エイジア:ビッグ・ネーム・バンドの常識をくつがえしたプログレ・バンド

キング・クリムゾン、イエス、エマーソン・レイク&パーマーと、世界的な成功を収めたビッグ・バンドのメンバーが集まって作られたバンドがエイジアです。多くのビッグ・ネーム・バンドがわずかな期間で解散してしまうことが多い中、メンバーチェンジはあるものの、すでに40年にわたって活動を続けています。

エイジア誕生

1970年台、多くのプログレッシヴ・ロックバンドが全盛期を過ぎ、解散やメンバーチェンジを余儀なくされていました。
1972年のキング・クリムゾン、1980年のイエス、エマーソン・レイク&パーマーと時代を牽引してきたスーパー・バンドを大きな変革が襲います。
1980年、10枚目のアルバム「Drama」をリリースしたイエスは、ボーカルのトレヴァー・ホーン、ベースのクリス・スクワイア、ドラムのアラン・ホワイトが脱退しバンドとしての活動に終止符を。
最後までイエスに残ったギターのスティーヴ・ハウとジェフ・ダウンズは、当時のイエスのマネージャー、ブライアン・レーンの紹介でジョン・ウェットンと知り合います。
その後、一時的にザ・フーのドラム、サイモン・フィリップスを加えて正式にバンドとして活動を始めますが、ここに解散したエマーソン・レイク&パーマーからカール・パーマーが正式に加入し、エイジアが誕生。
最終的には、キング・クリムゾンからベース・ボーカルのジョン・ウェットン、イエスからギターのスティーヴ・ハウとキーボードのジェフ・ダウンズ、そしてエマーソン・レイク&パーマーからはドラムのカール・パーマーといずれも一時代を築いたスーパー・バンドに在籍していたメンバーが集結することになったのです。

約束された成功、そして終焉へ

一時は頂点を極めたものの時代の流れに逆らえず凋落を経験したメンバーが、過去の経験を活かし成功を手に入れることは、そう難しいことではなかったのかもしれません。
過去には、いずれも20分前後の大曲やドラマチックな組曲でプログレ・ロックの一時代を築いた彼らが、成功するために選んだのは「プログレのエッセンスを残しながらもポップにまとめた3分半の楽曲」というテーマでした。

1982年、このテーマに則って作られたファースト・アルバム「Asia」は、アルバム全てが珠玉の名曲と言えるほどの完成度。一部の評論家やプログレ時代のコアなファンからは商業ロックと批判されることもありましたが、多くのリスナーがこの新しいプログレ・ポップとも言うべきエイジアの音楽を受け入れたのです。

結果として、全米ビルボードでは9週間にわたって1位を獲得するスーパー・ヒットを記録し、その年の年間最優秀アルバムに輝きました。
翌1983年にはセカンド・アルバム「Alpha」を発表します。このアルバムも全米チャートの5位に入るまずまずの成績を収めるのですが、バンドのフロント・マンであるジョン・ウェットンがアルコール依存症により解雇されてしまいます。1ヶ月後にワールド・ツアーを控えたエイジアに急遽加わったのが元エマーソン・レイク&パーマーのグレッグ・レイクでした。
しかし、グレッグの声質がエイジアに合わなかったのか翌年には再びジョンが復帰しサード・アルバムのレコーディングに入りますが、今度はギターのスティーヴがジョンとの意見の食い違いから脱退してしまいます。
スティーヴの後任はすぐには決まらず、結局1年近く掛かってクロークスでギターを弾いていたマンディ・メイヤーをジョンが推薦する形で落ち着きます。
制作に十分な時間をかけて1985年にリリースされたサード・アルバム「Astra」でしたが、期待されたほどのセールスには結びつきませんでした。

スティーヴの脱退のきっかけを作り、後任のギタリスト選びにも失敗したことからジョンはバンドを解雇され、エイジアはデビューからわずか3年で活動を停止することになるのです。

