フィゲラス(スペイン):天才画家、サルバドール・ダリ出生の地

シュルレアリスム、超現実主義ともいわれる芸術の手法。その代表的な芸術家が「サルバドール・ダリ」である。自己を天才と称し、数々の奇行や逸話が残されているダリの人生。その天才的な発想と手法で彩られた鮮やかな絵画や彫刻などの作品の数々は、世界でも多くの人々を魅了して止まない。そんなダリが生まれた街がスペインのフィゲラスである。サルバドール・ダリとその出生の地フィゲラスの魅力をご紹介していこう。

シュルレアリスムの天才、「サルバドール・ダリ」

(Salvador Daliwaxwork on display at Madame Tussaud’s Wax Museum)

「サルバドール・ダリ(Salvador Dali)」は、歴史にその名を刻む天才的な画家です。シュルレアリスムを代表する人物として、度々脚光を浴びる世界的な芸術家。1904年、フィゲラスの裕福な家庭に生まれたダリは、幼い頃から絵画への興味を示し、18歳で「マドリード(Madrid )」の美術学校へと入学したといいます。1929年にはシュルレアリストのグループへ加わり、若い頃から天才的な芸術家としての才能の片鱗を覗かせていました。

シュルレアリスムの天才的な芸術家としての地位を確立しながらも、その奇抜な行為で世間の注目を集めていたというダリには、数々の逸話が残されています。講演会には潜水服を着て登場し、酸欠から命の危機に直面したり、像に乗って凱旋門を訪れたり、ダリは人生を彩る奇抜なストーリーが豊富です。また、ピンと上向きに尖ったヒゲを固めるために用いていたのは水飴。嘘か真か。ダリの天才的な振る舞いは群を抜いています。

「記憶の固執(The Persistence of Memory)」は、ダリの代表作といってもよいでしょう。時計が溶けたチーズのように、グニャリと表現されたこの作品は、ダリの芸術性を見事に象徴しています。対して「ポルト・リガートの聖母(The Madonna of Port Lligat)」は、古典的手法で描かれた、全く印象の異なる作品です。この感性の幅広さもダリを天才たらしめている要因でしょう。そんなダリの芸術性を生んだ街こそ、フィゲラスなのです。

ダリの出生地、カタルーニャ州の街「フィゲラス」

「フィゲラス(Figueres)」はスペインの東、カタルーニャ州に属する街です。街の名称は、西ゴート王国時代に命名された「Ficaris」から由来しています。フィゲラスはスペインの都心部にはない、豊かな自然と穏やかな時間の流れを体感することができる街です。街中を散策すると、家のテラスにカラフルな牛のオブジェがあることに気付くでしょう。外壁も色鮮やかです。芸術性に富んだ感性を刺激する街、その魅力は底知れぬものです。

フィゲラスの街の見所

フィゲラスの街はダリが愛した街です。至るところにダリが刻んだ芸術の痕跡を見つけることができるでしょう。大通りや広場に残されたダリの鮮やかなアートにも、注目してみてください。また、「サン・フェラン要塞」や「サン・ペレ教会」などの、歴史的な建造物は、もちろん街を彩る重要な存在です。奇抜な外観の「ダリ劇場博物館」や「ダリ宝飾美術館」。名産のワインの存在も見逃せないでしょう。街の魅力を詳しく紹介していきます。

フィゲラスの街を一望、星型の要塞「サン・フェラン要塞」

「サン・フェラン要塞(Castell de Sant Ferran)」は18世紀に建造された、星型の要塞です。ヨーロッパでも最大規模を誇るサン・フェラン要塞の周辺はおよそ5kmに及び、壮大なスケールの建造物の鼓動を、直に体感することができるでしょう。展示品はほぼありませんが、要塞の敷地を歩くだけで、スペインの歴史の一端を感じることができるはずです。敷地内でも高低差があるため、歩いて回るだけでも2時間ほどの時間は必要かもしれません。

入場料を払うと、要塞内のマップと音声ガイドを借りることが可能です。マップを参照し、音声による解説に耳を傾ければ、サン・フェラン要塞の成り立ちや、スペインの歴史との関わりを、深く学ぶこともできるでしょう。要塞の壁や兵舎の姿を見ることで、当時の姿を想起することも容易です。また、高台からはフィゲラスの街並みが一望できます。晴れた日にはピレネー山脈の雄大な姿も。この光景を見るだけでも、訪れる価値は大いにあります。

白い壁とゴシック様式の尖塔が美しい「サン・ペレ教会」

「サン・ペレ教会(Sant Pere de Figueres)」は、フィゲラスの街中に位置するゴシック様式の教会です。鮮やかな彩りが魅力のフィゲラスにあって、サン・ペレ教会は見事なまでの白。周辺の建物とのコントラストのほか、晴れた空に溶け込む景観は、非常に美しいものです。四角形の尖塔が存在を語る、堂々とした佇まい。ゴシック様式を用いた教会の外観は、さながらお城のようです。柔らかな印象をもたらすアーチの装飾も、よく映えます。

