ルパン三世:これまでルパンが盗んだもの

日本の国民的アニメ「ルパン三世」。怪盗ルパンの孫、ルパン三世が主人公となり、様々なお宝を盗んでいく過程をコミカルに、時にはシリアスに描いた作品だ。
原作はモンキー・パンチの漫画であり、1971年にテレビアニメシリーズの放送が開始。当初はあまり話題にならなかったが、じわじわと人気を集めると1977年にはテレビアニメシリーズ第2期が放送される。その後も2019年現在までにテレビアニメシリーズは5期まで放送され、世代を超えて愛されている。また、約10作におよぶ映画や数々のテレビアニメオリジナルの作品が登場しており、アニメ史に残る人気を誇っている作品と言えるだろう。本作において重要な要素は泥棒、つまりはルパンが何かを盗むという点だ。作中でルパンが盗んだものは数知れず、その中にはお宝と呼ぶに相応しいものからガラクタ同然の無価値なものまで多岐に渡る。今回はこれまでにルパンが盗んだものを10個取り上げ、本作の面白さや魅力に迫りたいと思う。

大江戸警備人別帳

果たしてこれがお宝なのかと言いたいネーミングのこちら。テレビアニメ版にて、国際泥棒選手権という大会の優勝賞品として登場したお宝である。中には大江戸八百八町にある奉公所や関所などが記されているのだが、はっきり言ってお宝としての価値はまるでない代物。

では何故、このお宝?をルパンが狙ったのかというと、ただ単に優勝賞品だから、というこれだけの理由だった。優勝賞品=価値があると踏んだのだろう。作中では大江戸警備人別帳を巡ってルパンと五ェ門が対決する様がコミカルに描かれていたが、国際泥棒選手権というトリッキーな大会に目が行き、はっきり言ってこのお宝などオマケのような存在になっていた。

インペリアル・ステート・クラウン

インペリアル・ステート・クラウンは、かのヴィクトリア女王も使い、英国の象徴とも言われている豪華な王冠。これぞお宝という代物だが、盗む動機は不二子に被せたら似合うだろうという下心のみからであった。1度はお宝強奪を失敗してしまうが、その後のメアリー王女の結婚式で無事奪取に成功。最後はアレコレあり不二子に愛想をつかされたルパンであったが、その際、お宝自体への執着を微塵も感じさせなかった。このさっぱりとした後味がルパンらしいエピソードといえるだろう。

考えない人

ロダンという彫刻家が制作したブロンズ像「考える人」は誰もが知る有名な芸術作品である。ルパン三世では、そんな名のある美術品のパロディ作品までもが登場した。それが「考えない人」というブロンズ像である。

これだけでもなかなかにコミカルなのに、なんとルパンはその像を狙ったことがある。その真相は考えない人の像の内部に本当のお宝である「ブラック・パンサー」というエメラルドを隠したためだったのだが、その事実を知らなければこんなものを狙うルパンは変だと思わざるを得ないだろう。
余談だが、この「考えない人」は本物の「考える人」とは対照的なボーっとした間抜けな顔をしており、それはもう対比するのも憚られるような像であった。

古代エジプトのハスの種

名前だけ聞くと真面目なお宝かと思うだろうが、このお宝、実は水虫の特効薬である。ルパンは長年悩まされているらしい水虫を治すために、このお宝を狙った。一応、作中ではこの種は世界に3粒しかないといわれていたのでレア度は高いのだが、如何せん水虫の特効薬である、変であることには変わりない。

この物語の最中に、ルパンは水虫が原因で銭形警部に捕まったり、不二子に売られたりしそうになるなど割と散々な目に遭っている。次元にいたっては水虫なんてマルセイユの太陽で焼けとまで言っていた。とんでも理論が展開するなど終始ネタのようだが、この物語自体は少し重めな話になっているので必見である。

未来を写すカメラ

お宝というと宝飾系のイメージが強いかもしれないが、こんな面白い代物もある。競馬で負け込んでいたルパン一行。その時、予想を的中させまくる怪しい2人組がカメラを持って不審な行動を繰り返していたことに気付き、そのカメラに何か秘密でもあるのでは?と狙いを定めたことが、今回の盗みを働くきっかけだった。カメラを手にしたルパンが試し撮りをしてみると、そこには未来が映し出された。そうしてカメラの秘密を知ったルパン達は、国家機密の問題へと巻き込まれていくというお話である。

