ラ・ショー=ド=フォン(スイス):近代建築の巨匠、コルビュジェの生まれた街

近代建築の巨匠「ル・コルビュジェ」をご存知だろうか?近代建築の礎を築いたとされるコルビュジェは、10フラン紙幣にもその肖像が印刷されているほど著名な人物。特徴的な黒縁眼鏡をかけた、お洒落な佇まいに魅了されている人も多いだろう。そんなコルビュジェが生まれた街がスイスの「ラ・ショー=ド=フォン」。古くからスイスの時計製造の中心を担う、職人の街である。コルビュジェとラ・ショー=ド=フォンの魅力を紹介していこう。

近代建築の巨匠「ル・コルビュジェ」

(Public Domain /‘Pierre Jeanneret and Le Corbusier in Chandigarh’by unknown. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

「ル・コルビュジェ(Le Corbusier)」は20世紀を代表する建築家のひとり。本名は「シャルル=エドゥアール・ジャヌレ=グリ(Charles-Edouard Jeanneret-Gris)」です。1887年に誕生したル・コルビュジェ。スイスのラ・ショー=ド=フォンで時計職人の父の元に生まれ、当初は時計職人を志していたといいます。しかし、生まれつき視力が弱く、繊細な作業が困難であったため、職人の道を断念。建築家としての道を、歩むようになりました。

907年には初めての建築を手がけたというル・コルビュジェ。故郷であるラ・ショー=ド=フォンの学校では、一時期教鞭を取っていたこともあります。1922年には自らの事務所を構え、数々の名建築を生み出してきました。その功績から「近代建築の三大巨匠」とも呼ばれ、第8次のスイス10フラン紙幣にも、その肖像が印刷されています。「住宅は住むための機械である」の言葉が示す通り、コルビュジェ建築の機能性には目を見張るでしょう。

活動の拠点としていたフランスには、いくつもの傑作が残されています。「サヴォワ邸(Villa Savoye)」は活動の初期に建造され、20世紀最高の住宅と賞賛されています。コンテ地方に位置する「ロンシャン礼拝堂(Chapelle Notre Dame du Haut)」は、コルビュジェ晩年の傑作。貝殻や蟹の甲羅を模した、特徴的な佇まいは必見でしょう。「ユニテ・ダビスタシオン(Unité d’Habitation)」は、コルビュジェの最高傑作の呼び声高い、鮮やかな彩りの集合住宅です。そして、このコルビュジェの感性の源泉は出生の街にあるのです。

コルビュジェが生まれ育った街「ラ・ショー=ド=フォン」

「ラ・ショー=ド=フォン(La Chaux-de-Fonds)」はスイス西部、ヌーシャテル州に位置する街です。フランスとの国境にも近く、公用語はフランス語を採用。人口はスイスのフランス語圏では第3位の規模を誇ります。ジュラ山脈の南の山麓、山間に位置するラ・ショー=ド=フォンは、古くからスイスの時計産業の中心地としての役割を担ってきました。1900年代初頭には、世界の時計生産量の55%を担っていたという事実には、驚愕でしょう。

「ジラール・ペルゴ(Girard-Perregaux)」や「タグ・ホイヤー(TAG Heuer)」などの世界的な高級時計メーカーの本社も、このラ・ショー=ド=フォンにあります。世界でも屈指の、時計の聖地といえるでしょう。2009年にはユネスコ世界遺産に認定。「ラ・ショー=ド=フォン/ル・ロクル、時計製造の街(La Chaux-de-Fonds/Le Locle Watchmaking Town Planning)」の名称で、隣接する「ル・ロクル(Le Locle)」と共に登録されています。

世界遺産、時計の街ラ・ショー=ド=フォンの見所

ラ=ショード=フォンは「時計の帝都」とも呼ばれ、スイス最大の「時計博物館」は無数の時計の展示から時計職人の繊細な技術を間近で感じることができます。コルビュジェが初期に設計した6つの建造物も、街の見所のひとつです。

スイス最大の時計の聖地「国際時計博物館」

「国際時計博物館(Musee International d`Horlogerie)」は、1974年に開館した、ラ・ショー=ド=フォン屈指の見所です。館内に展示されている時計の総数はおよそ4,500点にも上り、時計発展の歴史を、直に目で見て体感して、知ることができるでしょう。腕時計や懐中時計、繊細な細工が施された仕掛け時計や最新型の衛星時計まで、その種類は多種多様です。使用されている素材から見た目の豊富さまで、展示の数々には目を見張るでしょう。

館内を覗くとすぐ正面に現れるのが、圧巻の大型時計です。これは時計が小型化する前の、最も原始的な時計のスタイル。現在の腕時計や懐中時計が、いかに小型化してきたかを学ぶことができるでしょう。その迫力には、息を飲みます。続く展示室は静寂の中。時計の針が刻む音に、耳を澄ませてみてください。部屋の中で時を刻む音は不思議なまでにあなたの心を打つでしょう。透明なケースに包まれた無数の時計の姿は、壮観といえます。

博物館には修理工房も併設。時間帯を合わせて訪れれば、職人が時計を修理する工程を、間近で望むこともできるでしょう。繊細かつ的確、流れるような職人技の数々は、必見といえます。敷地内には美しく整備された庭園やショップも併設。ゆったりとした時間を過ごすにも良いでしょう。また、隣接するル・ロクルにも時計博物館が建造されています。展示の品は、国際時計博物館と相互補完的な内容。併せて訪れてみるのも、面白いでしょう。

