新世紀エヴァンゲリオン:本作を考察するための新しい2つの視点

社会現象を巻き起こしたアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」。未だに新作が発表される度に、多くの人が活気付く。筆者も、一体どれだけの月日をこの作品がくれる高ぶりと共に過ごしたのだろう。
これ程長い間、ファンの心を熱くし続けるアニメ作品は珍しい。なぜこれほどまでに人気があるのか。本作の魅力の正体とはいったい何なのか、それはエヴァンゲリオンを愛する全ての人にとっての永遠の問いだ。
ということで今回は、数多の考察が繰り返される本作において、あまり語られることのない、ある2つの視点から見直してみることにした。それは、「エヴァンゲリオンの操縦者たちに付けられたイメージカラー」と「使徒」である。

イメージカラー

公式的に各キャラクターにイメージカラーが設定されているわけではないが、主要人物、特にエヴァンゲリオンの操縦者たちには、なんとなくそのようなものがある。それは彼らの性格のイメージから決まったり、搭乗しているエヴァンゲリオンの色から決まったり、プラグスーツの色が由来したりしているものだろう。

ここに注目したらどんな一面が見えてくるのだろうか。
今回取り上げるのは、碇シンジ、綾波レイ、惣流・アスカ・ラングレーの3人だ。

まずは主人公、碇シンジ
サードチルドレンとして初号機に搭乗し、襲い来る使徒たちと戦う。そんな彼のイメージカラーは、もしくは黄緑
シンジは非常に憶病で、他人との交流も上手な方ではなかった。度重なる使徒との戦いや、友人のミサト、レイ、アスカ、その他の学友らのおかげで徐々に成長していくが、その後ろ向きな性格は、自分で自分を認められないところからきている。
そんな彼が何故、紫なのだろうか。紫は高貴、変わり者というイメージがある傍らで、性を連想させる色でもある。魅惑的、優雅、崇高、欲求不満というイメージもあるだろうか。このイメージはシンジに適しているのか?あまり当てはまっていないような気もする。
何かとお騒がせで、破天荒な初号機。時には搭乗者の意志と関係なく暴走するなど、全機体の中でも、最も何を起こすか分からない。しかし、紫にはサディスティック、不安定、浮世離れというイメージもあるため、それならなるほど頷けるだろう。初号機の動きは不安定であるし、暴走した際の使徒への痛めつけ方はどちらかといえばサディスティックなものであった。
しかしなんだかしっくりこない。もしかしたら、初号機は唯一リリスから創り出された機体であるため、神秘的なイメージを込めて紫にしたのかもしれない。

次は綾波レイ
レイはファーストチルドレンとして零号機のパイロットを務める少女である。レイのイメージカラーは水色。透き通るような白い肌と髪色からか、この色が連想されやすい。
白には清廉潔白、純粋さ、清潔さというイメージがある。また、水色は繊細、誠実、寂しさなどがイメージされる。どれもレイという人物そのものを表しているようなものばかりだ。
レイは他人と一線を引くような雰囲気を持っており、近寄りがたさもある。氷の女王のような、どこか冷たい雰囲気を孕みながらも、その内は寂しさに満たされている。
仮に、レイの性格はそのままに、肌の色や髪色が違う色だったら、アンバランスに感じるのではないだろうか。レイというキャラクターを確固たるものにするために白い肌、水色の髪にしたのかもしれない。

最後は惣流・アスカ・ラングレー
思ったことはすぐ口に出す、真っ直ぐで熱い猪突猛進型の少女、アスカ。セカンドチルドレンとして弐号機のパイロットを務める。勝気で野心溢れる活発な性格で、アスカのイメージカラーは、である。
これほどまでに赤が似合う子は、アスカ以外にいるだろうか。アスカが乗る弐号機も、プラグスーツも赤、完璧なまでに真っ赤に染まったキャラだ。シンジとレイは複数の色をイメージさせるが、アスカは赤のみ。これだけでもアスカという人物を表現している。赤という色の持つ、活気や情熱、勝利、積極性などの意味合いは、どれもアスカの性格そのものだ。また、赤色をイメージとしたキャラクターは往々にして決断が速い、行動力がある、負けず嫌い、派手好き、上昇志向という傾向が強いが、これもアスカに当てはまる。

