家庭用コンセントの世界統一規格は困難だが、電気自動車用コンセントは統一が間近に

家庭のコンセントにきている商用電源の電圧および周波数には一部例外があるものの、世界ではおおむね旧大陸と新大陸で分かれている。電気プラグの形状規格になると主なもので8つもあり、複数の規格がある国も少なくない。それはグローバルスタンダード(国際標準規格)が存在しないためであり、海外旅行者には不便、家電メーカーには製品輸出のコストアップをもたらしている。
しかし、現状で主な規格が3つある電気自動車(EV)の急速充電器用プラグは2018年、中国と日本の業界団体が規格統一で合意した。今後欧米が合流すれば世界統一規格が実現しEVの普及を後押ししそうだ。

■電源の電圧には、植民地分割の歴史が反映

家庭で、テレビや冷蔵庫や掃除機など、家電製品に電気を供給するのに使われるコンセント(商用電源)。その電圧と周波数は、世界的にみれば「旧大陸(ヨーロッパ、アジア、アフリカ、オセアニア)」と「新大陸(南北アメリカ)」の2つのグループに分かれる。
旧大陸の電圧は「220~240V」と高く、電気ポットのお湯はすぐに沸くが、感電事故が起こりやすい。周波数は「50Hz」が大部分を占めている。新大陸の電圧は「100~127V」と低く、感電事故は比較的少ない。周波数は「60Hz」が大部分を占める。

だが例外もある。例外の国が多いのは南米大陸で、ボリビア、パラグアイ、ウルグアイ、アルゼンチン、チリ、仏領ギニアはヨーロッパと同じ「220~240V/50Hz」、ペルーとガイアナは「220~240V/60Hz」、ブラジルは州や地域ごとに「100~127V/60Hz」と「220~240V/60Hz」が混在している。そのため誤って火災が起こらないように、政府は引っ越しをする人に注意を呼びかけている。

北中米はほとんどの国が「100~127V/60Hz」だが、旧英国領のジャマイカだけは「100~127V/50Hz」になっている。

旧大陸での例外国は、ヨーロッパはロシアも含めて皆無で、オセアニアも皆無。アフリカは「100~127V/60Hz」のリベリアと「100~127V/50Hz」のマダガスカルが例外。アジアではサウジアラビアと台湾が「100~127V/60Hz」、韓国、北朝鮮、フィリピンが「220~240V/60Hz」、日本については西半分が「100~127V/60Hz」で東半分が「100~127V/50Hz」という特異な形になっている。
世界の商用電源地図が「220~240V/50Hz」と「100~127V/60Hz」に二分されているのも、それぞれに例外があるその理由も、19世紀の列強の植民地分割の歴史が深く関係している。

1890年代、欧米では大型の交流発電機を備えた火力、水力の発電所が次々と建ち、電気の時代が始まった。街灯はガス灯から電灯に変わり、工場の動力も電気になり、街には路面電車が走り始める。当時の交流発電機のシェアはドイツ製(シーメンスなど)とアメリカ製(GEなど)が二大勢力で、ドイツ製の発電機の標準規格は「220~240V/50Hz」で、アメリカ製の発電機の標準規格は「100~127V/60Hz」だった。

ドイツ製の発電機は英国、フランス、イタリア、帝政ロシアなどヨーロッパ諸国全てが導入した。当時は「列強の世界分割」の時代だったので、アフリカやアジアにあるヨーロッパ諸国の植民地も、オーストラリアなど英連邦諸国も、みな揃ってドイツ製の発電機を採用した。ただし北米のカナダは隣国のアメリカ製を採用している。アメリカ製の発電機はアメリカ、カナダと中南米のラテンアメリカ諸国が採用したが、南米には旧宗主国のスペインやポルトガルに合わせてドイツ製を採用した国があった。例外国のリベリアは、1847年にアフリカ系の解放奴隷がアメリカからアフリカに帰って建国した歴史的経緯があり、アフリカ大陸で唯一アメリカ製を採用している。1932年に建国したサウジアラビアはアメリカ資本が石油資源の開発を進めた関係もあり、アメリカ製の発電機が採用された。

日本はドイツ製とアメリカ製を両方、東西に地域を分けて導入した。電圧は100Vに合わせたが、周波数は発電機や電力メーターを取り替えない限り変更できないので、東の50Hz地域と西の60Hz地域に分かれるという世界でも珍しい国になった。なお州や地域によって電圧が異なるブラジルでも周波数は60Hzに統一されている。

945年まで日本の植民地だった台湾、韓国、北朝鮮は当時、日本の西部に合わせてアメリカ規格の100V/60Hz発電機が導入されたが、台湾はそのまま使い続け、独立後の韓国、北朝鮮は周波数はそのままに電圧をヨーロッパやソ連に合わせて220~240Vに変更した。1950年に朝鮮戦争が勃発する以前の韓国が北朝鮮から電力の供給を受けていたという事情もある。フィリピンはアメリカに統治されていたので60Hzのアメリカ製発電機を採用し、後に電圧を変更している。
第二次世界大戦後、中国など社会主義諸国は盟主のソ連に合わせてヨーロッパと同じ「220~240V/50Hz」を採用した。