サン・ペレ教会は規模こそ大きくはないものの、内部には厳かな雰囲気が漂っています。祭壇の上部にはステンドグラスがいくつも設置されており、柔らかな光で教会内を照らし出しています。丸く可愛らしいステンドグラスの存在は注目でしょう。サン・ペレ教会は、ダリが幼い頃に洗礼を受けた場所としても有名です。当時と変わらないままの荘厳な佇まい。サン・ペレ教会はフィゲラス屈指の見所でしょう。

ダリの芸術性を全身で感じる「ダリ劇場美術館」

「ダリ劇場美術館(Teatro-Museo Dali)」は1974年に開館し、ダリの作品を丸ごと展示した、壮大かつ奇抜な美術館です。フィゲラスの街のアイコンといってもよいでしょう。ピンクを基盤に白と金を多用した印象的な外観には、ダリの芸術性が惜しみなく反映されています。ダリの象徴である卵型オブジェの数々には、度肝を抜かれるでしょう。その存在感は奇抜で異様といえます。入場前から、ダリの世界観に取り込まれてしまうでしょう。

「メイ・ウエストの部屋(Mae West Room)」はダリ劇場美術館の中でも、ことさら奇抜な発想で制作された作品です。壁にかけられた絵画、中央に置かれた暖炉、真っ赤な唇型のソファ。これらを設置されたレンズを通して見ると、女優メイ・ウエストの顔になるという仕掛けが施されています。この作品を写真に収めるために、常時長蛇の列ができているのだとか。驚きと発見の連続。五感全てを総動員して、ダリの世界を堪能してみてください。

ダリ劇場美術館に隣接しているのが「ダリ宝飾美術館(Museo Dali Joyas)」です。劇場美術館を訪れたら、ぜひ一緒に足を運んでみるのがよいでしょう。ダリがデザインしたというジュエリーの数々は、モチーフもさまざま。ハートや時計、眼に至るまで、ダリの創造性が反映された豪華な宝飾が、ダリのスケッチとともに、煌びやかに展示されています。実際に身に付けるのは相当な覚悟が必要になるでしょう。ぜひ併せて訪れてみてください。

少し足を伸ばして、ダリのアトリエとフィゲラスの美食

「ポルト・リガト(Port Lligat)」はフィゲラスの東、バスでおよそ1時間の距離にある地中海沿岸のリゾートエリア。ポルト・リガトにはダリが晩年を過ごした「卵の家(Casa Museo)」があります。ダリにとって「完全」の象徴である卵型のオブジェは、家に映えるアトリエのアイコン。見学は事前の予約が必須ですが、ダリが過ごした家の内部をゆったりと巡るのもよいでしょう。地中海の絶景を目の前に、優雅な時間を過ごす場所としても、最高の選択肢です。

フィゲラスがあるカタルーニャ地方は、スペインワインの有名な産地のひとつです。中でも「カヴァ(Cava)」の存在は無視することはできないでしょう。フランスのシャンパーニュと同様に、瓶内二次発酵式で生み出される力強い泡の食感は、世界でも多くの人々を魅了し続けています。フィゲラスを訪れたら、この力強く芳醇なカタルーニャの名産品を味わうことは、必須といえるでしょう。夏季の屋外で飲むカヴァの旨さは、想像以上です。

フィゲラスでは「オリーブ(Olive)」も外すことのできない定番の一品です。大きな容器に詰め込まれた多種多様なオリーブの数々。そのどれもが味も風味も異なり、異国情緒溢れる、滋味深い味わいを形成しています。「ピンチョス(Pinchos)」にも用いられているほか、そのまま食べてみるのもよいでしょう。もちろんカヴァとの相性も抜群です。フィゲラスの夜はカヴァとオリーブで、カタルーニャの美食を謳歌してみてください。

穏やかな空気、豊富な芸術性、スペイン東の街「フィゲラス」

スペインの東に位置する街、フィゲラスの魅力をたっぷりとお伝えしてきました。サルバドール・ダリが生まれ、また愛した街並みには穏やかな空気と豊富な芸術性が、惜しみなく詰め込まれています。歴史的な建造物サン・フェラン要塞や、サン・ペレ教会の存在にも注目でしょう。近郊に位置するポルト・リガトへ足を伸ばしてみるのも、よいかもしれませんね。石畳に包まれたフィゲラスの街を闊歩すれば、魅力的な出会いの連続でしょう。

フィゲラスへのアクセスは、カタルーニャ州の州都である「バルセロナ(Barcelona)」から、高速鉄道「AVE(アヴェ)」で、およそ1時間30分の距離にあります。日帰りで訪れることも十分に可能でしょう。また、フィゲラスの駅は比較的新しく、駅に着いた瞬間から、旅の興奮を味わうことができるはずです。あなたの芸術性を刺激する街、フィゲラス。さまざまな魅力が宿ったこの街へ、次回の旅で足を運んでみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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