3人のイメージカラーについて考えてみたが、やはり色というのは各人のイメージをより強固なものにする役割があるのだろう。こうすることにより、物語の中のキャラの立ち位置をよりしっかりと位置付け、個性を引き立てようと目論んだのではないだろうか。
とはいっても、このイメージカラーは公式のものではないので、あくまで一ファンとしての憶測にすぎない。

神の名を持つ使徒たち

特務機関NERVが戦う敵、使徒。使徒は、NERVの本部が設置されている第三新東京市に襲来し、人類をも脅かす存在である。個体数は確認できているだけで17体。それらは全て、旧約聖書の中の黙示、エノク書に登場する天使の名を冠している。

「使徒」といえばイエス・キリストの弟子とされている12人の人物を思い浮かべる人もいるだろうが、本作で登場する使徒は、それとは全く違った生物である。何故、彼らに天使の名前がついているのか。

第1使徒:アダム

光の巨人のような姿をしている。ほぼ全ての使徒の生みの親であり、初号機以外のエヴァンゲリオンの元ともなっている。アダムに第2使徒リリン以外の使徒が接触するとサード・インパクトが発生してしまうためNERVはアダムを目指してやってくる使徒たちを殲滅しなくてはならない。エヴァンゲリオンや使徒、サード・インパクト、本作の世界観を構築するものほとんど全ての根源的な存在であるため、最初の人類=「アダム」という名が付けられたのだろう。

第2使徒:リリス

NERVの地下の壁に貼り付けられている人型の使徒。アダムの最初の妻であるとされているリリスの名を冠している。7つの目が書いてある仮面を付け、胸には使徒の活動を抑制するロンギヌスの槍が刺さっており、下半身はなく、気味の悪い様相をしている。これが全ての生命の源であり、生物の始祖というのは少し受け入れ難いような気分にもなる。

第3使徒:サキエル

水を司る天使の名を持つ第3使徒、サキエル。ユダヤ教では木曜日を司る天使でもある。ひょろ長い手足に頑強な肩、胸に赤いコアを抱えた人型の使徒だ。光を使ったビームのような攻撃を繰り出す。いわゆる「エヴァンゲリオンの使徒」のイメージを定着させた使徒である。
余談だが、サキエルは「ゆるしと」というデフォルメされた使徒のキャラクターたちの中では一応、主人公を務めていて、使徒の中では何故か一番愛されている。

第4使徒:シャムシェル

イカのような姿をし、水中から現れたシャムシェル。触手のようなものが2本あり、それを鞭のように使い攻撃を繰り出す。わりとあっけなく初号機に倒されてしまい、あまり多くの情報はない。しかしこれまで人型の使徒しか登場していなかったため、未確認生命体のような形態に少し驚かされた。

第5使徒:ラミエル

今度はなんと正八面体の登場である。もはや生物とは呼びがたいような形である。名は雷を司る天使から拝借したものであり、攻撃も電気系。初めて名と同じ攻撃を出す使徒が登場した。
あまりにトリッキーな見た目から、多くの視聴者は最初頭に「?」を思い浮かべたものだろう。ラミエルは本体下部からドリルのようなものを出して穴を掘ることができる。これも視聴者の予想を超える仕組みであり、これより先に登場する使徒に対しての幅を広げてくれるものとなった。

第6使徒:ガギエル

深海魚のような姿をしたガギエルは、魚を司る天使の名を冠した使徒だ。体は空母よりも大きく、鋭い牙を持った口を大きく開いて襲ってくる。名は「吠える神獣」という意味もあり、そのままの迫力を持った使徒であった。この個体は他に比べて、少し現実感のあるデザインであったため、どことなく受け入れやすい印象を得た。

