ソマリア:食文化と現在の家庭料理

ソマリアはアフリカ大陸の北東端の国で古くから交易中継地として利用されており、食文化も他国の影響を強く受けている。材料の名前がそのまま料理の名前として使用されていることもあるため、同じ料理名でも違った調理法の料理になっていることもある。

ソマリアの食文化

≪ソマリアの土地と交易≫

アフリカ大陸の東北部にある「アフリカの角」に位置するソマリアは、イエメンからやってきたソマリ族が住んでいる国です。アフリカでは珍しく、暮らしている民族はソマリ族のみの単一民族で、言語はソマリ語が使用されており、宗教もほとんどがムスリムで統一された国です。
ソマリアは国土の大半が砂漠となっており、ソマリ族はその中で遊牧民としてラクダと共に暮らしてきました。ソマリ族はソマリアだけではなく周辺国にも多く暮らしています。ソマリ族にとって国境は、自分たちとは関係なくしかれてしまった境界線なのです。

ソマリアは東端のほとんどが海に面しているため、交易の中継地点の一つとして利用されています。特にアラブやインドからアフリカの南部を繋ぐための重要な中継地として多数の取引が行われていました。ソマリアの発展に交易の中継地としての役割は大きく影響しています。

ソマリアでは大変高価な乳香が採れるため、こちらもソマリアの発展に一役買ったと考えられます。交易品の中には香辛料も多く扱われており、ソマリア料理もその香辛料を使用した料理が多く見られます。

≪ソマリアの農業と畜産業≫

交易以外にも、ソマリアでは農業も行われています。主にソマリア南部でジュバ川とシェベレ川が流れているゲド州やヒラーン州が農業の中心地となっています。栽培されているのは燕麦やトウモロコシ、豆などです。

河川のある南部とは対照的にソマリア北部は乾燥地のため牧畜が盛んで、ソマリアの人々は野菜よりもお肉を食べることの方が多いです。食べられているのはウシやヤギ、ラクダやヒツジがほとんどです。

また乳製品もソマリア族にとっては重要な存在であり、ラクダを引いて歩く人々はラクダの乳を一日に10リットル飲むともいわれています。ソマリアは気温が高いため、ミルクを腐らせないようにスバグと呼ばれる澄ましたバターに加工し、調味料として使用しています。その他にもミルクを発酵させて作られたものはジノーと呼ばれており、ヨーグルトのような味わいになっています。

≪ソマリアの食生活≫

ソマリアでは一日に三食たべられていますが、もっとも重要視されているのは昼食なため、朝食や夕食は軽く済まされることが多いです。

主食は南部で生産されている燕麦やトウモロコシを使用したものの他に、輸入したお米やイタリアの植民地時代の名残のパスタなども人気があります。ソマリアの食は地域によって様々な特徴があります。交易の影響でソマリア独自の料理に加えイエメンやペルシャ、トルコ、インド、イタリアなど多数の国の影響を受けています。

ソマリアの現在の家庭料理

交易の中継地として栄えたソマリア。食文化も交易の影響を大きく受けています。現在のソマリアの家庭ではどういった料理が食べられているのでしょうか。いくつかご紹介したいと思います。

≪主食≫

◇ムフォ◇

麦やトウモロコシの粉を使用して作られたソマリアのパンです。ナンのように平べったくソフトな食感が特徴です。ソスというカレー風味のトマトソースにつけて油をかけて手で食べるのが一般的なようです。ソスの中にバナナを入れてコクを加えることもあります。

◇ローティ◇

ローリというバゲットをちぎって、甘い紅茶と油をかけて染み込ませた料理です。朝ごはんを軽めに済ませるソマリアの人にとっては朝食のお供としてよく食べられています。

◇アンジェーロ◇

エチオピアのインジェラとほとんど同じ料理です。クレープのように薄く水分が多い状態で焼くため、ポツポツと穴が開いているのが特徴的です。おかずと共に食べることが多いですが、ローティのように甘い紅茶と油を染み込ませて食べられていることもあります。

◇バリース◇

カルダモンやシナモンとトマトで炊いたお米です。ソマリア風リゾットといったところでしょうか。ソマリアではお米がそのまま白いご飯として提供されることはほとんどなく、このバリースが一般的なようです。またバリースは基本的にお昼に食べられており、朝や夜に食べることはあまりありません。

◇バスト◇

ソマリアのパスタのことを指します。イタリアの植民地だった影響が大きく、茹で加減も絶妙です。ソースにはラクダのひき肉を使用したトマトベースのソースを使用していることが多いです。

≪肉料理≫

◇イリップゲル◇

ソマリア語でイリップはお肉、ゲルはラクダという意味です。ソマリアではラクダの肉が多く食べられています。その調理法も様々で、焼いただけのものもあればひき肉をソテーにしたもの、お肉を茹でた汁を使ったスープなど多種多様です。これらすべてを総称してイリップゲルと呼んでいます。

◇スカール◇

ソマリアでよく提供される、おかずの代表格ともいえる料理です。ジャガイモとひき肉を使用したソテーです。キャベツやトマト、タマネギといった具材が入っていることもあります。またバストと混ぜ合わせて食べることもあるようです。

◇ベール◇

ソマリア語でベールは肝臓を意味します。タマネギや青唐辛子などの野菜を加えてソテーされた料理です。ベールは朝食として食べられていることが多いようです。同じような料理で、腎臓を使用したものはケリヨと呼ばれています。

≪野菜、その他の料理≫

◇ホダラ◇

ホダラはソマリア語で野菜という意味です。お肉を食べることの多いソマリアですが、サラダも食べられています。使用されている野菜はレタスやトマト、タマネギなど他国のサラダと同じ物がメインで、その他に茹でたビーツやニンジン、青唐辛子などが入っていることもあります。

◇フル◇

ソマリアの朝食の定番料理です。白豆をトマトやタマネギと一緒に煮てから潰し、カレー風味に仕上げた料理です。ソマリアではバゲットのパンなどをちぎってフルの中に混ぜて手を使って食べることが一般的なようです。

◇アンブーロ◇

豆をバターと砂糖を加えて弱火でじっくりと煮込んだ料理です。ソマリアではアンブーロが夕食として食べられていることが大変多いです。豆の代わりにコムギやオオムギ、トウモロコシを使用する場合もあります。ゴマ油が加えられていることも。

◇マラック◇

お肉(主にラクダのお肉)のゆで汁のスープです。野菜などを加えることもありますが、具がないマラックが多いです。バリースやバスト、お肉料理を食べるときなど基本的にこのスープと一緒に食べています。砂糖や油で味付けされていることもあります。

交易と共に成長したソマリア

ここまでソマリアの食文化についてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。ソマリアの食文化の発展には交易が大きく影響していることが窺えます。
砂漠という厳しい環境と海や河川といった自然の恵みが交じり合った独特な土地をもつソマリア。ソマリ族の人たちはその中で創意工夫し、独自の文化を作り上げていったのでしょう。

ですがソマリ族は6つの氏族に分かれており、独立国になった後も権力争いなどから内戦が続いています。ソマリアの人々のほとんどは紛争と飢餓を経験し、今なお苦しんでいる人も多くいます。ソマリアの食事情は良いとは言い難い状態です。もし旅行を考えられている場合は情勢には十分注意してください。

魅力的な料理の多いソマリア。家庭で作れる料理も多くありますので、もし興味を持たれたのであれば、一度味わってみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

関連記事一覧