エクス=アン=プロヴァンス(フランス):近代絵画の父、セザンヌの故郷

近代芸術の父といわれる偉大な画家「セザンヌ」。そんなセザンヌが生まれ、また活動の拠点とした街がフランス南部に位置する街「エクス=アン=プロヴァンス」である。恵まれた大自然と穏やかな空気、湧き出す多くの噴水から、セザンヌが活動の拠点として選んだ理由もわかるだろう。セザンヌとエクス=アン=プロヴァンスの魅力を紹介しよう。

近代絵画の父「ポール・セザンヌ」

「ポール・セザンヌ(Paul Cezanne)」は、ポスト印象派の画家として知られるフランス絵画の巨匠です。19世紀後半から20世紀初頭にかけて、20世紀絵画に大きな影響を及ぼした事実から「近代絵画の父」と呼ばれることもあります。1839年、フランス南部のエクス=アン=プロヴァンスに生を受けたセザンヌ。その父親は商才に満ちた銀行家だったといいます。成功者の父の元、成長を遂げたセザンヌは1861年にパリへ移住しました。

親友であったフランスの小説家「エミール・ゾラ(Emile Zola)」の助言により、大学を中退してパリへと向かったセザンヌ。「カミーユ・ピサロ(Camille Pissarro)」や「クロード・モネ(Claude Monet)」など、後々世界に名を馳せる偉大な画家との出会いも、パリでの大きな出来事でしょう。印象派としての地位を築くも、その考えは徐々に変化。1879年以降、拠点を故郷のエクス=アン=プロヴァンスへ戻し、制作活動を続けました。

(Public Domain /‘The Card Players’by Paul Cezanne. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)
(Public Domain /‘Grandes Baigneuses’by Paul Cezanne. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

「カード遊びをする人々(The Card Players)」や「大水浴図(Grandes Baigneuses)」はセザンヌの代表作といえるでしょう。しかし、セザンヌの作品が評価され始めたのは晩年のことだといいます。評価を確立するまでの葛藤は、非常に大きなものだったのでしょう。没後もその評価は高まり続け、「パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)」や「アンリ・マティス(Henri Matisse)」も、セザンヌの作品に多大な影響を受けたといわれています。

セザンヌが生まれ、そして愛した街「エクス=アン=プロヴァンス」

「エクス=アン=プロヴァンス(Aix-en-Provence)」は、フランス南部に位置する、セザンヌが生まれ、そして晩年を過ごした街です。「エクス(Aix)」と略されることもあります。プロヴァンス地方の中心地として発展を重ねてきたエクス=アン=プロヴァンスは現在、学術・芸術都市としての地位を獲得しています。セザンヌが愛した街には、叡智と芸術の息吹が力強く根付いているのです。彼が活動の中心地として選んだのも納得でしょう。

街の名前に入る「エクス」とはラテン語でアクア、すなわち水が転訛したもの。その名前が象徴するように、エクス=アン=プロヴァンスの街中には、無数の噴水が設置されています。そのどれもが個性的な佇まいであり、街を巡る楽しみの一つといえるでしょう。

毎年夏におこなわれる「エクス=アン=プロヴァンス音楽祭(Festival d`Aix)」は世界的に注目を集める音楽祭。期間中は街中が音楽祭のムードになっていて、世界中のオペラやクラシック好きがこの日を楽しみに集まります。

エクス=アン=プロヴァンスの見所

エクス=アン=プロヴァンスは近代的な街並みというよりも、歴史を重ねた穏やかな雰囲気が漂う、牧歌的な街並みが特徴です。水の都とも呼ばれるくらいに豊富に設置された噴水や、目抜き通りである「ミラボー通り」。荘厳な姿をたたえる「サン・ソヴール大聖堂」や晩年セザンヌが過ごした「セザンヌのアトリエ」など、見所は豊富でしょう。エクス=アン=プロヴァンスで見逃せない、多くの見所を紹介していきましょう。

数世紀に及ぶ建築の集大成「サン・ソヴール大聖堂」

「サン・ソヴール大聖堂(Cathedral Saint-Sauveur)」は、5世紀に建造されたエクス=アン=プロヴァンスの旧市街に佇む大聖堂です。建造後、幾度もの改修を経てきたという大聖堂が現在の姿になったのは17世紀のこと。その事実を証明するように、造りの中には多くの建築様式の姿が散見されます。ロマネスクにバロック、ゴシック様式の入り混じった、個性豊かな姿は必見でしょう。ベージュの外壁にゴシック様式の尖塔がひときわ映えます。

サン・ソヴール大聖堂の中でも最も熱い視線を集めているのは、12世紀にロマネスク様式で建造されたという大回廊でしょう。美しく滑らかに施された円柱と装飾の数々は、まるで本当に生命が吹き込まれているかのような躍動感。近くで目にすればその想像は強い確信に昇華するでしょう。目線の先に広がる、鮮やかな庭の緑にも注目してみてください。

