしい。そうすれば本作のキャラクターが如何にそれぞれの立場を考えた上で動いているのか、また、女性たちがどれだけ強いかが浮き彫りになるだろう。

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■BGMからも感じられる和の世界

アニメの楽しみの1つとして音楽は欠かせない要素だ。本作はアニメの放送期間が長いこともあり、実に多くの楽曲が使用されている。OPやEDは当然のことだが、特に力を入れているのがBGMだ。

物語の途中で流れるBGMに意識を向けたことがあるだろうか?アニメはそのときの展開や雰囲気に合わせ様々なBGMが活用されている。たかがバックに流れる音楽だと侮るなかれ。たった1つの音楽で、物語の面白さは無限に広がり、それがそのときの展開に合っていると多くの視聴者の心に強く刻まれるシーンとも成り得る。

本作はスタート時点から海外展開も視野に入れていたことから、海外の方が聞きなれない和太鼓や尺八、三味線を多く入れてもらえる作曲家を探していたらしい。そのため和の音を主に用いた楽曲が多くを占め、和を感じられる音楽が多く作られた。
長く続くアニメの中で全BGMの代表曲とも言える「Naruto Main Theme」、「動転」、疾風伝の戦闘BGMの代表「形成逆転」は、和を基調にした楽曲である。ただ和なだけでなく、その時代に合った音楽傾向もしっかりと取り入れ、決して単調にならないようにも配慮。また、いくつか聞くと分かると思うが、本作のBGMは男性の声で合いの手が入っているものが多い。猛々しく、勇ましい声は強く印象に残るものだ。
上記で例に挙げたものはアップテンポの楽曲ばかりだが、ゆっくりとしたものも和の音を軸に作られたものが多い。

※曲名「形勢逆転」

忍者というとやはり日本、ひいては和のイメージが強いだろう。
作品の中では数々の忍者が登場、活躍し、身なりや雰囲気、BGMからも存分に和を感じられるのだ。設定だけでなく物語全体を彩り、引き締める役割を持っており世界観に合わせることで、グッと全体の雰囲気がまとまりを持ち始める。そして「NARUTO」という1つの世界をあらゆる角度から、統一されたものとして楽しめるのだ。

普段はBGMにあまり耳を傾けない、という人にこそ気にかけてほしい。どの楽曲も展開に合っておりしかも抜群のタイミングで流れる。おかげで知らずの内に、より物語を楽しめているのだ。それに気づいた時、本作の様々な展開はより深みを増すことは間違いない。

■OPとEDも逸材

先にBGMの話をしたが、本作はOPとEDも逸材なものが多いと評判である。
選ばれた楽曲もそうだが、映像も良いと非常に高い評価を得ている。その所以は、物語はもちろん、楽曲の歌詞に合わせた映像になっているからだ。
アニメなら必ずあるOPとED。これはこれから始まる物語の世界に誘い、一旦の幕を引くが次に繋がるようにとの意味合いがある。何気なく流し見している人が多いかもしれないが、実は非常に重要なものなのだ。

本作ではアニメの放送期間が長かったことから、非常に多くの楽曲が用いられてきた。その数は通算で80を超える。そのどれもが物語の内容にリンクし、世界観への誘いを秘めたものである。アニメを見ているならば少しでもいいのでOPとEDにも注目してみてはいかがだろうか。さらに「NARUTO」の世界観に引き込まれること間違い無いだろう。

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■さいごに

世界的にも人気の忍者を題材にした本作は、やはり世界でも広く愛されている。その人気は原作の連載や、テレビアニメの放送が終了した現在でも変わらない。
忍者という要素がウケたことは周知の事実だが、それだけではない。一般人が忍者に抱くロマンをより大きなスケールで描き、実際には表舞台にあまり登場しなかったとされている女性忍者にも視点を当て、さらには徹底的に統一した世界観を作り出すために見落とされがちなBGMにまで拘った。それぞれは小さなツボミかもしれない。しかしこのツボミが合わさり、まとめて開花することにより、本作の魅力は最大限に飛び出したのである。

今尚躍進する本作は、日本のアニメ史上でも根強く残るものだろう。そんな作品を単純に楽しむだけでは勿体無い。より多角的な視点で捉え、どこが愛されているのか、面白さの由来は何かを追及するのも一興だろう。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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