南アフリカ:食の歴史と現在の家庭料理

南部のアフリカ料理はその歴史上、さまざまな国からもたらされた多種多様な食文化が融合していることから「虹色の料理」と呼ばれることもある。しかしその基盤には南アフリカの先住民の食文化がある。

南アフリカの食の歴史

南アフリカにすむ民族は二つの大きなグループと複数の小さなグループに分かれています。一番大きな民族のグループはズールー族、スワジ人、コサ人、ソト人、ツワナ人、シャンガーン人などのバントゥー系民族です。彼らは2000年程前に南アフリカに定住し、農耕や牧畜、鉄の製造といった技術をもたらしました。現在でも穀物や野菜の栽培や、羊や山羊の放牧を主として生活しています。
小さなグループで特に有名なのはコイサン語族です。彼らは1万年も前から南アフリカに住んでいたと考えられています。南部アフリカの有色人種の大半はコイサン語族の子孫たちであり、その他には「ブッシュマン」と呼ばれる狩猟民族のサン人、「ホッテントット」と呼ばれていたコイコイ人がいます。サン人は狩猟民族として生活をしていましたが、コイコイ人は牧畜を習得することはあったものの農耕は行っていませんでした。

南アフリカの食文化はそれぞれの民族によって異なってきます。コイコイ人は家畜の肉と乳を使用したものを食べ、バントゥー系民族は農耕も行っていたためこれに加え穀物や野菜なども食されています。狩猟民族のサン人は野生動物や野生の根菜を食べています。これらの南アフリカの食文化は古代から始まり、現在まで受け継がれています。

南アフリカで最も伝統的で重要な食材は牛乳でしょう。牛は男性の貴重な財産とされ、結婚の際には結納品として妻に家畜が送られます。結婚後、男性は妻子のために牛や羊、山羊などの世話に力を入れ、多くの乳製品を得ています。息子が成長すると、その役割は息子が担います。

以前は冷蔵庫がなかったため、牛乳は大半がヨーグルトなどに発酵させていましたが、現在では冷蔵や流通によりサワークリームやヨーグルト、カードなどをスーパーマーケットなどで買うことも出来るようになりました。

南アフリカの食文化では家畜の肉や乳製品とともに鹿やダチョウ、インパラといった野生の動物の肉も使用されています。海産物としてはザリガニやエビ、マグロ、ムール貝や牡蠣、イカやサバ、ロブスターなど豊富な種類が好んで食されています。

またヨーロッパから伝来したリンゴやブドウ、マンゴーやバナナ、パパイヤやアボカド、オレンジや桃、アプリコットといった多くの果実も使用されています。週末には南アフリカ流のバーベキューが食べられています。その際にともにトウモロコシで作られたお粥が提供されることもあります。

南アフリカの現在の家庭料理

ここまで南アフリカではどういった民族がどのような物を食べているのか、またどのような食材が流通しているのかご紹介しました。では南アフリカでは現在はどのような料理が一般的に食べられているのでしょうか。ご紹介していきたいと思います。

≪主食≫

◇パップ◇

南アフリカの中でもよく食べられている主食のです。南アフリカではトウモロコシを主食として食べることが多く、パップもその中の一つです。乾燥させたトウモロコシを練って炊くというシンプルな料理です。付け合わせに野菜が盛られていたり、シチューやお肉などと食べられたりすることも多いです。

◇バニーチャウ◇

南アフリカのダーバン地方で主に食べられている料理です。パンをくり抜いてその中にカレーを流し込んだもので、南アフリカ流のカレーパンといったところでしょうか。リーズナブルな上にボリューム満点です。アパルトヘイト時代にインド系のアフリカ人が考案した料理だと言われています。

≪肉料理≫

◇ボーアウォース◇

南アフリカのソーセージで、とても長くグルグル巻きになっています。主に牛肉が材料として使用されていますが、鶏やラム肉、豚肉で作られていることもあります。これをパンに挟み、タマネギなどを乗せた南アフリカ流のホットドッグはボーリーロールと呼ばれ、親しまれています。

◇ビルトング◇

南アフリカのビーフジャーキーです。他国のビーフジャーキーはお肉を切ってから干すのに対し、南アフリカではお肉を干してから切ります。手軽に食べられるため、南アフリカでも人気の一品です。

◇ウォーターブロメジエブレディ◇

この料理名はアフリカーンス語からきています。羊肉とジャガイモやタマネギに塩コショウとニンニク、そして南アフリカで栽培されているレースソウの小さな花が入っている独特な料理です。白いご飯とともに提供されることが多いです。

◇ボボティ◇

南アフリカの伝統的な料理の一つです。17世紀頃にアジアからさまざまな香辛料が伝わり、この料理が生まれたと言われています。挽き肉にナツメグやターメリック、シナモンなどの香辛料をふんだんに使用し、アーモンドと卵の黄身をかけてオーブンで焼きます。香辛料がきいたスパイシーな一品です。

≪野菜、その他の料理≫

◇ポイキ◇

ポイキなしでは南アフリカの料理は語れないというくらい代表的な料理です。各家庭にポイキ用の鍋が常備されているほどです。大きな鉄製の鍋にさまざまな野菜やお肉をたくさん入れ、ワインを加えて煮込んだ南アフリカのシチューです。

◇シェパードパイ◇

南アフリカの家庭の定番料理です。トウモロコシやマッシュポテトの中に牛の挽き肉を加えてオーブンで焼いたものです。グラタンやラザニアなどに似た料理で、南アフリカの家庭ではよく食べられているようです。

◇イミフィノ・パティ◇

南アフリカで食べられている揚げ物で、イミフィノとは野菜を意味しています。パイ生地の中に緑色の野菜を入れて揚げた料理です。家庭によって具材に違いはありますが、一般的にはホウレンソウやテーブルートが使用されていることが多いです。

◇フェトクック◇

南アフリカ風のドーナツのことです。オランダ語で太めのクッキーという意味で、特に南アフリカに移住してきたオランダ人の間で人気があります。ジャムやハチミツといった甘いものとともに食べられることも多いですが、炒めた挽き肉などが入った甘くないものも食べられています。

多種多様な食文化が混在する南アフリカ

ここまで南アフリカの食文化や料理をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。南アフリカは古くからこの地に住む人々の食文化に加え、歴史上さまざまな国の人々がこの国にやってきて多くの食文化をもたらしました。
それらは南アフリカの食文化に多大な影響を与え、従来の食文化と融合していきました。

多くの国の文化が流入してきた南アフリカですが、その基盤になっている古くからの文化は消えることなく現在まで受け継がれています。これは現地の人々が他国の文化を取り入れつつも自分たちの古くからの伝統的な文化を大切にしてきた結果と言えるでしょう。

南アフリカだけではなくアフリカ全土に言えることですが、アフリカはまだまだこれから発展していく国が多く存在します。現在も他国から多くの文化がアフリカへと伝えられています。
アフリカの人々はこれらの文化をどのように吸収して進化を遂げていくのでしょうか。またその中で古くからの伝統がどのようになっていくのか想像がつきません。

まだまだ多くの可能性を秘めたアフリカ。この記事を読んで南アフリカを含めたアフリカの国々に興味を持って、その文化に触れてみようと思っていただければ幸いです。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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