カンボジア:シェムリアップ名物のサーカス

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「アンコール・ワット」のお膝元であるカンボジアの観光都市シェムリアップでは、「Phare, The Cambodian Circus」という名物サーカス団が毎晩ショーを開催しており、人気の観光名所となっている。熟練プロパフォーマー達によるアクロバティックな演技はもちろん、身近な題材を用いて描かれる壮大な人間ドラマも見どころ。子供から大人まで楽しめるサーカスの魅力をご紹介する。

カンボジアの観光都市シェムリアップ。

シェムリアップの観光名所といえば、「アンコール・ワット」をはじめとする遺跡がクローズアップされがちですが、せっかく訪れたならナイトタイムも楽しみたいもの。

「マッサージ店で体を休めたり、繁華街に繰り出したりするのもよいけれど、他に夜の名所はないの?」とお探しの方におすすめなのが、サーカス鑑賞です。

「カンボジアでサーカス!?」と驚かれるかもしれませんが、シェムリアップには大人気の名物サーカス団が存在するのです。

今回は、カンボジアならではの演出がたっぷり詰まったサーカスの魅力をご紹介します。

世界レベルのパフォーマー達による迫真の技芸

2013年にオープンした、シェムリアップの一大エンターテインメントが「Phare, The Cambodian Circus」。
カンボジア滞在の夜を盛大に彩ってくれるサーカスショーです。

365日毎晩開催されているショーは、カンボジアの若者の雇用機会創出、持続可能な事業モデルの創造、カンボジアの芸術活性化への貢献を目的とし、社会的事業の一環で運営されているもの。

サーカス団のメンバー達はいずれも、カンボジア第二の都市Battambang(バッタンバン)にある、「Phare Ponleu Selpak(以下、PPSA)」というNGOが運営するアートスクールの卒業生です。

PPSAは、クメール・ルージュ政権の崩壊後、難民キャンプ内で絵画を学んだ9名の若いカンボジア人達によって設立された学校で、経済的に恵まれない子供達に美術、演劇、音楽、ダンス、サーカスなどのクラスを無料で提供しています。

サーカス団で活躍するのは、ここでプロパフォーマーとしての厳しいトレーニングを受けた精鋭メンバー。

これまでに、アメリカ、ドイツ、ノルウェー、韓国、日本、シンガポールなどでの海外公演も多数行ってきた彼らは、カンボジアの芸術界が世界に誇るプロフェッショナル集団でもあるのです。

現代を生きるすべての人々に贈られる、人間性の核心をつくストーリー

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「Phare, The Cambodian Circus」のユニークな点は、カンボジアを舞台としながらも、国や時代を超えてみられる、普遍的な人間性に着目したストーリー仕立てになっていることでしょう。

上演時期によって異なる複数の演目が用意されていますが、いずれも素朴な日常生活に潜む人間の光と闇を映し出す奥深い物語。また、カンボジアで代々受け継がれてきた慣習や民間伝承の要素を取り入れつつ、現代社会が孕む問題にもフォーカスする少々哲学的な内容にもなっています。

それでいて、決して陰鬱とした雰囲気はなく、随所にコミカルな演出が散りばめられているのが面白いところ。

今回筆者が鑑賞した「白金(原題:White Gold)」というタイトルの演目では、カンボジアの人々の暮らしや人生に欠かせない米を巡る人間模様が描かれていました。

たった一粒の小さい米も、集まると主食になり、国の主生産物にもなり、やがて私利私欲、嫉妬、争いの種にもなります。

冒頭の祈りを捧げるシーンでは敬意の対象とされていた米が、いつの間にか私腹を肥やそうとする人々の羨望の対象へと変わっていくのが印象的でした。

米というカンボジアならではの素朴な題材を扱いながらも、全人類が共感し得る欲望や罪の意識、天罰といった、大スケールのテーマを表現しているところが、世界中の人々を魅了するポイントであるのでしょう。

至近距離で楽しめる、ダイナミックかつユーモア溢れる演技の数々

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サーカスといえば、ハイライトは何と言ってもアクロバティックな演技。

8〜9年間訓練を続けてきたというプロパフォーマー達が、劇中で小道具を使いながら倒立、バク転、バク宙などの芸を華麗に繰り広げます。

無理難題もユーモアを交えながら笑顔で一つ一つクリア。息の合ったプレイは見事としか言いようがありません。

芸の披露前は息をのむような緊張が走る瞬間があるものの、サービス精神旺盛なパフォーマーチームの豊かな表情と演技にガイドされ、芸成功後には観客席から歓声が湧き上がります。