この「未来を写すカメラ」は過去を写すカメラの開発中に、たまたま出来た産物だったらしいのだが、偶然でこんな凄いものが作れるとはさすがアニメの世界。これまで宝石や本当に価値のあるものをメインに盗んできていたが、人の未来を知れるということもある種の人にとったら相当に価値のあるものだろう。盗んだルパン本人は、人の未来など知ったらつまらないとでも言いたげに、そこまで執着していなかったが。

イヴのリンゴ

旧約聖書に登場する最初の人間、アダムとイヴ。2人が口にした禁断の果実がリンゴであり、この逸話は多くの人が知っているだろう。本編に登場し、ルパンが狙った「イヴのリンゴ」とは、そうした禁断の果実ではなく、純金のリンゴ型の容器である。入れ物そのものも純金ということで価値はあるのだろうが、実はその容器の中にこそ、真のお宝が隠されていた。それが「媚薬」。しかも数々の美女達がこぞって愛用したという。そんな媚薬を欲しがるルパンの下心は相変わらずだ。

しかしこの媚薬、通常で言うところの惚れ薬的な媚薬ではなかった。所謂ダイエット薬みたいな代物で、真相を知ったルパンはさぞやガッカリしたことだろう。純金のリンゴ型の容器を手に入れただけでも十分に価値のあるものではあるが、ルパンの下心が挫かれたお宝であった。

吉良上野介の入れ歯

テレビシリーズでも面白い回だったと評判の「作戦名は忠臣蔵」というお話。ここではルパンは1人の幽霊からとある依頼を受け、お宝奪取に挑む。その幽霊の正体は「吉良上野介」という江戸時代の旗本だった。実際に存在した人物である吉良上野介を登場させ、さらには彼の名が有名になった「忠臣蔵」という事件を物語の作戦名に設定するなど、史実をパロディにした面白い回である。

さて、そんな歴史好きも心が高鳴った本作でルパンが狙ったのは「上野介の財宝」。これだけ聞くと名刀が眠っているのかとか、大判小判がジャラジャラ出てくるのかと期待に胸を躍らせてしまうが、蓋を開ければその財宝とは「入れ歯」であった。これにはさすがのルパンも拍子抜けしていたが、それも含めてこの回は非常に面白い話なので見て損はないだろう。

リベルタスの王冠

2015年に放送されたテレビアニメシリーズ第4期では、サンマリノ共和国の国宝であるリベルタスの王冠を狙う。このためにルパンはわざわざサンマリノの財閥の会長、レベッカと結婚までしていた。久々に始まったテレビアニメシリーズの第1話でいきなり結婚するものだから、待ち望んでいたファン達は大層驚いたことだろう。最後の最後でやり手のレベッカに王冠は取られてしまったが、可愛い女の子が満足そうにしていたためルパンもあまり悔しさは滲ませてはいなかった。

とはいえ物語はレベッカの登場で幅を広げ、リベルタスの王冠以外にも様々な謎や裏の動きなどの展開も見せる。ここから始まる新たな物語のスタートを担う、様々な伏線を備えたお宝であった。

ルパン対奇人二面相

スペイン出身の「サルバドール・ダリ」という有名な画家をご存知だろうか。自分を天才と自称し、数々の名画を残すと共に様々な奇行や言動を残してきた人物である。そんなダリをモデルにした「ダレ」という芸術家がこのお話の最大のキーパーソン。なんとダレはルパンをおびき寄せ、捕獲する。お宝を盗む側のルパンが、まさかの盗まれる側になるというシュールな展開となったのだ。

このお話では一貫してシュールな展開が合い次ぐ。ダレはシュールなものにこそ芸術的価値があると思い込み、シュールな作品をこよなく愛しているし、盗んだルパンを燻製にして風見鶏にするなどの奇行も見せた。燻されたルパンはなんとシュールなことか。というか、ルパンがお宝になる日がこようとは誰が想像しただろうか。意表を突かれたお宝が登場した回であった。