エイジアのおすすめアルバム

エイジアは通算で11枚のスタジオ・アルバムを発表しています。その中でセールス的にもっとも成功しているのはファースト・アルバム「Asia」ですが、ここではあえてセカンド・アルバム「Alpha」をおすすめします。

このアルバムはシングル・カットされた「Don’t Cry」で幕を開けます。どこまでも高く突き抜けるようなスティーヴのギターで始まる「Don’t Cry」はこれぞポップ・ロックと言える名曲です。

続く「The Smile has Left Your Eyes」は美しい金管楽器とキーボードの旋律に、切なげに歌い上げるジョンのボーカルが印象的なロック・バラードです。
さらに、壮大なファンフアーレを思わせるオープニングで始まる「My own Time」は前半のアコースティック・ギターのアルペジオにリコーダーの音色が被さるフォーク・ロック調な展開から一転、素晴らしく印象的なサビに移行します。

プログレ・ロックとしての高度な技術を残しつつも、それを感じさせないポップな曲調は初めてエイジアに接する人にも安心してすすめられるものとなっています。
もちろん、ファースト・アルバムもセカンド・アルバムと比べて遜色なく、当然おすすめの1枚であることに変わりはありません。極端な話、どちらから聴いてもエイジアの魅力は十分伝わるほど、この2枚のアルバムの完成度は高いものです。

ファーストアルバムのトップを飾る「Heat of the Moment」は、まるで過去のプログレ・ロックを思わせる変拍子のスティーヴのギターで始まりますが、ジョンのボーカルが始まった途端に良質なポップ・ロックであることに気付かされます。

ドラマチックな展開が魅力な「Only time will tell」も佳曲と言えるでしょう。
アルバム全体を通して言えることですがセカンド・アルバムよりもスティーヴのギターが強く反映されていることが特徴で、そこに伸びやかなジョンの歌声がからむ理想的なバランスとなっています。

現在のエイジア

1989年にジェフ・ダウンズによって活動を再開したエイジアでしたが、オリジナル・メンバーはジェフだけという寂しいものでした。
ベスト盤に近いニュー・アルバム「Then & Now」は、サポート・メンバーとしてシン・リジィのギタリスト、スコット・ゴーハムやトトのギタリスト、スティーヴ・ルカサーといったビッグネームが参加し、それなりに興味深いものにはなりましたが、以前のセールスには遠く及びませんでした。
そのため、ジョンをはじめ主要なメンバーが相次いで脱退し、バンドはジェフを中心としたサウンドとなり、かつてのエイジアの面影はありませんでした。
ご存知のように、エイジアのアルバムは7枚目まで全て「A」で始まり「A」で終わるアルバムタイトルが付けられています。
これは、バンド名のエイジアに合わせたものなのですが「Silent Nation」を始めとしてこの時期リリースされたアルバムには、この法則が適応されていません。
その後、2000年にジェフとジョンが一緒に仕事をしたことをきっかけに、オリジナル・メンバーによるエイジア再結成の話が持ち上がります。
ただし、この時は契約上の問題からウェットン/ダウンズを継続する必要があり、エイジアと同時進行でツアーを行うというハードスケジュールをこなすことになります。
また、スティーヴもイエスの再結成に参加しており、イエスとのジョイントツアーでは両方のバンドでギターを弾いていました。
2012年には11枚目となるスタジオ・アルバム「XXX」をリリースし健在ぶりを見せつけましたが2013年にスティーヴが脱退。そして2017年には初期からフロント・マンとしてエイジアを支えてきたジョン・ウェットンが癌により死去、オリジナル・メンバーによる今後の活動は全て白紙となってしまったのです。

現在はギターにサム・クルーソン、ベース・ボーカルに元イエスのビリー・シャーウッドをサポート・メンバーとしてツアーを継続中で、オリジナル・メンバーはジェフ・ダウンズとカール・パーマーの2人だけとなってしまいました。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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