「燃ゆる茨(いばら)」は、サン・ソヴール大聖堂の祭壇に設置された鮮やかな三連画です。場を支配する圧倒的な存在感には、息を飲むでしょう。ドーム状の天井に設置された丸窓から注ぐ陽光と、ステンドグラスを通して鮮やかに切り取られた優雅な空間では、時間の流れは一層穏やかなものとなります。緑を基調としたパイプオルガンにも注目でしょう。ガイドツアーも開催されていますので、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

エクス=アン=プロヴァンスの目抜き通り「ミラボー通り」

「ミラボー通り(Le Cours Mirabeau)」は、エクス=アン=プロヴァンスの旧市街に面する、最も賑やかな大通りです。夏には豊富な街路樹「プラタナス(Platanus)」の葉が茂り、鮮やかな姿を覗かせます。レストランやカフェ、ホテルも多く並んでいるため、滞在拠点とするにも最適でしょう。一本路地を入れば、そこには静寂とした時間が流れる旧市街の街並みが広がります。

エクス=アン=プロヴァンスの「エクス」は、ラテン語のアクアが転化したもの。その名前を象徴するように、ミラボー通り周辺には多くの噴水が設置されています。「4頭のイルカの噴水(La Fontaine des Quatre Dauphins)」は、1667年に設置された街を代表する有名な噴水です。中心に堂々とそびえるオベリスクと、それを囲うように配されたイルカの競演は一見の価値ありでしょう。種類豊富な噴水の姿、思い出を残すことをお忘れなく。

セザンヌの生活を垣間見る「セザンヌのアトリエ」

「セザンヌのアトリエ(Atelier Cezanne)」は、エクス=アン=プロヴァンス郊外に建てられた、セザンヌが晩年を過ごした場所です。銀行家であった父が購入したという広大な別荘地の庭に建造されたセザンヌのアトリエは、豊かな光が差し込む大きな窓が印象的。アトリエ内部は、セザンヌが過ごした当時の生活様式がそのまま反映されています。近代絵画の父と呼ばれたセザンヌの葛藤や栄光を、あなた自身で体感することができるでしょう。

「サント・ヴィクトワール山(Montagne Sainte-Victoire)」は、セザンヌの作品にも登場する、石灰質の大山です。セザンヌのアトリエから、その見事な姿を望むことができるでしょう。ハイキングツアーも開催されているので、実際に足を運んでみるのもよいかもしれませんね。エクス=アン=プロヴァンスを愛したセザンヌの軌跡。街中にはセザンヌの銅像や、名前をモチーフにしたプレートも設置されています。足元に注目してみてください。

自然と芸術、エクス=アン=プロヴァンスの名物

「パヴィヨン・ド・ヴァンドーム(Pavillonde Vendome)」は、旧市街の外れに位置する貴族の館です。17世紀に建造された、ヴァンドーム公の見事なお屋敷。その内部は現在美術館として一般に開放されています。館に施された装飾は非常に壮麗、絵画や装飾品、贅を尽くした家具や調度品にも注目でしょう。また、館の前面に広がるフランス式の庭園も必見です。美しく整備が行き届いた艶やかな庭園は、一見する価値が大いにあります。

エクス=アン=プロヴァンスでは「マルシェ(Marche)」が週に数回開催されています。野菜やフルーツ、アンティークに至るまでその種類は多種多様といえるでしょう。夏季には目抜き通りであるミラボー通りで夜市が、クリスマスシーズンには特別なマルシェも開催されているのだとか。プロヴァンス地方の名産、カラフルな陶器や新鮮な野菜にフルーツ、生花に至るまで、多くのものに出会うことができるでしょう。お土産探しに、ぜひ訪れてみてください。

「カリソン(calisson)」はエクス=アン=プロヴァンスを代表する名物です。その正体はアーモンドとフルーツの砂糖漬けを合わせて作る甘い地方菓子。ひし形にくりぬいたペーストに砂糖をふんだんに用いたアイシングでコーティング。見た目にも華やかで鮮やかなため、お土産にも最適でしょう。オレンジやピンク、緑に青など、見るだけで心が踊ります。エクス=アン=プロヴァンスにカリソン博物館もあるので、覗いてみるのもよいでしょう。

プロヴァンス地方の中心地「エクス=アン=プロヴァンス」

セザンヌが生まれ、そして晩年を過ごしたエクス=アン=プロヴァンス。決して派手な街ではありませんが、その街並みには確かに街の個性が色濃く根付いています。サン・ソヴール大聖堂や目抜き通りであるミラボー通り、セザンヌが過ごしたアトリエにさまざまな見所。そのすべてがあなたの未知の好奇心を刺激するでしょう。世界から訪れる多くの人々も、エクス=アン=プロヴァンスの持つ穏やかな魅力に、心奪われているといいます。

「マルセイユ・プロヴァンス空港(Marseille Provence Airport)」は、エクス=アン=プロヴァンスの玄関口といえるでしょう。シャトルバスと電車を乗り継ぎ、中心街までの所要時間はおよそ40分です。パリから電車で向かう場合の所要時間は、約4時間といったところ。プロヴァンス地方の魅力を体感するなら、エクス=アン=プロヴァンスは絶好の選択肢のひとつでしょう。次回の旅では、ぜひこの街を訪れてみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

関連記事一覧