■電気プラグは欧州連合が統一へ動いたが

このように世界の商用電源の電圧や周波数は、19世紀末にドイツ製発電機は旧大陸、アメカ製発電機は新大陸と地域を分けあったことと、当時ヨーロッパ、日本、アメリカが世界を分割した「帝国主義の遺産」で、現状では2パターンの電圧、2つの周波数がそれぞれ分立している状態にある。海外旅行や電化製品の輸出では不便をきたしているが、統一しようという動きは出ていない。
もう一つ、海外旅行や電化製品の輸出で不便をきたすものに「電気プラグの形状」がある。

このうち多数派は「TypeA」「TypeC」「TypeG」「TypeI」の4種類で、大まかに言えば「TypeA=南北アメリカ大陸と日本」「TypeC=ヨーロッパ大陸」「TypeG=英国と旧英国植民地」「TypeI=オセアニア」に分けられる。
角形3つ角穴の「TypeG」は、英国、アイルランド、ケニア、香港、シンガポール、マレーシア、インドなどで使われる「大英帝国の遺産」のような英国規格の電気プラグ。長方形2つ角穴の「TypeA」は電気プラグの「北米規格」で、使われる国は過去にアメリカ製の発電機を導入した経緯があり電圧が「100~127V」の国と、ほぼ一致する。
丸型の2つ穴の「TypeC」は電気プラグの「ヨーロッパ規格」で、英国、アイルランドを除く欧州連合(EU)加盟国では広く使われている。なぜなら1971年9月にCEE(欧州国際規格委員会)が規格の統一に乗り出したためで、その理由は「安全性」だった。ヨーロッパ諸国の電圧は220~240Vと高く、100~127Vと比べると感電死する可能性や、何か物が挟まると火災を起こす可能性が高くなるので、人間の指や異物が触れないように密着型の「TypeC」プラグが考案、推奨された。別名を「EUプラグ」と言う。それでも域内では円形3つ丸穴の「TypeE」や円形2つ丸穴の「TypeF」がまだ残っており、EUが進めている「TypeC」による統一はまだ道半ばと言える。
オーストラリア、ニュージーランドの電気プラグは四角形3つ角穴の「TypeI」に統一されている。アジアは同じ国内で規格が乱立気味で、中国本土は「TypeA」、「TypeC」と「TypeI」が混在し、インドは「TypeC」と「TypeD」が混在。韓国は「TypeA」、「TypeC」と「TypeF」が混在する。そのため、アジア諸国では異なる電気プラグを接続するためのアダプターがよく売れている。

電気プラグはEU、オセアニアで地域統一が図られたものの、規格の世界統一は電圧、周波数のそれ以上にほど遠い。

■電気自動車用は規格統一に向けて大きく前進

21世紀後半にはガソリン車やディーゼル車を抜いて主役に躍り出るとみられている電気自動車(EV)。現在のPHV(プラグインハイブリッド)には家庭用の商用電源を直流に変換して充電できる車種もあるが、100V電源でフル充電まで約14時間もかかるなど、あまり実用的とは言えない。長くても1~2時間でフル充電できる「急速充電器」を備えた充電ステーションが現在のガソリンスタンド並みに整備されることが、今後のEV普及には欠かせないと言われている。

その急速充電器とEVをつなぐプラグ形状は、現状では欧米の「コンボ」(アメリカとヨーロッパでも形状が異なり、テスタ・モーターのEVはまた別規格)、中国の「GB/T」、日本の「チャデモ」の3規格が並び立つ状況になっている。最大勢力は中国のGB/T(シェア87%)で、日本のチャデモ(シェア7%)がそれに次ぐ。

このままでは商用電源のように地域・国ごとに規格がバラバラになり、余計なコストがかかってEVの普及を阻むと懸念され、2018年8月、中国と日本の業界団体がGB/Tとチャデモの規格統一に合意した。これはEV用充電プラグの世界規格統一への大きな前進で、シェア3%程度でまだ少数派の欧米のコンボや独自規格のテスラが「GB/T=チャデモ連合」に合流すれば統一が成り、世界の自動車メーカーはEVをより低いコストで生産・輸出しやすくなる。

スマホのデータ通信がこれだけ発達したのは、安く利用できる「Wi-Fi規格」のおかげ。無線LANの「IEEE802.11」規格や「ブルートゥース(Bluetooth)」も同様だ。スマホメーカーは「グローバルスタンダード(国際標準規格)」があることによる恩恵をたっぷり受けている。

商用電源から電気を得る家電製品の電源部分の規格統一、グローバルスタンダード化は望み薄だが、電気自動車(EV)の電源部分は近い将来に期待できるところまできた。充電ステーションの急速充電器用のプラグの違いなど気にすることなく、EVのユーザーは国境を越えて自由に世界をドライブでき、メーカーはより低コストでEVを生産できるという日は、大きく近づいている。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

関連記事一覧