シリアスなシーンもありながら、ウィットに富んだ演出によって笑いに包まれる瞬間も多数あり、大人も子供も楽しめる内容になっているのです。

会場は、収容人数が300名ほどの、こぢんまりとしたアットホームな空間。パフォーマーの顔も間近で見える距離で鑑賞できるため、臨場感をたっぷり味わえます。

身近な素材で演出される神秘的な世界と日常風景

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ごく普通の暮らしに見え隠れする人間模様を描いた作品が多い「Phare, The Cambodian Circus」では、舞台装置や衣装は決して華美ではありませんが、作品の内容を十分に引き立ててくれるものとなっています。

例えば、人々の暮らしと密接な繋がりがある米を題材にした「白金」では、舞台上でも実際の米を多用したバラエティ豊かな演出がなされていました。

米は、祈りを捧げるための地上絵を描く画材になったり、雨のごとく降り注ぐライスシャワーになったり、はたまた私財を表現するライスボールになったり。容器に入れて打ち鳴らすことで楽器にもなるといった具合です。

まさに、米とともに繰り広げられるエンターテインメント。身近な素材のみで、これほどまでに多様な表現が可能なのだと感動を覚えるほど。

また、ちっぽけな米粒が集まることで、人々の暮らしや人生にこれほど多くの影響を及ぼすものになるのだということを、演出を通じて伝えてくれているようでした。

さらに、舞台を盛り上げてくれるのは、パフォーマーの後ろに控える演奏隊。伝統的な木琴や太鼓といった、カンボジアらしさが滲み出る民族楽器によるバックミュージックが、場面の移り変わりを見事に演出してくれるのです。

パフォーマー達と触れ合えば、さらに楽しいひとときに

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パフォーマー達のアクロバティックな演技や豊かな表情は、後から何度も見返して思い出に浸りたいもの。会場では、フラッシュ不可という条件つきで、写真撮影をすることが可能です。ぜひ、渾身の一芸をカメラに収めてみてください。

また、上演終了後には、舞台中央で出演者達と話をしたり、一緒に撮影をしたりできる時間も設けられています。パフォーマー全員と記念写真を撮影することはもちろん、気になる演者に声援の言葉をかけることもできますよ。

チケット購入時に頭に入れておきたい鑑賞席の構成については、中央前3列がA席、後3列がB席。サイド6列がC席と、3つのゾーンに別れています。

小規模でアットホームな会場であるため、B席の最後尾やC席端の席からでもパフォーマーの姿は十分に捉えられますが、A列前列なら表情まで間近で楽しむことができます。

11〜3月頃のハイシーズンには団体ツアー客で混み合うことが予想されるので、最前列でアップの写真を撮りたい場合などには、事前に席を押さえておくことをおすすめします。

チケットは、ホームページから日時・ゾーン指定で購入可能です。

厳かな遺跡巡りの後に楽しみたい、夜のエンターテインメント

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「アンコール・ワット」や「アンコール・トム」に代表される世界遺産「アンコール遺跡群」は、歴史の重みをずしりと感じさせる非常に神聖な存在。

荘厳な遺跡の雰囲気に触れた後は、一転して躍動感溢れる世界に浸ってみるのもよいのではないでしょうか?

カンボジアでショーといえば、アンコール王朝時代に思いを馳せられる「アプサラダンス」などの伝統舞踊が有名ですが、現代人を取り巻くテーマを描いたサーカスも一見の価値ありです。

息をのむようなアクロバティックな演技もさることながら、人間味溢れるストーリーがカンボジアらしい舞台背景に合わせて上演されるのも魅力的。

高揚感を味わえるだけでなく、旅の合間に生き方を見つめ直すきっかけにもなりそうです。

シェムリアップ観光の際にはぜひ、ナイトタイムのプランにサーカス鑑賞を加えてみてください。

■Phare, The Cambodian Circus
【ホームページ】https://pharecircus.org/
【住所】Ring Road, Siem Reap City, Kingdom of Cambodia
【電話番号】+855 (0) 15 499 480 / +855 (0) 92 225 320
※チケットの購入は、ホームページ、電話両方から可能です。
【上演時間】毎晩20:00〜※11月〜3月のハイシーズンには、月・木・土曜日限定で17:00〜の追加公演もあります。【料金】
A席:大人(12歳以上)$38、子供(5〜11歳)$18
B席:大人(12歳以上)$28、子供(5〜11歳)$15
C席:大人(12歳以上)$18、子供(5〜11歳)$10
※チケットや会場での物販などを通じて得られた利益は、サーカス団育成機関である

「Phare Ponleu Selpak」の無料教育、職業訓練、社会支援プログラムの運営費に還元されます。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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