第7使徒:イスラフェル

双子で登場したイスラフェル。襲来したときは1個体だったが、戦闘の最中に2体に分裂した。名の由来は音楽を司る神、イスラフェールからきているとされている。確かにシンジとの戦いでも音楽の旋律に合わせて攻撃していた。アスカとの連携した動き、音楽と融合した戦いはユーモアに溢れ、ガチガチの恐怖を伴う戦いというよりは、どこか面白さを孕んだものであった。
ちなみにイスラフェールは「復活の天使」とも言われている。だから分裂したりしたのかもしれない。

第8使徒:サンダルフォン

この名は胎児を意味している。その名の通り、登場時は胎児のような姿をしていた。そのため、早く大きくなりたい、とでも思っていそうなかわいらしさもあった。しかし大きくなると、魚と虫を掛け合わせたような形状で、マグマの中を自由に泳ぎまわるようになる。
胎児と使徒など、まるで結びつかないイメージであった。そういった意味で、中々トリッキーな使徒だ。

第9使徒:マトリエル

アシダカグモのような見た目をしている使徒。胴体のような部分には複数の目が描かれていて、名は雨を司る天使からきている。こちらの個体は名前の由来となっている天使をあまり彷彿とさせない。というより、「巨大な蜘蛛」という印象が強すぎるのだろうか。しかし、目から強力な溶解液のようなものを流すところは雨を思わせるのかもしれない。これを雨として受け入れるかは賛否両論だろうが。

第10使徒:サハクィエル

大きな目玉を持ち、粘菌のような姿をした使徒、サハクィエル。空を司る天使から名をとっており、その名の通り宇宙に現れる。サハクィエルの登場で、エヴァンゲリオンもとうとう宇宙規模のスケールの戦いになってきたのか…と感じた人も多いのではないだろうか。これまでの使徒と比べると色味が派手な印象を受ける。

第11使徒:イロウル

この名は恐怖を司る天使からきている。これまでの使徒は姿形があったが、イロウルには明確な形がない。まるでウイルスのような使徒が登場したのだ。コンピューターシステムなどに侵食することができるため、派手な戦闘はおきないが、他の使徒と違って群体をなしている。イロウルが誕生した経緯が気になる。

第12使徒:レリエル

第5使徒、ラミエルを想起させるような第12使徒、レリエル。白黒の模様のある大きな球体で、名前は夜を司る天使からきている。この球体が夜?と思うかもしれないが、レリエルの本体は、球体の下に広がる影のようなものの方なのだ。そうすると、夜を司る天使の名を冠していることにも納得がいく。

第13使徒:バルディエル

霞や雹を司る天使、バラキエルの別称から名付けられたバルディエルは粘菌状の使徒。侵蝕した対象の物質を変化させたり、身体能力を高めたりすることができる。戦闘時、新たなパイロットを乗せたエヴァンゲリオンもろとも侵蝕したこともある。しかしその能力は覚醒されていないと発揮できないらしく、未覚醒の状態だと簡単に殲滅されるのだとか。寄生されると恐ろしいものだが、覚醒さえさせなければまるで怖くもない弱い使徒だ。
侵蝕型の使徒はこれで2つめだが、イロウルと混同してしまいがちだ。しかしこちらは激しい戦闘シーンも描かれたのだが、ネタ切れ感が目についてきた頃だ。

第14使徒:ゼルエル

全使徒の中でも最強とされているゼルエルは、力の神の名が付いている。薄い帯状の手のようなものを持っており、本体はずんぐりとしている。そして、威力はこれまでとは比較にならないほど強く、NERV側は苦戦を強いられた。最後は覚醒した初号機に捕食されたが、これは本作の中でもひと際衝撃的なシーンだ。まさかエヴァンゲリオンが使徒を食うなんて、と衝撃を受けた人も多いだろう。
まるで本作の残虐性を象徴するかのように、食われたゼルエル。その名の通り途方もない力を発揮し、それ以上に本作の過激さ、残酷さ、そして物語の本質に迫る展開に導いた。

