アーネスト・ミラー・ヘミングウェイ:ワイルドでアメリカンな激動の作家

アーネスト・ミラー・ヘミングウェイ(1899−1961)はアメリカ合衆国出身の小説家・詩人で、洗練された語彙とシンプルで男らしい文章が今でも多くの読者を魅了しています。また彼自身もワイルドで素朴な人物で、それは作品へも大きく影響していました。ヘミングウェイの作品は主に1920~1955年頃に多く出版され、1954年にはノーベル文学賞を受賞しました。なお彼の死後も作品は出版され続けていて、アメリカにおける古典文学の教科書のような存在となっています。

<両親の不仲を目の当たりにして育つ>

ヘミングウェイは、1899年アメリカのイリノイ州シカゴの西部に位置するオーク・パークの中流階級の家庭で育ちます。父クラレンス・エドモンド・ヘミングウェイは医者、母グレイス・ホール・ヘミングウェイはミュージシャンをしていて、経済的に自立した女性でした。

ヘミングウェイ一家は自然と触れ合うことが好きで、ミシガン州北部のウォルーン湖の岸辺に別荘を構え夏休みにはそこの湖で泳いだり、魚釣りをしたり、狩猟の射撃練習をしたりしていました。彼が幼少期から豊かな自然に親しんでいたことは、彼の著書の端々からもよく伝わってきます。

ヘミングウェイは6人兄弟で、姉と1人の弟と3人の妹がいます。母は自立した女性でしたが夫よりも高額な収入を得ていたためか自己主張が激しく、夫へはしばしば高圧的な態度をとっていました。
ヘミングウェイはそのような場面に晒されて育ち、父親が母親に苦しめられる姿を目にしては心を痛めていました。母グレイスは、夫への当てつけのように家族の別荘のある湖畔の対岸に自分の別荘を建てたり、子供たちの中でも極端に差をつけて女の子ばかりを可愛がったりして、ヘミングウェイには特に高圧的に接していたそうです。そうしてヘミングウェイは、わだかまりを抱えたまま青年期を迎えます。そしてそのまま関係が改善されることはなく、ヘミングウェイは母の葬式にも現れませんでした。

<実体験を小説に>

高校を卒業したヘミングウェイは地方新聞社で働くことになり、そこで決められたフォーマットに無駄の無い文章と必要な情報を簡潔にまとめる技術を身につけました。ヘミングウェイの特徴と言える、簡素で簡潔な文章は新聞記者としての経験によって培われたものなのです。そしてこのとき同時に、取材して書くということの奥深さも知りました。

ヘミングウェイの作品はよくハードボイルドであると評されますが、作品の多くは彼自身の実体験を元にして書かれています。ここで、彼の作品のいくつかをご紹介しようと思います。

※ヘミングウェイが「誰がために鐘は鳴る」を執筆した実際のタイプライター

「誰がために鐘は鳴る」この作品は1936年~1939年に起きたスペイン内戦下での、アメリカ人の男とスペイン人の女の恋愛を描いています。また、この戦争の際には彼自身も記者としてスペインに赴き、その様子を記事にしました。

「日はまた昇る」はヘミングウェイの名を一躍有名にした作品です。アメリカからパリにやってきた元兵士の主人公と7人の若者たちの日々や恋愛模様が率直に描かれています。どんなことがあっても日はまた昇り、世界は続いていくことのやるせなさを淡々と綴っています。

「ケニア」という作品はヘミングウェイの死後、彼の息子が編集して出版した作品です。30歳以上年下の女との恋と本妻との複雑な関係を描いた、フィクションとノンフィクションの狭間のような作品です。

※「老人と海」を執筆したキューバでの行きつけのバーに設置された像

文学作品におけるハードボイルドという概念は、感情を描かずにただ事実や出来事を淡々と綴る作風を指します。実体験を素直で簡潔な語り口調で表現したヘミングウェイは、文学の新しい一つのジャンルを築いたと言えるでしょう。そして 1952年に「老人と海」を発表し、ピュリツァー賞を受賞します。この頃が彼の作家としてのピークであったと言えるでしょう。

<事故と最期>

ヘミングウェイは1954年にウガンダのナイル河上流で飛行機墜落事故に遭遇します。夫婦で訪れたケニア旅行から帰る際の出来事で、ヘミングウェイはこの事故で内臓破裂や頭蓋骨の骨折など重症を負ってしまいました。そしてこの後遺症が、彼を最期まで苦しめることになるのです。事故と同じ年にノーベル文学賞を受賞することになるのですが、後遺症から体調が回復せず彼はノーベル賞の式典には出席することが出来ませんでした。

その頃の彼は入退院を繰り返していましたが、ある日狩猟銃の手入れ中に銃弾が暴発しヘミングウェイが亡くなったと報道されました。しかし本当に暴発なのか、故意であったのかは誰にもわかりません。アーネスト・ミラー・ヘミングウェイは、1961年7月2日に61歳でこの世を去りました。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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