コルビュジェが手がけた、初期の建造物群

ラ・ショー=ド=フォンに点在する、コルビュジェが手がけた初期の建造物の総数はおよそ6点。「ジャンヌレ=ペレ邸(Villa jeanneret-Perret)」はコルビュジェが独立後、初めて手がけた建造物です。別名は「白い家(La Maison Blanche)」。その名称通り、外壁は白を基調としたシンプルな造りです。この家の設計にはコルビュジェが旅した多くの国々の建築様式が反映されており、以後続くコルビュジェ建築の一端を、垣間見ることができます。

ラ・ショー=ド=フォンに点在する、コルビュジェが手がけた初期の建造物の総数はおよそ6点。「ジャンヌレ=ペレ邸(Villa jeanneret-Perret)」はコルビュジェが独立後、初めて手がけた建造物です。別名は「白い家(La Maison Blanche)」。その名称通り、外壁は白を基調としたシンプルな造りです。この家の設計にはコルビュジェが旅した多くの国々の建築様式が反映されており、以後続くコルビュジェ建築の一端を、垣間見ることができます。元々は両親に贈るために建てられたというジャンヌレ=ペレ邸。1912年に建造、1917年まではコルビュジェ本人も住んでいたといいます。一般に公開されたのは、2005年以降のこと。連続する窓やテラス、屋上庭園は、後に生まれるコルビュジェの建築様式の特徴を、見事に表現しています。内部にはたっぷりの陽光が差し込み、際立ち白さをたたえています。ドアノブや窓の鍵などの、さりげない装飾のこだわりにも注目してみてください。

「ファレ邸(Villa Fallet)」は18歳のコルビュジェが、美術学校在籍中に友人たちと手がけた、建造物の処女作です。中心から均等に伸びた大きな三角屋根が特徴的。ラ・ショー=ド=フォンの豊かな自然とアール・ヌーヴォー様式の華やかさが共存した、街の見所のひとつといえます。ファレ邸は、コルビュジェが手がけたほかの建造物とは趣が異なる佇まいが特徴。ラ・ショー=ド=フォンでしか見ることができない、貴重な姿といえるでしょう。

「シュオブ邸(Villa schwob)」は、コルビュジェがラ・ショー=ド=フォンで手がけた最後の建造物です。建造後、活動拠点をパリへと移しました。シュオブ邸は鉄筋コンクリートを本格的に導入し、ヨーロッパの古典様式をふんだんに用いて建造されています。一方で、コルビュジェが旅で得た見識も多く採用されているため「トルコ風の家(Villa Truque)」とも呼ばれています。自身の著作でも取り上げられた傑作、見逃すことは厳禁でしょう。

世界遺産の街中を散策、名産のチーズの香りに酔いしれよう

ラ・ショー=ド=フォンは1794年の大火事によって街の大部分は損失してしまったといいます。しかし、続く19世紀には街は計画的に再建、現在では碁盤目のように美しく区画整理された、モダンな佇まいの街並みを形成しています。黄色やオレンジの外壁が多用されていることが特徴的で、街を散策すればその魅力に触れることができるでしょう。

「スティル・サパン(Le style Sapin)」は、地域特有の装飾様式です。街の端々に、自然を意識した装飾が目に止まります。

「ステルキ(Sterchi)」は1928年から営業を続ける、ラ・ショー=ド=フォンのチーズ専門店です。長年に渡って愛される店内は種類豊富なチーズが並び、休日には数百の人々が、こだわりのチーズを求めて訪れるのだとか。郊外にはお店専用のチーズ熟成庫を完備。芳醇な香りが漂う、旨味と魅力がふんだんに詰まったチーズを製造し、販売しています。

「アルパージ・トラディション(Alpage Tradition)」は草花を食べた牛の乳を用いた、クリーミーな味わいが自慢のチーズです。ほのかに香る草花の野生的な香りは、クセになる味わいといえるでしょう。「ヴァシュラン・フルブルジョワ(Vacherin Fribourgeois)」の濃厚な風味に、溶け込むような優しい甘さは唯一無二。ほのかな塩味が味にアクセントを加えています。スタッフと相談しながら、理想のチーズを探してみるのも一興でしょう。

時計製造の聖地、ラ=ショード=フォンで滞在を謳歌しよう

美しく整備された世界遺産の街並みには、多くの魅力が備わっていました。時計の歴史を丸ごと知ることができる世界時計博物館や、コルビュジェが手がけた6つの建造物群。街並みを散策して、長く愛されるチーズの香りに酔いしれてみるのもよいでしょう。同様に世界遺産認定されている、ル・ロクルを訪れてみるのもよいかもしれませんね。雄大なジュラ山脈に抱かれた、魅力的な街です。

美しく整備された世界遺産の街並みには、多くの魅力が備わっていました。時計の歴史を丸ごと知ることができる世界時計博物館や、コルビュジェが手がけた6つの建造物群。街並みを散策して、長く愛されるチーズの香りに酔いしれてみるのもよいでしょう。同様に世界遺産認定されている、ル・ロクルを訪れてみるのもよいかもしれませんね。雄大なジュラ山脈に抱かれた、魅力的な街です。ラ・ショー=ド=フォンを訪れるときは、近郊の街から鉄道利用が一般的です。同じフランス語圏の街「ジュネーブ(Genève)」からは、およそ2時間ほどでしょう。雄大なスイスの絶景を見ながらの鉄道の旅は、思い出深いものになるはずです。時計製造と世界遺産、モダンな街並みが自慢のラ・ショー=ド=フォン。歴史を刻々と刻んできた、深みのある街の姿は一見の価値ありでしょう。ぜひ、次回の旅で訪れてみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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