人々の心

最後はやはりこれだろう。ルパンが最も多く盗んだであろう「人の心」。これは映画「カリオストロの城」にてルパンが盗んだもので、「奴はとんでもないものを盗んでいきました、あなたの心です」という銭型警部の言葉はルパン三世史に残る名言として広く浸透した。

「カリオストロの城」は国営カジノの金庫から大金を盗んだことをきっかけに、カリオストロ公国に足を踏み入れ、そこで国を支配するカリオストロ伯爵と対峙するというストーリーだ。ターゲットとなるのは財宝と公国の皇女、クラリス。クラリスはカリオストロ伯爵に無理やり結婚を迫られ、逃亡していたところをルパン達に助けられたのだが、実は幼い頃にルパンと出会ったことがある。クラリス本人は忘れていたが、ルパンは彼女の持っていた指輪を見て思い出し、何かと彼女を助けようとするのだった。その優しさや真摯な態度に心打たれ、クラリスはルパンに心を奪われた、という展開である。

クラリス自身、自分の恋心を自覚しておらず、最後に銭形警部の発言によって意識したくらいだったが、健気で可愛らしい少女の心までをも盗むとはルパンもスミに置けないものだ。確かに劇中のルパンは普段の適当な態度とは打って変わり、真剣にクラリスに対峙している。保護者としての意識もあったのだろうが、やはり困っている女性を適当には扱えないのだろう。ここにルパンの紳士的側面が垣間見られ、やはりルパンは格好良いと思わされてしまう。

と、これがルパンが盗んだ「人の心」の代表的な1つだが、盗んだのはクラリスの心だけではない。他にも不二子やテレビアニメシリーズ第4期に登場するレベッカの心も盗んでいる。

不二子は着かず離れず、ルパンの味方にもなるし敵にもなる、正体不明の女だ。いともあっさりルパンを裏切り敵に売ることも辞さない反面、ルパンが本気で死にそうな時やピンチの時はしっかり助ける。お宝のみを目的に動く利己的主義者だとしても、不二子はやはりルパンに心を奪われているようだ。それは真実の愛、というものとは異なるだろうが、同じ泥棒仲間として、これまで幾度となくピンチを切り抜けてきた同志として、また、ルパンから寄せられる愛や言動の数々など、全部をひっくるめて信頼していることは間違いない。だからこそ不二子は何かとルパンの傍にいるのだろう。

レベッカに関しては、不二子にも負けない美貌と富を持つスーパーセレブ。そんなセレブな生活に飽き、スリルを求めてルパンと結婚したという背景を持つが、とある1件で本気でルパンに惚れる。ルパンの周囲に必ずいる不二子とは度々敵対するものの、泥棒的にもルックス的にも不二子の方が1枚上手。しかし負けん気の強さから負けは認めず、ひたすらに頑張るのであった。テレビシリーズ第4期のヒロインという立場であり、なんだかんだと周囲を振り回しながらもルパンの本当の妻でありたいと願い、彼の元に居続けるレベッカであった。

代表的な女性は不二子とレベッカに絞られるが、もっと追求するならルパンは銭形警部の心も盗んでいると言える。もはや腐れ縁とまでなっている2人だが、ルパンに心を掴まれていなければ、そもそもこんなにルパンに執着しないはずである。ある意味でルパンが1番ガッツリ心を盗んだ相手は銭形警部かもしれない。銭形警部も、ルパン三世という人物に心底惚れ込んでいるのだろう。

さいごに

これまでルパンが盗んできたお宝を10個、ピックアップしてみたがいかがだろうか。まるで価値のないガラクタ同然のものから、真のお宝と呼べるような代物まで多種多様であっただろう。中にはルパン自身がお宝になってしまったりと、とにかく奇想天外なお宝のオンパレードであった。

このバラエティに富んだお宝のおかげで物語はよりコミカルに、深みを増す。おちゃらけた印象であったり、時には深刻な印象であったり、物語も様々な顔に変化するのだ。お宝ありきのルパン三世、ルパン三世ありきのお宝、こんな物語を是非楽しんでいただきたい。

ルパン三世NETWORK

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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