エチオピア:食の歴史と現在の家庭料理

エチオピアはアフリカの角と呼ばれるアフリカ大陸の東端に位置している国である。そのためエジプトや西南アジア、地中海などの文化の影響を受けており、食文化への影響も同様に大きい。またコーヒーの発祥の地ともいわれている。

エチオピアの食の歴史

≪エチオピアの主食とその歴史≫

エチオピアの北部ではインジェラ、南部ではエンセーテと呼ばれる料理が主食として食べられています。

インジェラはテフというイネ科の植物を原料にしたパンケーキで、紀元前100年頃にはすでに食べられていたと言われています。インジェラは元々エチオピア北部の高原地帯で主に食べられていましたが、19世紀後半にアムハラ人がエチオピア南部まで進出したことによって高原地帯以外にもインジェラが広まりました。エチオピア南西部ではアムハラ人の侵略の影響で、現在でもインジェラの普及やテフの栽培に否定的な意見もあるようです。

エチオピア南部の主食となっているエンセーテはバナナに似た植物で、エチオピアの南部でのみ食用として栽培されています。バナナのように実を食べるのではなく、葉や茎に蓄えられたデンプンを発酵させ、それを調理したものが食べられています。エンセーテのデンプンは長期の保存が可能であり、1本のエンセーテの木から採れるデンプンの量が多いため、たくさんの人々を養えることから「飢餓を救う木」として重宝されています。
またエンセーテは木の全てが利用できる植物で、食用のデンプン以外にも皮を屋根の材料や燃料に、葉の部分は衣類や食器の素材として利用されています。

≪エチオピアのコーヒーの歴史≫

エチオピアはコーヒーの発祥の地と言われており、現在でもコーヒーの栽培が盛んに行われています。エチオピアの高原地帯ではコーヒーノキが自生しており、その果実や種子は古くから食用として用いられていました。人々はコーヒー豆を煮て食べていたと言われています。

エチオピアの一部ではこの習慣が現代にまで残っており、特に南西部に住んでいるオロモ族の間で子供や家畜の誕生のお祝いの際に、コーヒー豆と大麦をバターで炒めた「コーヒーつぶし」という儀式が行われています。

≪エチオピアの農業≫

エチオピアの首都アディスアベバでは年間の降水量が1179mmもあるため、乾燥に弱い作物を育てることができます。国土の約10%が農地として使用されており、また東アフリカの水の貯蔵庫と言われるほど河川に恵まれています。ですがその河川の水を農業にあまり使用していません。

主食であるインジェラの原料のテフはエチオピアでは重要な作物ですが、生産量の低さと自然の雨水のみで栽培されていることが多いため干ばつに弱く、アフリカの中でも人口の多いエチオピアの主食を支えるには不足していると言えます。

またエチオピアは地中海沿岸部を除いたアフリカの中で、伝統的に野菜の栽培が続けられている唯一の国です。エチオピアで栽培された農作物はその多くが輸出されており、畜産業と共に世界でも有数の輸出国となっています。

≪エチオピアの畜産業≫

エチオピアでは畜産も盛んで、農業と同じく輸出量がとても多いです。国内では牛やヤギ、ヒツジやニワトリ、ラクダといった多くの種類の肉が消費されています。

エチオピアでは生肉を食べる習慣があり、その起源は16世紀にイスラム教徒の軍隊がエチオピア高原に攻め込んだ頃だと言われています。エチオピア高原の住人たちは火を燃やすことによって軍隊に見つかることを危惧し、肉を焼かずに食べていたそうです。現在では生肉の中でも牛肉は最上級のものとされており、また火を通していないヤギやヒツジの右足と肝臓を提供することも丁重なもてなしとなっています。

エチオピアの現在の家庭料理

ここまでエチオピアの主食などを紹介してきましたが、他にはどういった料理が一般的に食べられているのでしょうか。料理ごとに紹介していきたいと思います。

≪主食≫

◇キッタ◇

オロモ族の間で食べられている、小麦粉に塩と水を加えたホットケーキのようなパンです。キッタにバルバレと呼ばれる赤唐辛子とニンニクやショウガ、塩と混ぜ合わせて粉末状にした調味料を加えたものは「キッタフルフル」という料理になります。

◇アベシャダボ◇

アベシャはエチオピアの、ダボはパンという意味で主にお祝いの際に食べられているパンです。サンデードゥケットという粉とイースト菌、水を混ぜて一晩かけて発酵させます。これをバナナの葉で包んで焼きます。直径70cmもある大きなパンで、家族で切り分けて食べるのが一般的です。少し酸味の効いた味が特徴的です。

◇フルフル◇

エチオピアの定番の朝ごはんです。作り置きして硬くなってしまったインジェラに辛めの味付けをし、やわらかいインジェラに乗せて食べます。これにさらに干し肉を加えたものを「コワンタフルフル」と呼びます。

≪肉料理≫

◇カイワット◇

インジェラのお供として食べられている料理で一番一般的な料理です。牛やヒツジの肉とタマネギなどをケベというバターとバルバレを加えて煮込みます。カイというのはアムハラ語で「赤」という意味で、その名の通り赤い見た目をしています。

◇ドロワット◇

鶏肉とタマネギなどをケベとバルバレと煮込みます。ワットの中でも一番辛く、アムハラ族の料理として知られています。主にお祝いの際に食べられている料理です。ドロとはアムハラ語で鶏を指しています。

◇アリチャ◇

エチオピア料理の中でも辛くない料理の一つです。作り方や材料はカイワットとほとんど同じですが、バルバレを使用せずに色を付けるためのターメリックが使用されています。

◇クットフォ◇

生の挽き肉を使用したグラゲ族の料理です。温めて溶かしたケベを生の挽き肉にからめるというシンプルなものです。塩気があり生臭さはあまりありません。ケベは冷えると固まってしまうので出来立てを食べるのが一番美味しいです。

≪野菜料理≫

◇シュロワット◇

庶民にとって肉は高価なため、シュロワットがもっとも一般的な家庭料理とも言えます。肉の代わりに豆を使用しており、バルバレやケベを入れることもあります。

◇ゴマンバスガ◇

グラゲ族の伝統料理の一つです。ゴマンというエチオピアのホウレンソウとミンチ肉をケベで炒めたものです。ケベの油っこさがありますが、それがインジェラととても良く合います。

≪その他≫

◇アサティブス◇

魚を丸々一匹揚げたからあげです。使用されているのはエチオピアで獲れる、テラピアという魚がほとんどです。レモンが添えられており、それを振りかけて骨ごと食べるのが一般的な食べ方です。

◇アイブ◇

牛乳から作られたチーズです。独特の臭いがとてもキツく、慣れるまでは食べづらいようです。ですが一度慣れてしまえば、ワットに欠かせないトッピングになります。

農業と畜産業に支えられたエチオピアの生活

エチオピアの食文化や家庭料理を紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。エチオピアには多くの民族が住んでおり、食文化も民族ごとに異なっています。こちらで紹介したのはエチオピア料理のほんの一部にすぎません。

世界有数の輸出国であるエチオピアは、農業も畜産業も盛んに行われており人口もアフリカの中では多い国です。ですが一方で、一般家庭では肉は高価であまり食べることができず、テフの栽培自体も人口に追いついていないのが実情です。

高原もあり、河川や土地に恵まれたエチオピア。まだまだ農業も今後成長の可能性を秘めており、どういった発展を遂げていくのか目を離せません。この記事を読んで、エチオピア料理に興味を抱いて頂ければ光栄です。是非一度エチオピアの食文化に触れてみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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