第15使徒:アラエル

またもや宇宙戦を強いられたのがアラエル。青白く光る固体として描かれ、鳥のような形状をしていた。名の由来となった天使は、もちろん鳥を司っている。最後はロンギヌスの槍に突かれて撃破された、またまた二番煎じのような使徒であった。零号機がロンギヌスの槍を投げるシーンには興奮したが、使徒そのものに新鮮さは見受けられない。

第16使徒:アルミサエル

天使の輪のような形をした使徒、アルミサエル。もしくはDNAの螺旋構造にも似ている。アルミサエルは、まさに子宮を司る天使の名なのだ。
対象に侵食し、融合しようとする使徒であるが、子宮を司る天使とは一体どんな天使なのかが気になる。

第17使徒:タブリス

ここで人型、ではなく人間の使徒が登場。渚カヲルという、中性的な見た目の優しそうで感じのよい少年が使徒だったのだ。カヲルに接触されたシンジも、つい心が揺れ動いてしまった。
タブリスというのは自由意志を司る天使のことで、確かにカヲルも自由意志の元、様々な行動をしていた。カヲル自身は害がなさそうに見えたため、NERVもあまり危険視していなかった。危険度よりも、自らの意思を持って人の心を知ろうとする使徒、という特徴のほうが注目されてしまったのだ。
これまで使徒というと禍々しいものばかりだったが、急に人間が登場し「これが使徒です」と言われたら戸惑うに決まっている。

第18使徒:リリン

最後の使徒、リリンは人類を現す。人類が使徒とはどういうことだ?と理解が追いつかない視聴者もいただろうが、人類は使徒らしい。伝承におけるリリンは、アダムとリリスの間に生まれた子であり、悪魔の子とも言われている。
リリスについてよく理解できなくても、ここで途方もなく壮大なスケールで物語が動いていたことには気付くだろう。人間そのものの姿をした使徒や、アダムとリリスという生命の根源を意味する使徒、子宮を司る天使をモチーフにした使徒が登場したことは、大きなメタファーになっていたのだ。

さいごに

イメージカラーと使徒、この2つの点から本作の本質に少しでも近づくことはできるのだろうか。

イメージカラーの点に関しては、それぞれの色の特徴をより引き立たせることに使っていることがわかった。この点からは、作品の特徴というよりは各キャラの立ち位置のようなものが見えたかもしれない。

使徒を全部追ってみたら、物語の大まかなテーマのようなものが見えてきた。使徒も人もアダムとリリスから始まり、最後は人類になる。つまり、生命が循環するということがこの物語の本質的なテーマの一つなのではないだろうか。また、本作におけるユーモア、残虐性、恐怖心とはどういったものを指すのかを、使徒を通じて描いている部分もある。ただ物語を追っていくだけでは気付けないような仕掛けが、こんなところにも隠されていたことに驚きを感じる。

本作を通しで視聴していたときはあまり気にならなかったけれど、こうしてあるポイントに絞って一挙に並べてみると、まだまだ深入りできる部分があることに気付いてしまう。また、制作者サイドも若干ネタに困っていたのではないか、など余計な想像もしてしまう。このような視点から本作を掘り下げるのも、ときには面白いのではないだろうか。

エヴァンゲリオンシリーズはまだ続いて、ファンたちは続編を待ちわびている。本作は、これからもますます熱を帯びて展開してゆくのだろう。だからこそ、今回取り上げた2つのテーマのような細かい点の、ちょっとした面白みに気付いてほしい。これはそういった願いを込めて選んだ2つの視点であった。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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